読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

男たちの哀しいロマンティシズムが目に沁みる、「スモーク」(アメリカ/1995年)

2009-07-30 18:59:54 | 映画;洋画
~アメリカを代表する作家ポール・オースターが書き下ろした原作を基に、男たちの中に隠された哀しいロマンティシズムを描いた都会の物語。14年間毎朝同じ時刻に店の前で写真を撮り続けている煙草屋の店長オーギー、彼の馴染みの客で突然の事故により出産まもない妻を失って以来ペンを持てずにいる作家のポール、彼が車に跳ねられそうになった所を助けた黒人少年ラシードの3人を軸に、ブルックリンのとある煙草屋に集まる男達女達の日常を、過去と現在を、嘘と本当を巧みに交差させながら進んでゆく。(allcinema ONLINE)~

監督:ウェイン・ワン
製作:ピーター・ニューマン、グレッグ・ジョンソン、堀越謙三、黒岩久美
製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン、井関惺
原作/脚本:ポール・オースター
撮影:アダム・ホレンダー
音楽:レイチェル・ポートマン
出演:ハーヴェイ・カイテル(オーギー・レン)、ウィリアム・ハート(ポール・ベンジャミン)、ハロルド・ペリノー・Jr(トーマス・コール)、フォレスト・ウィテカー(サイラス・コール)、ストッカード・チャニング(ルビー・マクノート)、アシュレイ・ジャッド(フェリシア)

ずっと以前に本作は見た記憶がありますが、改めて観てみるとほとんど記憶にありませんでした。ブルックリンで煙草の販売店を営むオーギー。14年前のある出来事を機に写真撮影が趣味になり、毎朝8時、同じ場所で撮った写真のその数は4000枚に。

数年前に妻を銀行強盗の流れ弾で失って以来スランプに陥っている、オーギーの店の馴染み客で作家のポール。オーギーの写真と14年前の出来事が彼に再生のインスピレーションを。

強盗現場に落ちていた大金を拾ったためにギャングに追われている黒人の少年トーマス。ポールが自動車に轢かれそうになっていたところを助けたことで、ポールは礼として彼を家に泊めたが、そこにドラマが生まれる。

自動車修理店を経営している一人の男サイラス。数年前に交通事故に遭い妻と左手を失い、息子を捨てて新しい家庭をつくっているが、ある日店の前にじっと絵を描いている青年に面食らう。

しがない煙草屋の店主、書けない作家、放浪中の黒人の少年、片腕を無くした男。この四人が織りなす人間模様が地味だけれど、そこはかとなくいい、そんな映画です。

本作の原作は、1990年にニューヨーク・タイムズに掲載された「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」。この記事を読んだウェイン・ワン監督がオースターに連絡を取り、作品の映画化の話が進んだのだそうです。オースターはワンと親交を深め、1995年の映画「スモーク」の脚本を書き下ろし、ハーヴェイ・カイテルやフォレスト・ウィテカーなどのキャストの選定も行ったほどの力の入れようだったとか。


原作者ポール・オースター、彼のペンネームがポール・ベンジャミンなんだそうです。

ポール・オースター (Paul Auster、1947年2月3日 - )は、「アメリカの小説家、詩人。ユダヤ系アメリカ人。オースターはニュージャージー州ニューアークで、中流階級のポーランド系ユダヤ人の両親の元で生まれ、ニュージャージー州サウスオレンジにて育つ。12歳の時に叔父から預かったダンボールいっぱいの本を読み耽り(このエピソードは『ムーン・パレス』の中に登場する)、以後、文学に興味を覚える」。

<ポール・オースター - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC


監督のウェイン・ワンについては、今回初めて知りました。

ウェイン・ワン(Wayne Wang,1948年-)は、「香港生まれの映画監督である。カリフォルニア大学で学ぶために渡米し、卒業後に香港のテレビ局に就職するが、香港のシステムが肌にあわず再び渡米しサンフランシスコに移住。初期の低予算で作られた"Chan Is Missing"や"Dim Sum: a little bit of heart"が高い評価を得た」。

「『スモーク』でベルリン国際映画祭銀熊賞、『A Thousand Years of Good Prayers(千年の祈り)』でドノスティア=サン・セバスティアン国際映画祭金貝賞(最高賞グランプリ)を受賞している。作家のポール・オースターと親交が深く、『スモーク』と『赤い部屋の恋人』では共同で脚本を書き、『ブルー・イン・ザ・フェイス』は共同で監督している」。

<ウェイン・ワン - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%B3


さて、冒頭にもあるように、本作では三人の日本人が製作陣に加わっています。どういう経緯でそうなったのかわかりませんが、バブル崩壊後の経済低迷期に製作陣としてよくぞ手を挙げられたと尊敬いたします。

まずは堀越謙三さん。

<堀越謙三 - 東京芸術大学>
http://www.geidai.ac.jp/staff/ff003j.html


黒岩久美さんは1978年からニューヨークに在住する映画プロデューサー。

<第2神戸100年映画祭/速報>
http://www5e.biglobe.ne.jp/~kff100/kff1997/k97-12.htm


井関惺さんは、プロデューサーとして、「戦場のメリークリスマス」(1983)、「乱」(1985)、「ハワーズ・エンド」(1992)、「クライング・ゲーム」(1993)、「始皇帝暗殺」(1998)ほか代表作多数の辣腕でありました。

井関惺(さとる); 65年(株)日本ヘラルド映画に入社。宣伝部・国際部を経て、81年(株)ヘラルドエース取締役となる。89年、日本フィルム・ディベロップメント・アンド・ファイナンス(NDF)設立。また、サンダンス国際映像作家賞の国際審査員として、若手育成にも尽力している。
<キネマ旬報映画総合研究所:再考!日本映画>
http://www.kinejunsoken.com/reconsideration/03/



最後は役者陣。主演のハーヴェイ・カイテルは、あの「地獄の黙示録」(1979)を撮影開始わずか2週間後に降板(代役はマーティン・シーン)したそうで、それ以降ハリウッドにおいて敬遠されるようになり徐々に端役しか与えられなくなったんだとか。1992年に出演と製作補を兼任した「レザボア・ドッグス」で1980年代に経験したギャング役の集大成とも言える演技を披露し映画俳優としての地位を取り戻したそうです。

ハーヴェイ・カイテル(Harvey Keitel, 1939年5月13日 - )は、「ニューヨーク市ブルックリン出身のアメリカ合衆国の俳優。東ヨーロッパ移民のユダヤ人の両親の間に生まれる。16歳の時にアメリカ海兵隊へ参加しレバノンに出兵。20歳で除隊した後は靴のセールスマンを経てマンハッタンで法廷速記官を務め生計を立てた。友人の誘いで演劇を始めステラ・アドラーとリー・ストラスバーグに師事」。

<ハーヴェイ・カイテル - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%86%E3%83%AB


黒の眼帯をはめた切羽詰った女性を演じたのがストッカード・チャニング。ハリウッドの名バイプレイヤーですね。

ストッカード・チャニング(Stockard Channing、本名:Susan Antonia Williams Stockard、1944年2月13日 - )は、「アメリカ合衆国の女優。ニューヨーク州ニューヨーク市出身。大学で歴史と文学を学んだが、卒業後に俳優を志し、ボストンで舞台俳優としてデビュー。1971年に映画デビューし、1975年のウォーレン・ベイティやジャック・ニコルソンと共演した『おかしなレディ・キラー』で注目を集める。舞台やテレビ出演が多い。1985年には"A Day In The Death Of Joe Egg"でトニー賞を、2002年にはエミー賞を受賞した。『私に近い6人の他人』でアカデミー主演女優賞にノミネートされた」。

<ストッカード・チャニング - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0


そして、本作の中心的な役割を演じるのはハロルド・ペリノー・ジュニア。

ハロルド・ペリノー・ジュニア(Harold Perrineau Jr., 1968年8月7日 - )は、「アメリカ合衆国ニューヨーク州ブルックリン出身の俳優である。ニューヨークで音楽と演劇を学ぶが、ダンサーになり『フェーム』などいくつかの舞台に立った。1990年代より映画にも出演するようになり、バズ・ラーマンの『ロミオ+ジュリエット』ではマキューシオを演じた。また、『マトリックス』シリーズの第2作と3作目にオペレーターのリンクとして出演した。テレビ出演も多く、最近ではヒットしたテレビシリーズ『LOST』にも出演している」。

<ハロルド・ペリノー・ジュニア - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AD%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%BBJr


ウィリアム・ハートについては下記の作品で取り上げました。

<資源獲得戦争とオイルマネーに群がる国家と人々を描く、「シリアナ」(アメリカ/2005年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/91ee4306d2a9355e629a19ef1c4f1b8c


27歳のアシュレイ・ジャッドが18歳の荒れた娘を演じています。彼女が注目を浴びるようになった、本作と同じ年に公開された「ヒート」で取り上げましたが、二つの作品での彼女の演技が見ものです。その作品は下記で取り上げました。

<イタリア系アメリカ人名優の13年前の熱い競演を見直す、「ヒート」(米/1995年)とその脇役たち>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/477fed360bad017c88dfadcd799ad571


オスカー俳優のフォレスト・ウィテカーについては、下記の作品で取り上げました。
<アフリカで最も血にまみれた独裁者を描く、「ラストキング・オブ・スコットランド」(英/2006)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/f2275e65ad7ceafed329be2389a67a27


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