読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

資源獲得戦争とオイルマネーに群がる国家と人々を描く、「シリアナ」(アメリカ/2005年)

2008-09-22 20:12:46 | 映画;洋画
原題:Syriana
監督、脚本:スティーヴン・ギャガン
原作:ロバート・ベア、「CIAは何をしていた?」(原題:See No Evil / 新潮社刊)
製作総指揮:ジョージ・クルーニー、スティーヴン・ソダーバーグ
音楽:アレクサンドル・デプラ
撮影:ロバート・エルスウィット
出演:ジョージ・クルーニー、クリストファー・プラマー、クリス・クーパー、ジェフリー・ライト、マット・デイモン、アマンダ・ピート、アレクサンダー・シディグ、ウィリアム・ハート、ティム・ブレイク・ネルソン、ジェーン・アトキンソン

~CIAのベテラン諜報員ボブ・バーンズ(ジョージ・クルーニー)は、長年にわたり中東で活動を続けていた。しかし、息子の大学進学を契機に諜報員の職を引退し、残された日々をデスクワークに専念しようと決心する。中東を舞台に、中東諸国やアメリカ、中華人民共和国などの石油利権をめぐる陰謀を、複数のストーリーがからむ形で描く。(シネマトゥデイ)~

元CIA工作員であったロバート・ベアの告発本『CIAは何をしていた?』を元に制作された。製作総指揮も務めたジョージ・クルーニーがアカデミー助演男優賞、ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞した。

「シリアナ(SYRIANA)」とは、ワシントンの外交・安全保障の業界で使われる言葉でイラン・イラク・シリアの3国がひとつの民族国家になることを想定した中東再建プロジェクトのことであり、アメリカ等で「Syriana」という場合は、シリア地方のみならず中東、紛争の絶えないその方面を指すことだそうです。

前回の「フィクサー」の前に製作されたジョージ・クルーニー、スティーヴン・ソダーバーグコンビが告発する国家と大企業の陰謀を描く力作です。本作のシーンで、この2社の合併に関する調整を依頼される法律事務所に所属する弁護士のベネットに、上司が、調査の実施に対して次のようにレクチャーするセリフが気に入りました。

Now the job is , find the problem, fix the problem , And if you do not find a problem , then there is no problem(君は問題を見つけ、調整する。問題がなければ、それでいい)

こうした巨大企業の告発を扱った映画は他に、マット・デイモン 主演の「レインメーカー」(1997年/フランシス・フォード・コッポラ 監督)、ラッセル・クロウ 、アル・パチーノ が共演した「インサイダー」(1999年/マイケル・マン 監督)、ジュリア・ロバーツがアカデミー主演女優賞を獲得した「エリン・ブロコビッチ」(2000年/スティーヴン・ソダーバーグ 監督)などがありますね。

マイケル・ムーア監督も頑張っていますが、やはり作品として観るべき価値を生み出してくれるのは、巨匠と呼ばれる監督たちの作品です。

まずは、本作のプロットとなった「CIAは何をしていた?」の著者であり、元CIAケース・オフィサーであるロバート・ベア氏について。

ロバート・ベア(Robert Baer, 1952年7月1日 - )は、「コロラド州アスペンに生まれた。幼い頃からの夢はプロのスキーヤーになることであったが、高校1年次の成績が悪かったため母親によりインディアナ州にあるボーディングスクールのクルヴァー・アカデミーに入学させられる。その後1976年にジョージタウン大学を卒業、UCバークレーに入学した後、CIA作戦局に就職することを決意する」。

「入局後、1年間の基礎訓練を受けた。その後20年間のうちにCIAケース・オフィサーとしてマドラス、ニューデリー、ベイルート、ドゥシャンベに赴任し、最終任地はイラク北部クルド人居住区のサラ・アルディン。サラ・アルディン赴任中の1995年にベアは当時のクリントン政権に対し、イラク軍将校、イラク国民会議のアフメド・チャラビ(後にフセイン政権崩壊後のイラク副首相)、クルド愛国同盟のジャラル・タラバニ(フセイン政権崩壊後のイラク大統領)らによるサダム・フセイン転覆計画の支援許可を求めたが、国家安全保障担当大統領補佐官アンソニー・レイクにより作戦中止を命じられた」。

「1997年、ベアはCIAを退職し、1998年3月11日、キャリア・インテリジェンス・メダルを受章した。退職後、自身のCIAでの経験に基づき、官僚化したCIAの事なかれ体質を自身の著書See No Evil(邦題:CIAは何をしていた?)において痛烈に批判している。中東でせめぎあう各国の石油利権を描いた映画シリアナは、彼の著書See No EvilとSleeping With the Devilに基づいている」。

監督は、本作で監督デビューを飾ったスティーヴン・ギャガン。

スティーヴン・ギャガン(Stephen Gaghan,1965年5月6日-)は、「アメリカ合衆国ケンタッキー州出身の脚本家・映画監督。ケンタッキー大学で学んだ。『NYPDブルー』、『ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル』などのテレビシリーズの脚本を手がけた後、『トラフィック』でアカデミー脚色賞を受賞。2005年、中東を舞台にした『シリアナ』でジョージ・クルーニーにアカデミー賞をもたらした」。

本作でジョージ・クルーニーがアカデミー助演男優賞を獲得したということは、この人が主演だったんですね。観たいと思って、まだ観ていない「バスキア」(1996)に主演し、「ALI アリ」(2001)、「クライシス・オブ・アメリカ」(2004)、「007 カジノ・ロワイヤル」(2006)、「ダイ・ハード4.0」(2007)など話題作にも登場していたのが、ジェフリー・ライトです。

ジェフリー・ライト(Jeffrey Wright,1965年12月7日-)は、「アメリカ合衆国ワシントンD.C.出身の俳優。アマースト大学で政治学を学んだ後、奨学金を得てニューヨーク大学で演技を学ぶ。しかし2ヶ月で大学を去り、オフ・ブロードウェイなどの舞台に立つようになる。1990年、ハリソン・フォード主演の『推定無罪」』小さな役で映画デビュー。舞台出演はその後も続け、1994年には『エンジェルス・イン・アメリカ』でトニー賞の助演男優賞を受賞」。

「1996年には実在したアーティスト、ジャン・ミッシェル・バスキアの伝記映画『バスキア』で主人公を演じて注目される。撮影中に出合った女優のカルメン・イジョゴとは2000年に結婚した。その後もシェイクスピアの『ハムレット』や、テレビ版の『エンジェルス・イン・アメリカ』、ジム・ジャームッシュの『ブロークン・フラワーズ』など幅広く活躍している」。

友情出演的な位置づけ登場するのが名優、ウィリアム・ハート。「白いドレスの女」(1981)、「蜘蛛女のキス」(1985)、「ブロードキャスト・ニュース」(1987)、「A.I. Artificial Intelligence」(2001)、「ヴィレッジ」(2004)、「グッド・シェパード」(2006)などの作品で存在感を示していますね。

ウィリアム・ハート(William Hurt, 1950年3月20日-)は、「アメリカ合衆国ワシントンD.C.出身の俳優である。大学で神学を学んでいたが俳優になることに決め、ニューヨークのジュリアード音楽院で演劇を学んだ。1985年の『蜘蛛女のキス』でアカデミー主演男優賞とカンヌ国際映画祭男優賞を受賞。フランス語も堪能で、フランス人女優サンドリーヌ・ボネールと暮らしていたこともあり、彼女との間に一女をもうけている」。

<ウィリアム・ハート - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%88

「マルコム」(1992)、「黙秘」(1995)、「12モンキーズ」(1995)、「ビューティフル・マインド」(2001)、「インサイド・マン」(2006)などに出演し、陰の黒幕的な役柄には欠かせないのがこの人。

クリストファー・プラマー(Christopher Plummer、1929年12月13日 - )は、「カナダ・トロント出身の俳優である。曾祖父はカナダの第3代首相、ジョン・アボット。ピアニストになるために勉強していたが俳優に転向し、ブロードウェイやカナダやロンドンで様々な舞台に立った。シェイクスピア俳優としても有名。映画デビューは1958年。以来、テレビ・映画・舞台・ラジオと幅広く活躍している」。

日本では、『サウンド・オブ・ミュージック』で、トラップ大佐役を演じたことでよく知られている。その後は、端正な顔立ちと美声を生かし、歴史ドラマやサスペンス映画で知的で重厚なキャラクターを多く演じたが、一転してサイコスリラーの名作『サイレント・パートナー』でパラノイア傾向のある不気味な犯罪者を演じてからは70年代後半より悪役や強烈な脇役として登場する事が多くなり性格俳優として脚光を浴びる。90年代は主にTVでの主演を重ねていたが、2000年代に至ると再び映画で夥しい数の作品に出演し変らぬ魅力を活かしている」。


最後に取り上げるのは、「24」でガードナー副大統領の元でCTUを国土安全保障省に吸収させるために派遣され、ウェイン政権下で安保担当補佐官カレン・ヘイズを演じ、本作ではCIA本部長を演じたジェイン・アトキンソン。「Free Willy」 (1993)「The X-Files」(1995)、「The Village」(2004)などにも出演しています。

Jayne Atkinson (born February 18, 1959) is an Tony Award-nominated American film, theater and television actress. She is best known for the role of Karen Hayes on 24. In addition to her various theater projects, Ms. Atkinson's most recent role is that of Theresa LePore in the HBO movie, Recount.


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