ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

アマミ・サン・スシ

2024-07-13 23:52:04 | 食事

アマミ・サン・スシとは、サウス・サンフランシスコ市にあるスシ、及び日本食レストランである。ベイエリアの人々は、“サウス・サンフランシスコ”を“サウス・シティ”と呼ぶ。下町サウス・シティのダウンタウンは規模が小さく、バーリンゲイム市やサンカルロス市のそれのようなお洒落な雰囲気はあまりない。それに日本人駐在員の暮らすエリアとも近くない。であるから、そこにある日本食レストランにはほとんど期待が持てないというものだ。けれども、だからこそ行ってみなくてはならない。自分の世界に閉じこもり、自分の好きなものとだけ暮らしていると、『選挙演説はあんなに盛り上がったのに、何故蓮舫さん(田母神さんでもいい)がコイケ(イシマルでもいい)に負けるのか!』と思い続ける羽目になる。現代社会のニンゲンは、世界と自分の距離を測るジャブを打ち続ける必要があるようだ。

 

 

このレストランの特長は以下のとおりだ。参照にしてもらいたい。

 

①アマミ・・・

2024年7月現在、サウス・シティのダウンタウンには “カム・スシ” “イザナミ” 、それに “アマミ・サン・スシ” の3店舗がある(これらとは別にシャブシャブの店もあるのだが、ここでは除外する)。上記に挙げた理由からどの店にも積極的に入りたいとは思わなかったが、 “アマミ・サン・スシ” は特に入りたくなかった。何故なら筆者は “アマミ” と言う名の印象のよくない店を知っているからだ。それはエルカミノ通り沿いのサン・ブルーノ市辺りで、何故だか車から目につく店である。雑多な小ぢんまりした店舗が並ぶ清潔感控えめの建屋に入っていて、建屋前の駐車場も小さく、開いてるかどうかも不明な近寄りがたい店なのだ。『あの店と同じ系列ならば、うさん臭い』という、よろしくない先入観を持っていた。

 

 

 

②アマミ・サン・スシへ行ってみる。

であるため、アマミ・サン・スシへ行ってみることにした。アマミ・サン・スシは他の2店舗とは異なり、商店街通りから逸れた路地に面している。商店街通りのパルテノン神殿のような大仰なイタリア料理店の角を曲がれば、路地は殺風景で、店の存在を示すオーニングテントや看板も見えないので、『通りを間違えたかな』と毎度不安になる。しかし20メートルほど歩けば、何だか昔の診療所を思わせる大きなアルミサッシとガラス窓の黒い建屋が現れる。それがアマミ・サン・スシだ。窓の向こうに障子のような和風内装がしつらえてある。そして昔の診療所のようなガラス扉を開ける。このガラス扉は建屋から少し奥まっていて、その右側が出窓のような造りになっている。ここではそこを床の間に見立てたような盆栽風の飾りつけがしてあるが、しばらく手入れがなされていないようで侘しい雰囲気がある。

 

 

③アマミ・サン・スシの中の様子

しかし中へ入ると(この店は外から中の様子が見えにくい)、意外にも洗練されたお洒落な雰囲気がある。木目調の壁や棚、高い天井から吊り下がりの照明はアジアアジアしておらず、“祭”“酒”などの暖簾や提灯が派手にぶら下がるエセ日本料理屋とは趣が違うようだ。店は奥側がスシカウンターになっているが、カウンター席にはテイクアウトの人々用の割り箸や袋入り醤油・ワサビが並んでいるので、客席としては利用されていない。そのうえ広くないホールにはテーブル席が敷き詰められてテーブル間の距離が近いため、30代独身日本式サラリーマンが一人で入るとやや目立つのが難である。だがこの狭苦しさに日本の安酒場の雰囲気を感じられる。スシカウンターの後ろの棚には獺祭や久保田などの日本酒が飾られる。その右側には烏帽子に蓑姿の、山法師のような、柳生忍者のような珍しい置物が三体あるが、なかなか近くでよく見ることができない。

 

 

④アマミ・サン・スシの料理

これが悪くない。焼うどんやラムチョップ、枝豆やイカの丸焼きなどのつまみメニューが充実していて、それぞ美味である。また野菜天ぷらがよい。ナスに芋にカボチャにブロッコリーとボリューミーかつサクサクで、美味しくいただける。日本酒もエセ日本料理屋よりは充実している。とくに菊水酒造のふなぐち缶が置いてあるのが嬉しい。ビールはアサヒ・サッポロ・キリンが全て揃えてあって、大陸風の女性店員から、『ビールはアサヒ・キリン・サッポロのどれにしますか』と聞かれるのは楽しいものである。

 

 

さて、調べてみるとこのアマミ・サン・スシと筆者が“よろしくない先入観”を抱いていたアマミ・スシはやはり同じ系列であった(なぜこちらの店だけ“サン”が付くのかは不明である)。なかなかのクオリティーに、『日本人が関わっているのかな・・』と思い調べるも、“シェフのアラン”という人が経営しているとの情報しか得られずにいる。鮨の画像も見られたが、ネタが大きくなかなか美味しそうだ。40ドルで“オマカセ”もあるようなので、挑戦したい。“カム・スシ”や“イザナギ”へ出向く日が遠のいてしまったようだ。以上、サウスシティからお送りしました。


リトル・バングラディシュで食べたビーフ・テハリ

2024-06-10 04:16:24 | 食事

リトル・バングラディシュとは、ロスアンジェルスにあるバングラデッシュコミュニティのことである。2024年メモリアルデー連休の初日、筆者はロスにいた。ロスは今回の旅の中継地点であって目的地ではない。ロスで何をして遊んでいいのかもよく分らない。ただ、西海岸に永らく暮らしていながらロスのことをほとんど知らないというのも格好悪いので、立ち寄ることにした。到着するのがちょうど昼飯時だというので、何か珍しいものを食べようと考えたすえ、“リトル・バングラディシュ”というエリアへ行ってみることにしたのだ。べーカーズフィールドの町を越えると広大なセントラル・バレーは終わり、道路は山を越える。大きく山を下ればロスの町に入る。

 

この日の思い出は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。

 

①リトル・バングラディシュへ

ナビの示すままにリトル・バングラディシュへ向かうと、それはロスアンジェルスのダウンタウンからは少し西へ外れた場所であった。街並みがバングラバングラしてくるかと思いきや、全くそんな気配はなく、周辺は圧倒的にハングル文字が目立つ。そう、このリトル・バングラディシュエリアはコリアンタウンに囲まれている。ウィキペディアによれば、リトル・バングラディシュ地区はもともとコリアンタウンだったエリアに新たに2010年に作られたもので、当時はこの地区の設立に関して韓国系移民との摩擦が生じたとの記載がある。バングラバングラしているのはほんの数ブロックだし、それに言うほどバングラバングラしている様子がない。ベンガル文字が見える店舗はほんの数件だ。

 

 

②そしてバングラ・バザール

そしてバングラ・バザールを見つけた。店は小さなグローサリーストアのようだが、通りに面した空間が飲食コーナーになっていて、中で数人のバングラディシュ人風の男が食事をしているのを見ることができ、少し安心した。ローカル臭が強く入りやすくはないが、勇気を出して扉を開ける。入ってすぐにデリ・コーナーがあって、容器にカレーや米類が並んでいる。スキンヘッドにメガネの男店員に、『何せバングラディシュ料理は初めてなので、どのようにして注文するのかを教えてほしい』とお願いすると、丁寧に教えてくれた。しかも小さな容器を使って味見もさせてくれたのだった。筆者が初めて会話したバングラディシュ人は、優しい男だった。

 

 

③ヤギのカレーと牛肉まぜご飯

その店員に味見させてもらった週末スペシャルの牛肉まぜご飯と、ヤギのカレーを購入すると、料理は紙の器に盛られ、お盆に載せられる。食堂にプラスチックの簡易なスプーンとフォークがあって、それを使って食べるのだ。これがとても旨い。特に牛肉混ぜご飯が秀逸だ。ふんだんに効いたスパイスと玉ねぎの甘みと、そして牛肉(カス肉だと思われる)の脂分が美味く混ざり合い、スプーンが止まらない。ナプキンで汗をふきふきパクつく。2合近くはあろうかというボリュームを一気に平らげてしまった。ヤギのカレーも美味だったが、ヤギ肉を嚙み切ると中が赤かったのが不安になった。

 

腹がいっぱいになり、紙皿をゴミ箱に放り込んで飲食コーナーを出ようとすると、さっきのスキンヘッドメガネ店員が出口付近のテーブルに腰を掛け、手でカレーを食べていた。そこで『この牛肉の料理は最高でした。名前をさっき聞き洩らしたので教えてくれませんか』とお願いすれば、“ビーフ・テハリ”だという。そう、バングラディシュはムスリム国家で、牛を神聖視するヒンドゥー国のインドではあまり味わえない牛肉入りのスパイス料理が楽しめる。筆者は、満腹感で苦しいのと、赤いヤギ肉の不安のため、この日は早めに宿で休むことにした。


花むら

2024-03-25 03:22:48 | 食事
花むらとは赤坂にある天ぷらのお店だ。筆者が去年の11月に、米国駐在ビザ更新のための帰国休暇の際に立ち寄った店である。その休暇の際には浦賀を訪ねたり、岐阜へ行ってみたりしたのは読者諸氏の記憶に新しいに違いない。筆者は決して食通ではないし、普段は高級料理屋というものとは縁のない生活を送っているのだが、人生で一度くらいは関東のホンモノの天ぷら屋で舌鼓を打つもの悪くなかろうという思いはあったのだ



このお店との思い出は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①花むらとの出会い
とはいえ予めこのお店を知っていたり、下調べして目を付けていたわけでもなく、出会いは偶然である。宿をとった赤坂駅周辺は、高級な雰囲気ばかりが漂うものだと勝手にイメージしていたが、割と庶民的で猥雑な雰囲気があったので楽しく散歩をしていた。それでも老舗風のシャトー洋館風の連れ込み宿や、かじりつくように書物を読みながら登校する古風な制服姿の小学生男子児童など、赤坂でしか見ない(かも知れない)ものも散見された。さらに坂道を上ると控えめな黒い看板で『天婦羅 花むら』とある。だが店構えは見えない。『つぶれてしまった店の看板かな・・』と思い路地をのぞき込むと、通りの店の一軒むこうに普通の民家風の建屋があって、そこにまた控えめな白い看板があった。佇まいに魅力を感じ、入ってみたいと思いつつも、同時に敷居の高さも感じ気後れしたまま通り過ぎたのだった。



②花むらへ行こう
翌日に何かの理由で再び花むらの前を通りがかったときにまたもや路地を覗けば、植木でいっぱいの店の前に、天ぷら屋の調理白衣と丸帽姿の老父が立っていて、天候を伺うように空を見ていた。その姿がなんだか庶民的な雰囲気で、『あ、花むらさんへ行ってみようかな』と思ったのだった。そして会社の研修の後の懇親会をすっぽかすことを決め、勇気を出して花むらへ予約の電話を入れたのだった。だが電話の先の女性はたいへんに優しく、勇気など不要であったことをすぐに思い知る。



③花むらへ入る
花むらの田舎の宅のような玄関を入り、予約の名を告げると廊下から二階へ案内される。祖父母の宅のような古い家の匂いと、染み付いた油の匂いが交じり合った空間は心地が良い。二階の部屋は正方形の掘りごたつカウンターになっていて、中央に調理場がある。そこに先日見かけた老父がいた。彼が主人で、彼が揚げてくれるのだ。天ぷら油が染み付くせいなのか、部屋の壁の色がタヌキ色にくすんでいて年季を感じる。



“天ぷらなんてもんは、昔の駄菓子みたいなもので高級でもなんでもないし、もともと東京湾は干潟でろくな魚が取れなかったから、この調理法が生まれたのです”と主人(78歳)は言うが、同時に“江戸前寿司なんて米に魚のせてるだけで、技術はいりませんよ”と天ぷらプライドものぞかせる。そして天ぷらを揚げるときのその目つきは真剣だ。揚げるときには“ジュー”という音を想像していたが、彼の天ぷらからは“ピトピト”と微かな音しか鳴らない。薄い衣は優しくて、油のうま味と食感が素材のうま味を生かしている。この花むらさんの天ぷらならばいくらでも食べられそうだ。瓶ビールと熱燗で天ぷらコースを堪能したのだった。大正時代から続く店は主人が3代目、そして二人の見分けがつかないほどそっくりの息子が4代目になるという。“長く続けるためには控えめの方がいい。だから表通りから一軒奥でやってるんです”と主人は言った。

フル・ハウス・チャイニーズレストランの米麺ラーメン

2024-03-24 04:12:49 | 食事
フル・ハウス・チャイニーズレストランの米麺ラーメンとは、バーリンゲーム市にある中華料理屋の米麺ラーメンのことである。最近は日本でも米粉麺食の普及が進んでるようだ。それは“グルテンフリー”“小麦アレルギーフリー”などの健康志向目的以外にも、国際情勢不安と円安による小麦の高騰や、米粉麺大好きベトナム人移民(研修生?)の増加に理由があるように思う。似非30代独身日本式サラリーマンが非モテ貧乏大学生だった頃は、輸入パスタが500グラム100円前後で、それはそれは貴重な主食だった。同じく100円前後で購入できたミートのほとんど入っていないマ・マーのレトルトパウチミートソース、それにゆで卵とブロッコリーも全部一緒に大鍋で茹で、胃袋へかき込んだものである。ずいぶん昔の思い出だ。因みに最近SNSで、この調理方法が禁忌扱いされているのを見かけた・・。


この店の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①立地
フル・ハウス・チャイニーズレストランはバーリンゲーム市にある。とはいってもブルジョア臭の強い洗練されたダウンタウン界隈ではなく、 “バーリンゲーム・プラザ”という名の商業エリア内にある。それはミルブレー市のダウンタウンから少しだけ南のエル・カミノ通り沿いのエリアで、弱々しい街路樹に囲まれてやや廃れた様子がある。たまに洗練した雰囲気のラーメン屋やおでん屋などの挑戦的なテナントが入るものの、長く続かず潰れてしまうようだ。でも老舗のサンドイッチ屋やドーナツ屋もあるし、アンデルセンベーカリーも入っていたりもする。このフル・ハウス・チャイニーズレストランは、グーグルマップのレビューには8年前のコメントがあるので、そこそこ老舗のようだ。



②外観
フル・ハウス・チャイニーズレストランの外観は魅力がない。“Full House Chinese Restaurant” とポップな書体で書かれた英語の看板からは、中華人民共和国の重々しさが感じられず、その左に書かれる形ばかりの屋号のような麻雀の “発” の文字も嘘くさい。それでも中を少し覗いてみれば、入ってすぐに丸見えの厨房があり、中国人の中年男たちが数人、せっせと料理をしている風景を見ることができる。その風景は本格派な中華料理屋風で気持ちが良い。そしてホール係の中年女が近寄ってきてホールへ案内される。この店はホールが厨房の奥にあり、ホールへ行くには厨房を横切るという一般的なつくりとは真逆の構造になっているのだ。




③ホールとメニュー
奥のホールは安中華食堂の雰囲気があって一人客でも居心地がいい。そして実はホール側にも裏口があり、馴染みの客たちはそちらから入ってくる。裏通りには斜めに路上駐車できるスペースが確保されているので、そこに駐車するようだ。というより筆者が“表”と思っている側が“裏”で、裏口と思っている方が本来の入り口なのかも知れない。ということはこちらの裏通りは実は表通りということだ。そう、裏と表などと言うものは所詮ニンゲンの意識の中にしか存在しないということを、改めて思い知ることができるお店になっている。メニューはとても豊富だけれど、この近辺の中華料理屋と比べて珍しいものがある訳ではない。



④米麺ラーメン
筆者がいつも頼むのが、葉物野菜の漬物と豚細切れが入った米麺ラーメンだ。こいつはうどんよりも細いが冷や麦よりも太い米麺の上に、野菜と豚肉がたっぷりのっかった汁麺で、旨いのだ。薄味のスープに酸味のある漬物と豚肉のうま味が溶け込んで、柔らかい給食風米麺の具合もちょうどよい。毎週末の二日酔いの日の昼食には最高である。常連客もこれを注文して二人で取り分けている人をよく見かける。それを筆者は一人でペロリと平らげるので、毎度毎度女店員や男店員に『お! 全部食べた!』と驚いてもらえるのだ。




裏表のない店の構造上、店内に店員の休憩所がないので、二人の男女店員はよくホールで賄いを食っている。それはだいたい筆者が頼む汁麺に姿が似ているので、『今度はそれを食べてみたいのだが・・』というと、『これはメニューにはないネ! でもスープは同じネ。野菜の出汁が出てるから体にいいので、毎日食べているヨ!』と言われた。どうやら“裏メニュー”はあるようだ。最近は米麺ラーメンと一緒に持ち帰りで一品注文している。牛肉と野菜漬物の炒め物なども美味しいですよ。 

祥興海鮮館の調理モツ肉

2023-12-31 14:53:14 | 食事
祥興海鮮館の調理モツ肉とは、サウスサンフランシスコ市にある中華料理店“祥興海鮮館”で手に入る調理モツ肉のことだ。新型コロナウイルスの被害は沈静化し、人々は再び家からオフィスへ出てきてハグをしはじめた。しかし外食産業の営業スタイルはコロナ禍の頃のままに“店内飲食(DINE-IN)”よりも“持ち帰り(To Go)”に重点を置いている店が多いようだ。特に筆者が行くような安食堂ではそれが顕著だ。これは店側には回転率の最大化や人件費(接客や皿洗い)の節約というメリットがあるだろう。客側にもメリットはある。特に最近の似非30代独身日本式サラリーマンは自然と持ち帰りが多くなってきている。自宅なら酒量を気にしなくてもいいし、孤独の惨めさも感じないからだ。


この店の特長は以下のとおりだ、参考にしてもらいたい。



①祥興海鮮館に入る
祥興海鮮館はサウスサンフランシスコ市の小さな商店街にある。筆者が最近よく徘徊している通りだ。 実は北米には“祥興”と名が付く中華料理屋が多くある。きっと何かおめでたい意味があるに違いないと思って調べてみたが、見つけることができなかった。“Cheung Hing” と発音する。筆者はとある体調が悪い日に、肉モリモリの中華焼きそばでカロリーをたっぷり摂ろうとこの店に立ち寄った。奥行きのある店内には白いテーブルクロスが敷かれた円卓が並び、若干の高級感があるため、普段の30代独身日本式サラリーマンならば素通りする店構えであったが、体調の悪さが幸いした。


②祥興海鮮館BBQメニュー
しかしいざ入ってみると、一見したところ小ぎれいな奥のホールには客が全くおらず閑散としている。そして客なのか店員なのか区別がつかない普段着の中年女が現れて、『ピックアップか!!』と聞いてくる。ここもすっかりお持ち帰り専門の安食堂になっているようだ。また、入口左側のフードコート風のカウンターには調理された肉類が雑然と並んでいる。壁に架かる“焼味!BBQメニュー”と書かれた看板に、その調理肉のメニューと値段が書いてあるのだ。たいていのこういった中華風BBQは真っ赤な豚肉や北京ダックなどがあるばかりなので、あまり期待せずに眺めていたところに、“滷水猪脷、滷水猪肚、鹹水猪耳”という魅惑のメニューを見つけたのだった。


③祥興海鮮館の調理モツ肉を注文
猪脷、猪肚、猪耳はそれぞれ『豚タン、豚ガツ、豚ミミ』である。頭に着く“滷水”とはいったい何なのかが少し心配ではあったが、そんなことで筆者の雑肉欲は抑えられず、カウンター内に佇む初老の男に注文を試みた。だがこの男は筆者の英語を理解しない。看板の番号を使ったり、自分の胃袋や舌を指さしたりして何とか意思疎通を図るも無理である。さっきの客なのか店員なのか区別がつかない普段着の中年女が見かねて助けてくれたおかげで何とか注文することができた。初老の男は金属のケースに雑然と入った豚タンと豚ガツをトングでペローンと摘まみ上げ、大きな包丁で細かく切ってプラスチック容器に詰め込んでくれた。値段はパウンド9.99ドル、安い。



④祥興海鮮館の調理モツ肉を食べる
持ち帰って食べると、なかなかに美味である。雑肉は醤油ベースとほのかな八角の香りが心地よく臭みがない。2種の雑肉が混ざる細切れには食感の違いがあって飽きもない。そのまま食べてもよいが、箸でつまんで和からしにチョイ漬けして口に放り込めば何とも素敵な酒のつまみになる。米にも合うし、日が経って傷みが気になりだしたらラーメンの具材にしてもなかなかに旨い。ガツやタンは非常に栄養価の高い食材であるのも嬉しい。



さて、せっかくなので“滷水”について調べてみた。滷は“ルー”と読むが、所謂日本語の意味するとところのルーとは異なる。ウィキペディア中国語版によれば、“醤油をベースとした様々な薬味を入れた調味料”とのことである。使用する薬味に明確な定義はないが、一般的なものには四川唐辛子、スターアニス(八角)、みかんの皮、シナモン、甘草、草の実、生姜、生姜、砂生姜、ネギ、岩砂糖が含まれ、その中で生姜は本格的な潮山滷水に不可欠な調味料、という内容であった。2023年も終わろうとしている。80代独身日本式お笑い芸人のアホの坂田師匠が、弟子の間寛平氏に看取られながら、老衰で亡くなったようだ。筆者の死は一体誰が看取るのだろうか。ありがとさーん。