シュールでクールでアヴァンギャルドな「ギャングスター・ナンバー１」（イギリス、ドイツ/2000年）

「いつの時代にも、男が焦がれるオトコがいる。ポール・ベタニー＋マルコム・マクダウェルvsデヴィッド・シューリス。世界を惹きつける英国俳優の息をのむ競演！1960年代後半、スウィンギング・ロンドンから現代へ交錯する時間軸。裏社会の頂点に君臨する男と、その彼に憧れるあまり、やがて狂気に取り憑かれていく若きギャングスターの壮絶な闘い」。

「『ビューティフル・マインド』に出演し、英国インディペンデントをになう気鋭の俳優ポール・ベタニーが若きギャングスターを、その彼が憧れ、男たちの尊敬と忠誠を一身に集める「暗黒街の貴公子」をデヴィッド・シューリス。そして『時計じかけのオレンジ』のマルコム・マクダウェルが、昇り詰めた男の狂気を怪演する」。

「異常なまでの力への執着。頂点を手にした者だけが享受することのできる最高の贅沢。思わず目を背けたくなるような激しい暴力。そして次の世代にいつ追い落とされるか分からない不安…。ギャング映画というのは大なり小なりそんな要素を備えているものだが、『アシッド ハウス』で映画界に名乗りを上げたポール・マクギガン監督は、斬新な映像とディテールへの執着、そして息もつかせないストーリー展開と、音楽に『唇からナイフ』のジョン・ダンクワースとデレク・ジャーマン監督作品で注目を集めるサイモン・フィッシャー・ターナーを起用し、ロンドン・ノワール ともいうべき新世代のギャング・ムービーを誕生させた」。（公式サイト）

「狂気」。まさにこの言葉がこの映画を貫くコンセプトだ。斬新な殺戮シーンに圧倒される。しかし、登場物はクールでハイセンス。主人公のギャングスターだけが二役。55歳の彼を「時計仕掛けのオレンジ」のマルコム・ベタニーが演じているが、これがいい。二役にしたのはやはり意味がある。ポール・ベタニーは最近売り出しの俳優だが「ドッグビル」の演技がいい。


ポール・ベタニー（若きギャングスター）
出演作：『ビューティフル・マインド』 『ROCK YOU！（ロック・ユー！）』 『キス★キス★バン★バン』。「ギャングスターは、トップの座を狙って意地を張る無常で空虚な人間。野心だけが彼を支配している。典型的なアンチヒーローで、そういう意味ではリチャード3世に似ている。」


マルコム・マクダウェル（55才のギャングスター）
出演作：『時計じかけのオレンジ』 『タイム・アフター・タイム』 『カリギュラ』。「ギャングスターは、怪物のような人間だ。フレディに対する彼の感情は、強迫観念、嫉妬、愛情、憎しみ、これらが渾然一体となったもの…またはそれ以上のものだ。彼のような人間に今まで会ったことがないが、これからも会いたくない。」


デヴィッド・シューリス（フレディ・メイズ）
出演作：『シャンドライの恋』 『ネイキッド 快楽に満ちた苦痛』 『セブン・イヤーズ・イン・チベット』、「フレディは、粗暴で劣等感の持ち主で混乱していて嫉妬深いギャングスターに比べ、ストイックで無口で用心深い男だ。フレディについて知れば知るほど、私はこの男を非道な悪役として演じる気持ちになれなくなった。」

サフロン・バロウズ（フレディの婚約者カレン）
出演作：『セクシュアル・イノセンス』 『セレブリティ』 『Frida』 、「カレンの役で一番気に入ったのはフレディとの関係。2人はとても強い絆で結ばれているの。2人の強すぎる愛がその後に続く悲惨な事件を招いたのよ。」

ポール・マクギガン（監督）
ポール・マクギガンは映画に進出する前は写真家として成功していた。その後、チャンネル4のために、エイズに感染した子供たちを扱った『Playing Nintendo With God』など多数のドキュメンタリーを撮り、CMやMTVなどで活躍。その後、アーヴィン・ウェルシュによる同名小説『アシッド ハウス』（98）の第1部の〈グラントン・スター・コーズ〉で、98年ロイヤル・テレビジョン・ソサエティの最優秀新人賞を受賞し、この3部作『アシッド ハウス』は99年にニューヨーク・アンダーグラウンド映画祭でベスト・フィルム・アワードを受賞。

サイモン・フィッシャー・ターナー（音楽）
幼いころから子役スターとして活躍、俳優としての活動とともに音楽にも興味をもつようになり、80年代初頭にザ・ザのマット・ジョンスンと出会って、本格的に音楽の道へと進む。やがて映画監督のデレク・ジャーマンと出会い、彼の『カラヴァッジオ』（86）に出演、音楽も担当し注目を集めるようになる。その他音楽を担当した作品に『エドワードⅡ』（91）、『BLUE』（93）、『メビウス』（98）がある。矢崎仁司監督の『花を摘む少女と虫を殺す少女』（00）では音楽とともに出演もしている。

ジョン・ダンクワース（作曲）
ソングライター、ミュージシャンとして、60年代から現在まで多くの映画音楽を手がける。代表作にはジョセフ・ロージー監督、モニカ・ヴィッティ主演の『唇からナイフ』（66）、ヴァネッサ・レッドグレーヴ主演の『モーガン』（66）、リチャード・フライシャー監督、リチャード・アッテンボロー主演の『10番街の殺人』（71）、モリー・リングウォルド主演の『ハネムーンはモンテカルロで』（89）、『キス★キス★バン★バン』（00）などがある。