読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

今改めて、「オシムの言葉」(木村元彦著/2005年)

2010-03-21 17:32:56 | 本;ノンフィクション一般
~フィールドの向こうに人生が見える~
<目次>
第1章 奇妙な挨拶
第2章 イタリアW杯での輝き
第3章 分断された祖国
第4章 サラエボ包囲戦
第5章 脱出、そして再会
第6章 イビツァを巡る旅
第7章 語録の助産夫
第8章 リスクを冒して攻める
第9章 「毎日、選手から学んでいる」

ワールドカップ南アフリカ大会(6月11日 - 7月11日)まで3ヶ月を切りました。ベスト4を目指すという岡田ジャパンに期待しながらも、2月の40位から今月46位に落ちたFIFAランキング上の日本の実力を考えると、前途多難であることは誰にも明らかですね。


予選グループEの対戦国を見ると、2月のランキングから今月、オランダは3位、カメルーンは20位で変わらず、デンマークは26位から33位に落ちていますが、いずれも日本より格上の国々です。過度の期待は自重しつつも、なんとか予選突破は果してもらいたいものです。

全大会のドイツ大会の予選最終戦の対ブラジル戦で1-4と絶望的な状況で中田選手がドルトムントのフィールドを疾走続けた姿を今でも思い起こします。中田選手は、90分を走りきることの大切を後輩たちにまざまざと見せたのでしたね。

ドイツ大会で1分け2敗に終わったジーコジャパンを引継いだのがイビチャ・オシムでした。残念ながら2007年脳梗塞で倒れて監督を続けることができませんでしたが、2003年からJEFの監督を務め、2005年に優勝に導いたその手腕はオシム語録とともに、遅ればせながらオシムというサッカー人の偉大さを知らしめました。

本書はこの希代の名監督について綴られた、ノンフィクションラーターの木村元彦さんの渾身の一冊です。オシム語録は勿論網羅されていますが、イビチャ・オシム(ユーゴスラビア出身1941.5.6生まれ)という指導者が背負ってきた故国の悲しみとその克服について解き明かしてくれます。


オシム監督が現ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボに生まれて二年後の1943年に成立したユーゴスラビア民主連邦は、「7つの隣国、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字により構成される1つの国」と表現された多民族融合国家でした。

1992年から1995年まで続いたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争での混乱期をユーゴスラビア代表の最後の監督として闘ったのです。同国は2003年には緩やかな国家連合に移行し、国名をセルビア・モンテネグロに改称し、祖国ユーゴスラビアの名を冠する国家は無くなりました。そして、2006年にモンテネグロが独立して国家連合も解消され、完全消滅となったとき、オシムは日本代表を率いていたのです。

「君たちはプロだ。休むのは引退してからで十分だ」
「ライオンに追われたウサギが逃げ出す時に、肉離れをしますか?準備が足らないのです」
「アイデアのない人間もサッカーはできるが、サッカー選手にはなれない」

日本選手にこのように語り続け「考えて走るサッカー」を説いたオシムは2008年12月に契約満了に伴い、協会アドバイザーを退任し昨年1月に帰国しました。オシムの考えがDNAとなって岡田ジャパンに受け継がれていることを望みます。


<イビチャ・オシム - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%93%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%82%B7%E3%83%A0

<スポーツナビ | サッカー|日本代表|オシム監督会見全文集>
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/kaiken/osim_index.html

<スラヴ系雑学講座>
http://www.geocities.jp/yuzu_dayori/study/study1.htm


オシム監督を日本に招致した立役者が祖母井さんでした。


<祖母井(うがい)秀隆 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%96%E6%AF%8D%E4%BA%95%E7%A7%80%E9%9A%86

オシム語録を語る上で欠かせないのが通訳を務めていた間瀬秀一さん。オシム監督帰国後は、2007年よりジェフ千葉のトップチームコーチを務め、昨年千葉を解任され、今年からはファジアーノ岡山のコーチに就任。


<サカつく6|株式会社セガ>
http://www.sakatsuku.com/6/interview/vol6.html

<間瀬秀一 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%93%E7%80%AC%E7%A7%80%E4%B8%80



<木村元彦 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%9D%91%E5%85%83%E5%BD%A6


<備忘録>
オシムの求心力(P55)、記者は戦争を始めることができる(P35)、その訳(P61)、国家の崩壊とサッカー(P93)、教え子たちの無線プレー(P114)、彼らのために誰が走るんだ(P121)


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