たかし歯科とは、ベイエリアにある歯医者のことである。日本人の“たかし先生”が直接治療にあたってくれるため、筆者の務める会社の駐在員はたいていここを利用している。一部に“タカハシ歯科”と勘違いしている人がいるのだが、先生の苗字はタカハシなどではない。筆者は高校卒業とともに歯の矯正治療を放っぽりだして以来、歯科には近づかずに生きてきた。しかし左上あごの親知らずが欠け、舌の感触で歯の真ん中にポッコリと穴があるのがわかるほどになり、そこに食いカスがたまって定期的に炎症を起こすようになったので、ついに歯医者へ往く決断をしたのだ。2021年の夏の記録である。
この抜歯の記録は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。
①2021年夏のたかし歯科
たかし歯科は朝の7時40分から開院しているので、働き盛りの30代独身日本式サラリーマンにはありがたい。予約をとった平日の朝にビルの3階にあるたかし歯科を訪ねたらば、まずは入口でビニル足袋、ビニル手袋、エプロンを着用する。治療台に上がる際には帽子に保護メガネまで着用と、徹底した飛沫対策が取られていた。実際に治療に当たる人々もまさに完全防護であり、頭部をすっぽり覆う保護帽からはホースが延びていて、背中の空気供給ボンベ(のようなもの)に接続してある。それを見た筆者は地下鉄サリン事件で地下鉄霞ヶ関駅へ降りていく防護服をまとった人々のことを思い出した。
②アメリカ式歯の治療
アメリカ式歯の治療は日本とは異なり初診はクリーニングと検査で終わってしまう。それは半年に一度のクリーニングと検診に保険が適用されるために、多くの人がそれを利用して、その時に治療の有無を判断するからだ。筆者はてっきり、『今日はどこが悪いのですか?』『はい、実は右奥の歯が先日欠けまして、それ以来時折痛むことがあるのです』『どれどれ・・ややっ。これはさっそく抜きましょう!』といったやりとりがすぐに開始されるものと思っていたのでやや拍子抜けした。しかしながら筆者はそのクリーニングと検査にて目的の親知らず以外にも虫歯を発見されてしまったために、合計3回もたかし歯科へ足を運ぶ羽目になったのだ。
③たかし歯科の人々
たかし歯科の人々はみな優しい。初診のクリーニングを担当してくれた歯科助手の方は日本人女性で、機械音に怯える筆者に“にぎにぎクッション”を手渡してストレスの低減をはかってくれた。クリーニング中、この人は明るく語りかけてくれるのだが、口を開けたままでは上手に返事ができないので困惑した。どことなく不安げな顔をした中国系と思しき歯科助手の方もとても気遣いが丁寧で安心する。もうひとり、防護服の所為でことさらに大柄に見える女性歯科助手の方もおり、この人もたいそう明るく、甘いものが好きだと言ってユーモラスに接してくれる。
④たかし先生
だが一番優しいのはたかし先生だ。たかし先生のお陰で勇気をもって抜歯することができた。 ただ、“はい、今からちょっと注射打つけどごめんね、大丈夫だよ”“はい、今から引っ張ってみるからね、痛かったら手を挙げてね”“最後ちょっと力入れるよ、もう出てきてる”とあまりに丁寧でこまめなインフォームドコンセントが災いし、“あ、これから痛いことが始まる”と明確に判ってしまうことで恐怖感が募り、痛みを錯覚させている可能性がある。
恐怖の抜歯作業の間、筆者はえずいたり、麻酔の追加を要求したりとたかし先生を困らせたのだが、作業は20分程度で終わってしまった。『よく頑張った!』そうたかし先生に褒められたので、『いやいや、お恥ずかしいところを見せてしまい・・』と答えると、『大丈夫!そんなことない!みんな同じだよ!』とさらに励ましてくれた。“あぁ、これでたかし歯科ともおさらばか”と思うと少し寂しい気がしたものの、支払時に受付の女性に『えっと・・次の予約はいつにしますか』と聞かれたときには、『いや! もう来なくていいはずだが!』と強い口調で言ってしまった。『あ、治療ではなく半年後のクリーニングの予定ですが・・・』と冷静に返されたので恥ずかしかった。さて、痛み止めや化膿止めを処方してもらったおかげかその後の痛みは全くなく、その日も普通に職場へ行き業務をこなしました。ベイエリアで歯の不安に苛まれている30代独身日本式サラリーマンは参考にして欲しい。
この抜歯の記録は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。
①2021年夏のたかし歯科
たかし歯科は朝の7時40分から開院しているので、働き盛りの30代独身日本式サラリーマンにはありがたい。予約をとった平日の朝にビルの3階にあるたかし歯科を訪ねたらば、まずは入口でビニル足袋、ビニル手袋、エプロンを着用する。治療台に上がる際には帽子に保護メガネまで着用と、徹底した飛沫対策が取られていた。実際に治療に当たる人々もまさに完全防護であり、頭部をすっぽり覆う保護帽からはホースが延びていて、背中の空気供給ボンベ(のようなもの)に接続してある。それを見た筆者は地下鉄サリン事件で地下鉄霞ヶ関駅へ降りていく防護服をまとった人々のことを思い出した。
②アメリカ式歯の治療
アメリカ式歯の治療は日本とは異なり初診はクリーニングと検査で終わってしまう。それは半年に一度のクリーニングと検診に保険が適用されるために、多くの人がそれを利用して、その時に治療の有無を判断するからだ。筆者はてっきり、『今日はどこが悪いのですか?』『はい、実は右奥の歯が先日欠けまして、それ以来時折痛むことがあるのです』『どれどれ・・ややっ。これはさっそく抜きましょう!』といったやりとりがすぐに開始されるものと思っていたのでやや拍子抜けした。しかしながら筆者はそのクリーニングと検査にて目的の親知らず以外にも虫歯を発見されてしまったために、合計3回もたかし歯科へ足を運ぶ羽目になったのだ。
③たかし歯科の人々
たかし歯科の人々はみな優しい。初診のクリーニングを担当してくれた歯科助手の方は日本人女性で、機械音に怯える筆者に“にぎにぎクッション”を手渡してストレスの低減をはかってくれた。クリーニング中、この人は明るく語りかけてくれるのだが、口を開けたままでは上手に返事ができないので困惑した。どことなく不安げな顔をした中国系と思しき歯科助手の方もとても気遣いが丁寧で安心する。もうひとり、防護服の所為でことさらに大柄に見える女性歯科助手の方もおり、この人もたいそう明るく、甘いものが好きだと言ってユーモラスに接してくれる。
④たかし先生
だが一番優しいのはたかし先生だ。たかし先生のお陰で勇気をもって抜歯することができた。 ただ、“はい、今からちょっと注射打つけどごめんね、大丈夫だよ”“はい、今から引っ張ってみるからね、痛かったら手を挙げてね”“最後ちょっと力入れるよ、もう出てきてる”とあまりに丁寧でこまめなインフォームドコンセントが災いし、“あ、これから痛いことが始まる”と明確に判ってしまうことで恐怖感が募り、痛みを錯覚させている可能性がある。
恐怖の抜歯作業の間、筆者はえずいたり、麻酔の追加を要求したりとたかし先生を困らせたのだが、作業は20分程度で終わってしまった。『よく頑張った!』そうたかし先生に褒められたので、『いやいや、お恥ずかしいところを見せてしまい・・』と答えると、『大丈夫!そんなことない!みんな同じだよ!』とさらに励ましてくれた。“あぁ、これでたかし歯科ともおさらばか”と思うと少し寂しい気がしたものの、支払時に受付の女性に『えっと・・次の予約はいつにしますか』と聞かれたときには、『いや! もう来なくていいはずだが!』と強い口調で言ってしまった。『あ、治療ではなく半年後のクリーニングの予定ですが・・・』と冷静に返されたので恥ずかしかった。さて、痛み止めや化膿止めを処方してもらったおかげかその後の痛みは全くなく、その日も普通に職場へ行き業務をこなしました。ベイエリアで歯の不安に苛まれている30代独身日本式サラリーマンは参考にして欲しい。