ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

サン・スプラッシュ・バー&グリル

2018-05-24 16:43:40 | 食事
 サン・スプラッシュ・バー&グリルとは、ハードフォード市のフランクリン・アヴェニューにあるジャマイカ料理屋だ。ダウンタウンから南に延びるフランクリン・アヴェニューは、もともとイタリア人街であったようだが、今はカリビアン系・中南米系の食堂がポツポツポツと並んでいて、薄着の褐色肌の人たちが活発に歩いており、魅力的なエリアになっている。彼らにとってアジア人歩行者はなかなか珍しいようで、この通りを歩いているとジロジロと見られたり、子供たちにからかわれているかのような声の掛け方をされたりもするが、何を言っているのかわからないので平気である。コミュニケーション不足によって生じる弊害は、中途半端に意思疎通ができ、かつその必要がある所為で起きるのだ。


このお店の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。



①ジャマイカとハートフォード
西海岸では出会うことが少ないジャマイカ人と出会えるのはハートフォード地区の魅力であろう。ジャマイカ系のお店はあちらこちらにある。とはいえ彼らはアフリカから奴隷として連れてこられた人々の子孫であり、アラクワ人と呼ばれる先住民はヨーロッパ人と共にやってきたウィルスのためにずぐに絶滅してしまったそうだ。



②お店の外観
フランクリン・アヴェニュー沿いにあるこの手のカリビアン系・中南米系食堂の多くは古びたレンガ作りの建屋に目立たない看板やオーニングテントが適当に取り付けられた程度の簡素な作りで、中の様子がよく見えないめにたいへん入りづらい。サン・スプラッシュ・バー&グリルも一見するともう潰れてしまったお店のような雰囲気だ。


③内装・店員
寂れた外観に比べると中はそこそこ小ぎれいだ。通り側がバー、奥側がダイニングになっていて、ダイニングの水色の壁にはトロピカルな絵画やオブジェが飾られ、小ぢんまりしたテーブルが可愛らしく並んでいる。バーはいたって普通の薄暗い空間だ。BGMにはやはりスローなレゲエミュージックがそこそこの音量で流れていて、メローな気分に浸れる。店員は素朴な黒人たちで決してサービス精神がある訳ではないが親しみがある。


④ジャーク・チキン
ジャマイカの人々は何でも食べるようだ。ビーフやチキン、ラム肉に魚介系のメニューも多くある。おつまみとして最適なのがジャーク・チキンと呼ばれる焼き鳥料理だ。米国のチキン・ウィングのような不必要なソースがべったりとついておらず、表面が黒焦げになるまでしっかりと焼かれているために余計な脂が落ちて非常に美味しい。炭火で焼いた手羽のような風味があり、レッドストライプビールをごくごく飲んでしまう。



⑤スチームスナッパー
メインは小ぶりなタイを丸ごと一尾、野菜と一緒に蒸した料理をいただく。こちらもあっさり塩味で余計なソースが付いていないので味に飽きない。ふんわりと蒸しあげられたスナッパーは箸でいただきたい逸品であり、筆者は二回目の来店時には割りばしを持参した。一緒に出される赤飯もなかなか美味しい。ジャマイカの人々の90%はアフリカ系であるから、アフリカ料理を起源にしているものと思われるが、意外に日本人の好みに合うものが多いようだ。


 最近は相撲協会さんに始まり、レスリング、サッカー協会さんや日本大学さんなどの閉鎖的な土壌で育まれた価値観で“正しい”と思って生きてきた人々が、世間から叩かれる様子を見る。組織というものは一応のある共通の目的を持つ集団であるから、独自のルールや適度なリーダーシップを持った指導者の力などで少なからず閉鎖性を持ってしまうものだ。筆者がたまに訪問する世界と繋がるオープンであるはずの異業種や同業他社などであっても、こちらから見ると「うむー、独特な文化であるな」と思う世界があり、それを当たり前として働く人々を見る。だが「うむー、独特な文化であるな」と思う自分もまた彼らから見ると「独特な文化の中で生きている人」に映っていることにはあまり気が付かない。そんな30代独身日本式サラリーマン諸氏は、フランクリン・アヴェニューを練り歩き、食べ歩くとよい。自分だけが独特で、いろんな人から奇異な目で見られ、話しかけられる。何を言っているのかは判らないけど。

マテ貝

2018-05-12 21:00:01 | 食材
 マテ貝は、貝だ。筆者はまたニューヨーク州ホワイトプレインズ市にあるコリアン系スーパーに出入りしており、そこのコーナーでマテ貝を見つけたのですぐに購入した。幼少時にマテ貝の独特な漁法について父親から聞かされて以来、ずっと興味があったのだが、普通のスーパーで見かけることはなく、初めて食べたのは30代日本式サラリーマンになってからであった。当時千葉県の新京成線高根木戸駅の裏通りにある“磯げん”という肩ひじ張らずに最高の魚料理が食べられるお店に世話になっており、そこで炙りマテ貝を食べ、その旨さに感動した。そんなマテ貝と、遠いニューイングランドの韓国スーパーで再会したときの喜びは、嬉しくて、嬉しくて、言葉にできないものだった。



この食材の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①マテ貝
マテ貝は非常に細長い二枚貝で、ちょうどブルボンのエリーゼのようなかたちをしている。一般的にイメージされるサザエ系の貝やハマグリ系の貝の形状とは全く異なるため、初めて見ると少しびっくりする。Youtubeには西洋人が採取方法や調理方法を多く紹介する動画があるので、西欧にもマテ貝を食する文化があるようだ。


②マテ貝を買う
マテ貝は10~15本ほどが束にされ、輪ゴムで縛られ、氷が敷かれた箱に置かれている。まだ生きているようだ、マテ貝らの気持ちを想うと少し可哀想になるが、一束をビニル袋に入れて鮮魚コーナーの男に手渡すと、値札が付けられて返ってくる。パウンド12ドルくらいとなかなか高価な食材だ。


③マテ貝を調理する
今回はマテ貝を酒蒸しにした。フライパンに洗ったマテ貝をどかどか入れ、酒を入れ蓋をしてぐつぐつするだけだ。マテ貝に含まれている海水の塩味があるので味付けは要らない。最後に少しだけ醬油とバターを入れてもいい。


④味
これは美味だ。ハマグリよりも貝の香りが少なく、ほんのりとした磯の香りとバター醬油味で満たされた心持ちになる。週末の昼に白ワインと共にいただいてみたい逸品だ。ネット上で散見された“マテ貝は砂抜きしなくてもよい”などという記載を信じて買って帰ってすぐに調理したが、これは失敗だった。数時間程度は水抜きすることをお勧めする。



 5月に入りニューイングランドにもついに春が来たようだ。森の木々には新芽が色づき、家に植えられた草木の花は開き、車道には春の到来に浮かれて道路に飛び出た途端に轢き殺されであろう小動物の亡骸があちらこちらに見られ、暖かな日差しの下でカラスがその屍肉を啄んでいる。ベイエリア30代独身日本式サラリーマンの心もまた、春の陽気に少なからず浮かれ始め、予定もないのにアウトドアショップで釣り道具やキャンプ用具を物色したりしているのではないだろうか。一人キャンプなどが流行の兆しであるが、あれは孤独でない人がつかの間の孤独を求めて行うものであり、もともと孤独な30代独身日本式サラリーマンにとっては長屋でじっとしているのとさほど変わらないので、気を付けた方がいい。

クレープ・クラブ

2018-05-01 22:27:56 | 食事
 クレープ・クラブはカナダ国トロントにあるウクライナ料理屋だ。トロントでの“しばらく食べていないものを食べに行くツアー”では、餃子棲以外にも点心や居酒屋、ラーメン屋などを巡り、寂しくも楽しい時間を過ごしていたが、やはりどうしても“まだ食べたことがないもの”を食べたくなる。「何か新しい食うものはないか。どこかに新しい食うものはあるまいか」と愚かなグーグルをいじっている自分に気づき、ニンゲンの中にあるおぞましい征服欲を垣間見たような気分になった。そして筆者の目に留まったのがウクライナ料理屋だったのだ。やや女子狙いっぽい店の名前に不安を憶えながらもホテルを出た。


このお店の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。



①アクセス
クレープ・クラブはバルドウィン通りと言う名の東西に走る通りにある。この通りは中華街のスパディナ通りとマッコール通りを結ぶ短く細い通りで、お店はマッコール通りに近いブロックにある。このブロックは街路樹が植えられ、テラス席が設けられれた感じの良い小ぢんまりちた飲食店が並んでいて、落ち着いた雰囲気がある。


②ウクライナ
親米親ロの狭間で政情がいつもまでたっても不安定なウクライナの人々の一部は西側諸国へ移り住んでいる。ウィキペデイアによるとカナダには120万人ほどのウクライナ人が暮らしているとのことだ。日本にとっては馴染みのある国ではなく、上記の政治不安以外ではチェルノブイリ原発事故などくらいしか知識がない。ちなみに昭和の大横綱の大鵬関はウクライナ人と日本人のハーフなのだそうだ。


③外観
シックな槐色のオーニングテントの店構えは30代独身日本式サラリーマンが一人で入るには少々気恥ずかしく、隣りに数件並ぶ中華料理屋やすぐそこの角にあるラーメン屋にしようかと迷ってしまう。が、閉ざされたドアの向こうに新しい何かが待っていて、“きっときっと”と筆者を動かしている。


④中の様子
扉を開けると意外にカジュアルな雰囲気がある。2人掛けが主な安作りな卓、黄色に塗られた壁には大きな木が描かれており、そこに来店した人々のメッセージが、様々な言語で書かれている。また、東欧なまりの白人店員がいるものと思いきや、背の高い痩せた男性といたって普通の体型の女性店員はいずれもアジア系で、2人とも流暢な英語を話す。


⑤メニュー・味 
メニューはやはりロシア料理に近い。ピロシキやボルシチ(ボルシチはウクライナ発祥だとのこと)の他に、ベイエリアのレッドウッド・シティのロシアンファミリーでも見られたロールキャベツ料理などが並ぶ。店名がクレープ・クラブだけあって肉や野菜が入った食事用クレープや、デザート用のクレープメニューが多く見られた。筆者はボルシチにライ麦スティック、そして鮭とチーズ入りクレープを注文した。どれも美味しくいただけたが、特に「これは・・」というような目新しい経験はなかった。クレープは春巻きのような形態で出される。生地は薄いのに食感がもっちりしていて女性受けがよさそうだ。痩せ型の男性店員に“このクレープはウクライナ料理なのですか”と尋ねると“ウクライナでも食べるし、東欧で広く食べられている料理です”との答えであった。尚、ウクライナ産の酒類はなく、トロント名物サッポロビールと一緒にいただいた。


 壁に書かれたメッセージに日本語の文字は見られず、もしも頼まれたら初めての日本人として何を書こうかと策を練っていたが、ついに最後まで依頼されなかった。なので諸氏らが来店してそこに日本語のメッセージを見つけたとしてもそれは筆者ではない。帰り道に通りがかった美術館では草間彌生展をやっていた。以上でトロント紀行を終わります。無国籍都市トロントで、沢山の人とすれ違うことができました。