読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

女性作家と女性監督による「リプリーズ・ゲーム」(イタリア/イギリス/アメリカ2002年)

2007-05-12 17:49:02 | 映画;洋画
監督:リリアーナ・カヴァーニ
脚本:パトリシア・ハイスミス(「アメリカの友人」)
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジョン・マルコヴィッチ、ダグレー・スコット、レイ・ウィンストン、ウヴィ・マンシャルツ、

タイトルにはこう書きながら、観終わって改めて作品データをチェックしてわかったことです。「太陽はいっぱい」「リプリー」は知っていても、この原作者がパトリシア・ハイスミスという女性作家であることをこの年になって初めて知った次第です。また、監督もホロコースト下の退廃と官能性をテーマにした『愛の嵐』のリリアーナ・カバーニの監督でしかも女性であったことも露知らず。

さて本作はマット・デイモン主演の『リプリー』の数十年後を描いた作品といいますが、それを知らずとも十分に楽しめる作品です。そもそも「リプリー」(1999年/アンソニー・ミンゲラ監督)は、ハイスミスの原作が同じというだけで映画「太陽がいっぱい」のリメイクではないといいます。一方、この「リプリー・ゲーム」には、原作が「アメリカの友人」で同名の映画「アメリカの友人」(仏・西独/1977年)があります。ここではデニス・ホッパーがカウボーイハットをかぶり好演しているようです。

ジョン・アルコビッチ演じるトム・リプリーは、「非常に奇妙であり、突然切れたかと思うと次の瞬間は何事もなかったように平静に戻る。殺人を犯すにも、彼の心配は『自分のはめている時計が破損しないか』であり、また死体を焼却中、奥さんに花を贈る為花屋に電話をしたりと、常人には理解しがたい感情を持ち、そんな奇妙な人物」。


この映画で見せる彼女の卓越した審美眼、ヨーロッパの伝統的な美の映像はすばらしいものがあります。リプリーの住いにはそれは表現され、絢爛豪華なことといったら半端ではありません。維持費だけも数百万はかかる広さと内装。それが最後には修羅場と化す。ラストシーンのコンサート風景も格調高く美しい映像になっています。


パトリシア・ハイスミス。「1921年~1995年(74歳、白血病で死去)。『太陽がいっぱい(リプリー)』『アメリカの友人』。1921年テキサス州のフロント.ワースに生まれる。ニューヨークのバーナード・カレッジに在学中、校内新聞の編集長にたずさわるなどジャーナリズムに関心のあった才媛。卒業直後、ハーパース・バザー誌に発表した短編ヒロインが、1945年度全米雑誌小説ベスト22に選ばれ、これが作家になるきっかけとなった」。

「1950年、最初の長編『見知らぬ乗客』が出版され、これをヒチコックが映画化するなど、幸運なスタートだった。また1956年の『才子プリィ君』は、のちにルネ・クレマン監督で『太陽がいっぱい』と題して映画化されている。ハイスミスは寡作で、日本にはまず映画によって知られたと言ってよいだろう。スイスのティチノ地方の山中にある寒村で、200年はゆうにたつ石造りの家に2匹のシャム猫とひっそり、暮らしていた」。


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