読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

100年前、映画で得た巨万の富で「革命をプロデュースした日本人」(小坂文乃著/2009年)

2010-01-05 05:23:19 | 本;ノンフィクション一般
~孫文の革命へ2兆円を捧げた日本人がいた! 勃興期の映画産業で築いた巨万の富を、梅屋庄吉は惜しげもなく孫文へ捧げた。二人の盟約とは?梅屋の死後、公開が禁じられていた資料が、曾孫により陽の目を見る~

<目次>
第1章 「猫魂」が宿った少年
第2章 君は兵を挙げたまえ。我は財を挙げて支援す
第3章 革命を支えた映画ビジネス
第4章 中国の歴史が動いた日
第5章 大義をもって友をかくまう
第6章 恋愛シェルター
第7章 再起
第8章 引き裂かれる二人の盟約

アメリカでメジャーになりつつあった映画制作会社からの制約や支配を嫌い、またニッケルオデオンで消費されるだけのショートフィルムに飽きたらずに新しい表現を求めた若い映画人達が西海岸に移住し、映画都市・ハリウッドが形成され始めるのが100年前の1910年代。

その当時、東京に存在した日本の映画会社で、日本最古の映画会社のひとつとして存在したのがM・パテー商会(1906年7月4日 - 1912年9月 合併)であり、その後、日活を構成する前身4社のうち1社として映画史にその名を残しました。この会社を創業したのが本書で描かれる梅屋庄吉(1868年 - 1934年)。

この梅屋庄吉の人となりについて、次のように語られます。

・盟約を守り抜いた男
・勃興期の映画ビジネスで巨万の富を築いた男
・清朝打倒まで武器・資金を孫文へ送り続けた男
・『宋家の三姉妹』慶齢の許されざる恋を救った男
・妻・トクとともに大正三美人の一人とされる歌人、柳原白蓮をかくまった侠気の男
・広田弘毅の依頼で日中和平に奔走した男

本書では、映画ビジネスで巨万の富を築いた梅屋庄吉が、その富で支援し続けた孫文の辛亥革命とそのエピソードが描かれます。まず辛亥革命をおさらいしておきます。

~辛亥革命は、1911年(宣統3年)から1912年にかけて、中国で発生した革命である。名称は、革命が勃発した1911年の干支である辛亥に因む。革命のスローガンは「駆除韃虜、恢復中華、建立民国、平均地権(打倒清朝、回復中華、樹立民国、地権平等)」。

~狭義では、1911年10月10日夜に発生した武昌起義から、1912年2月12日の宣統帝の退位までの期間を指す。広義では、清朝末期からの一連の革命運動から中華民国成立までの、比較的長期間の政治的運動を示す。~

~辛亥革命の理念と成果は、袁世凱を中心とする北洋軍閥により撤回され、地権平等も実現しなかった。しかし、古代より続いて来た帝政を終わらせ、アジアでも初の共和制国家を樹立し、現在の台湾に繋がる政治潮流を造出した歴史的な革命である。20世紀には、世界各地で君主制国家が打倒されて共和制国家が樹立された革命が相次いだが、辛亥革命は20世紀に起こった共和制革命の先駆けにもなった。~(ウィキペディア)


梅屋庄吉の一生を知ると、財政家としては明治の実業家、政治家であり、松方コレクションで有名な松方幸次郎(1866- 1950)を思わせ、そのダンディズでは白洲次郎(1902- 1985)を思い起こします。

梅屋庄吉が孫文を支援した時代の日本は、日清戦争と日露戦争など度重なる対外拡張政策などにより対外債務が膨張し、1905年から1914年にかけての時期は、明治維新以来の経済体制が崩壊の危機に瀕していたのですから、現在に換算した2兆円もの額を投じたという気概は並々ならぬものだったのですね。


<梅屋庄吉 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%85%E5%B1%8B%E5%BA%84%E5%90%89


<孫文 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%AB%E6%96%87


<宮崎滔天 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E6%BB%94%E5%A4%A9



梅屋庄吉という人物に改めてスポットライトを当てた本書の著者である小坂文乃さんのノンフィクションライター顔負けのその筆力に感心させられます。小坂さんは、梅屋庄吉の曾孫にあたるそうですが、本業は、創業104年のフレンチの老舗レストラン日比谷松本楼の常務取締役と記されています。


<Happy-sanになろう!>
http://blog.goo.ne.jp/happy-san_001/

<日比谷松本楼 スタッフブログ>
http://blog.goo.ne.jp/matsumotoro1903


<備忘録>
ジェームス・カントリー(P54)、南方熊楠と土宣法竜と宮崎滔天 (P73)、孫文と支援者(P80)、狭野神社(P96)、松竹DENKIKAN(P121)、革命の三尊(P126)、ラス・ビハリー・ボーズ(P171)、孫文の「大亜細亜主義」(P223)


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