読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

人間讃歌と葬送の美学、「おくりびと」(2008年)

2009-04-21 04:53:11 | 映画;邦画
~楽団の解散でチェロ奏者の夢をあきらめ、故郷の山形に帰ってきた大悟(本木雅弘)は好条件の求人広告を見つける。面接に向かうと社長の佐々木(山崎努)に即採用されるが、業務内容は遺体を棺に収める仕事。当初は戸惑っていた大悟だったが、さまざまな境遇の別れと向き合ううちに、納棺師の仕事に誇りを見いだしてゆく。(シネマトゥデイ)~

英題:Departures
監督:滝田洋二郎
脚本:小山薫堂
音楽:久石譲
撮影:浜田毅
出演:本木雅弘、広末涼子、峰岸徹、山崎努、余貴美子、吉行和子、笹野高史、杉本哲太、山田辰夫

遅まきながらやっと観ました。第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞、第81回アカデミー賞外国語映画賞の話題作に関して、私がここで語ることはありません。率直に、素晴しい映画をありがとうございます、と関係者の方々に申し上げたいと思います。私が最も美しいシーンだと感じたのは、エンディングは言わずもがな、大悟と妻・美香が「鶴の湯」の主人・山下ツヤ子を通して和解するシーンでした。

本作の基になった1996年に青木新門さんの著書「納棺夫日記」(1996)については、本作を観る前に下記の記事で取り上げました。

<「おくりびと」が教えてくれるグローバリズムの本質>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/cf480f896f7dd25bb0b0e987389d9f53

それにしても山形は数多くの映画のロケ地になりますね。山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」(2002)、「隠し剣 鬼の爪」(2004)、「武士の一分」(2006)、黒土三男監督の「蝉しぐれ」(2005)、篠原哲雄監督の「山桜」(2008)など、同県出身の藤沢周平さんの小説が映画化されていることもその要因の一つですが、他に矢口史靖監督の「スウィングガールズ」(2004)、さらに三池崇史監督の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007)、塚本連平監督の「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」(2008)などが撮られていますね。

石文(いしぶみ)と小林親子の話も美しい逸話でした。それもエンディングにあんな形で描かれるとは・・・。他に、冒頭に登場したNKエージェント社に立てかけてあった三つの棺桶が、これもエンディングに上手く使われていましたね。佐々木社長からどれでもいいから持ってけと言われ、その三つの中からあの棺桶を選んだのは、大悟だったのか妻の美香だったのか・・・。

また、食事のシーンも印象的でした。大悟にとって最初の納棺後に車の中で社長の佐々木生栄と二人で食べていたものが何だったかわかりませんが、白子、鶏肉などをを食べるシーンは「生」への象徴として描かれていました。

本木さんのチェリストとしての演技も立派でした。随分練習されたのだと思いますが、きっとある程度弾けるようになったんだろうなと思っていたら、ロケ地となった山形県酒田市の酒田市民会館希望ホールで生演奏をされていたんですね。とにかく、本作に賭ける本木さんの意気込みが伝わってくるエピソードです。

<本木雅弘がロケ地庄内に感謝を込めチェロ演奏!「おくりびと」試写会>
http://eiga.com/buzz/20080825/13

本木さんはチェロを練習したときの指の運び方が納棺師としての所作に役立ったと語っています。また、本作でのチェロの使い方と納棺師の所作の折りこみ方は実に巧みな演出でした。この物語になぜチェロを組み合わせたのか興味がわきましたが、それは小山薫堂さんが「チェロの響きが好きだから、なんらかのかたちでチェロを絡ませたいと思ってた」ところに、今回の「おくりびと」のオファーがあったというたまたまの話だとか。

<ほぼ日刊イトイ新聞 - 死を想う>
http://www.1101.com/okuribito/2008-12-04.html

旅立ちへの準備は、納棺師から「門番」としての火葬場職員(火夫)に至まで、婚礼におけるスタイリスト、メークアップスタッフと同じなんだなと、気づきました。冠婚葬祭における職業はこれまで婚礼に関わる人々に光が当たっていましたが、本作を観て納棺師への志望が増えたという報道にもあるように、こうした職業が注目するのは大変良いことだと思います。そういった意味では、看護、介護の仕事にもあい通じるところがありますね。

さて、スタッフ・キャスト陣については、私からこのブログであえてお伝えすることもなく、私の備忘録として写真とウィキペディアへのリンクだけ添付しておきます。


<滝田洋二郎>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BB%9D%E7%94%B0%E6%B4%8B%E4%BA%8C%E9%83%8E


<小山薫堂>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%B1%B1%E8%96%AB%E5%A0%82

本作で素晴しい音楽を書いた久石譲さんについては、下記の記事で取り上げましたので割愛します。

<「感動をつくれますか?」(久石譲著/角川oneテーマ21)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/86bb1b3d4a73a88eac106bfd419ac270

<祝、日本アカデミー賞・音楽賞受賞、日本のクインシー・ジョーンズ~久石譲とその仕事~>
http://blogs.yahoo.co.jp/asongotoh/56714239.html

また、本作の音楽に関する側面を綴った下記の記事を参照していただければ幸いです。

<音楽映画としての「おくりびと」>
http://blogs.yahoo.co.jp/asongotoh/57320858.html



<本木雅弘>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E6%9C%A8%E9%9B%85%E5%BC%98


<広末涼子>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E6%9C%AB%E6%B6%BC%E5%AD%90


<山崎努>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%B4%8E%E5%8A%AA


<余貴美子>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%99%E8%B2%B4%E7%BE%8E%E5%AD%90


<吉行和子>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E8%A1%8C%E5%92%8C%E5%AD%90


<笹野高史>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%B9%E9%87%8E%E9%AB%98%E5%8F%B2

そして、大悟が納棺したニューハーフ、留男を演じた白井小百合さん。愛知出身の1980年9月2日生まれ。2006年ミスユニヴァース・ジャパンのファイナリストでした。

<Sayuri's diary>
http://sayuri.arekao.jp/entry-d9d2ed66861e5e123564ebb263af995e.html

本作の上映期間中に逝去された峰岸徹さん。ご冥福をお祈りします。
<峰岸徹>

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B0%E5%B2%B8%E5%BE%B9

関連記事;
<「おくりびと」が教えてくれるグローバリズムの本質>
http://ameblo.jp/asongotoh/entry-10213974848.html


最新の画像もっと見る

コメントを投稿