読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

追悼;緒形拳。あの竹下宗吉役は、あなたにしか演じられません「鬼畜(きちく)」(1978年)

2008-10-08 08:45:12 | 映画;邦画
原作:松本清張
監督:野村芳太郎
脚本:井手雅人
音楽:芥川也寸志
出演:緒形拳、岩下志麻、小川真由美、岩瀬浩規、蟹江敬三、鈴木瑞穂、大竹しのぶ、田中邦衛、大滝秀治

~竹下宗吉と妻、お梅は川越市で印刷屋を開いていた。宗吉は小金が貯ったところで、鳥料理屋の菊代を囲い七年間に三人の隠し子を作った。おりあしく、火事と大印刷店攻勢で商売は凋落した。手当を貰えなくなった菊代は、利一(六歳)良子(四歳〉庄二(一歳半)を連れて宗吉の家に怒鳴り込んだ。菊代はお梅と口論した挙句、三人を宗吉に押しつけて蒸発した。お梅は子供達と宗吉に当り散らし、地獄の日々が始まった。~

~ある日、寝ている庄二の顔の上にシートが故意か偶然か、被さって死んだ。シートのあった位置からお梅の仕業と思い乍ら宗吉は口に出せない。「あんたも一つ気が楽になったね」お梅の言葉にゾーッとする宗吉だが、心中、ひそかな安らぎをも覚えるのだ。その夜、二人は久しぶりに燃え、共通の罪悪感に余計、昂ぶった。~
~その後、宗吉は良子を東京タワーへ連れて行き、置き去りにして逃げ帰った。長男の利一には「よそで預かって貰った」といい訳した。お梅は利一を一番嫌っている。兄弟思いで利口な利一の白目がちな目が、お梅夫婦のたくらみを見抜いているようだ。~

~何日か後、宗吉は、こだま号によろこぶ利一をのせ、北陸海岸に連れて行った。断崖上の草原で蝶採りに遊び疲れ眠りこけた利一を宗吉は崖下に放り出した。翌朝、沖の船が絶壁の途中に引掛っている利一を発見、かすり傷程度で助けだした。警察の調べに利一は父親と遊びにきて、眠っているうちに落ちたと云い張った。名前、住所、親のことや身許の手がかりになることは一切いわなかった。~

~しかし警察は利一の服のメーカーのマークが全部切りとられていたことから、事故ではなく、利一は突き落とした誰かをかばっていると判断した。利一の黙秘に警察はお手上げになった時、偶然、入ってきた名刺屋が、利一の持っていた小石に注目した。~

~利一が“いしけりの石"と話すそれは、石版用の石で、インキをこすれば、消えた版が再現できるかもしれない。警察の捜査が開始された。移送されてきた宗吉が警察で親子の対面をした。「坊やのお父さんだね?」警官の問いに利一が激しく拒否した。「よその人だよ、知らないよ、父ちゃんじゃないよッ」手錠がかかった手を合掌するように上げて、涙を流して絶叫する宗吉の声が部屋いっぱいに響いた。「利一ッ……かんべんしてくれ!」~(goo映画)


事実をもとに描かれたというのが、実に哀しい物語です。随分前に観た映画ですが、私もこのエンディングには泣いてしまいました。この竹下宗吉が「鬼畜」となっていくプロセスが実に淡々としていて、いつわが身に起きてもおかしないところが恐怖です。翌年の佐木隆三さんの小説を映画化した「復讐するは我にあり」<(1979年)>(06年5/31付記事)の西口彰役と双璧を成す好演でしたね。


緒形拳(1937年7月20日 - 2008年10月5日)は、「東京府東京市牛込区(現・東京都新宿区市谷)出身。本名は緒形 明伸(おがた あきのぶ)。長男は緒形幹太、次男は緒形直人で共に俳優。1957年、東京都立竹早高等学校卒業後、憧れていた新国劇の辰巳柳太郎の弟子になるべく1958年に新国劇に入団した。入団後は辰巳の付き人になる。下積みの彼の才能を評価し抜擢してくれたのは辰巳ではなく新国劇のもうひとりの雄島田正吾であった。1960年、『遠い一つの道』でボクサー役に抜擢され映画化された作品では島田と競演し映画デビューを果たす」。

「1965年、NHK大河ドラマ『太閤記』の主役に抜擢され、お茶の間の人気を独占する。この間も新国劇を休むことは許されなかった。1966年、NHK大河ドラマ『源義経』の弁慶役を演じる。新国劇所属の女優・高倉典江と結婚。1968年、新国劇を退団しフリーになる。テレビに映画にと精力的に出演し、テレビでは『必殺仕掛人』シリーズの藤枝梅安役で好評を博する」。

「1978年、野村芳太郎監督作品『鬼畜』に出演。その演技は秀逸でその年の男優賞を総なめにする。その後も1979年に『復讐するは我にあり』(今村昌平監督)、1983年に『楢山節考』(今村昌平監督)に出演し高い評価を得る。また1999年、池端俊策監督の『あつもの』で「フランス・ベノデ映画祭グランプリ」を受ける。2000年、紫綬褒章受章。2008年10月5日、獨協医大病院にて、肝癌による肝臓からの出血により死去した。最期は家族と長年の友人であった津川雅彦が看取ったとのこと。71歳没」。(ウィキペディア)


ちなみ今日は、武満徹さんの生誕78年にあたる日です。緒形拳さんが弁慶役を演じた「源義経」で音楽を担当したのが、武満さんでした。二人の偉大なアーティストのご冥福をお祈りします。


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