今回は私小説風に文章メインでお届けします。
お気に召さねばスルーしてくださいね。
今年、私は59歳になった。来年はいよいよ還暦だ。なのに
いつまでこんなにあくせく働かねばならないのかと常に頭の中
で葛藤している。今回の出張は埼玉の食品問屋が主催する展示
会に参加するためである。だが私は年に一度のこの展示会があ
まり好きではないのだ。それは目的地が東京ではなく埼玉だか
らということなのかもしれない。単にわがままなのである。
通常通り綿密に天気予報を見て準備を整えてきた。10月半ば
だというのに12月なみの寒波が襲って来ている東京。加えて秋
雨前線の影響とかで今週はずっと雨の予報だ。だがあえて傘を
持って来なかったのは正解だ。羽田に降り立った時にはまだ残
っていた雨もいつのまにかやんで陽がさしてきた。私は自他共
に認める晴れ女なのである。
モノレールの窓から都心のビル群を眺めながらいつものよう
に妄想する。これだけの数のビルがあるのに私のビルはなぜ1
本もないのだろう…。笑うがいい。しかし私としては不本意な
のだ。この歳まで私はいったい何をしてきたのか。東京へ入り
最初に乗る東京モノレールの車窓から見る都心の風景は私には
ちょっとだけ恨めしい。
4時までにさいたまアリーナに入ればいい。昼過ぎに羽田に
着き、当初の予定では優雅にフレンチをと意気込んでいたが気
温が低くて到底フレンチ気分にはなれそうもない。そうだ。久
しぶりに穴子だ。日本橋高島屋の裏手にある「穴子のたまゐ」
は周囲の高層ビルに埋もれるようにひっそりと佇む。築65年
の民家を改造しまるで老舗のような風格だが創業はまだ新しい。
まぎらわしい店なのである。
ふっくらと柔らかい上品な穴子はかつて東京湾でたくさん採れ
る庶民の味だった。いまでは数も少なくなり輸入品を出す店も
多い中、この店の穴子は江戸前、もしくは常磐産だという。だ
が私はどこの穴子でも構わない。味に満足さえできればね…。
焼きか蒸しかが選べる。私はいつも焼きを頼む。理由はない。
蒸しを食べたこともない。小さなこだわりなんてそんなもんだ。
どのみち今日は穴子にして正解だった。
埼玉での明日の準備をそそくさと済ませて、駅前の東横イン
にチェックインする。ベッドが広く寝具が清潔な東横インは夜
寝るだけの私にとってはコストパフォーマンスが高いホテルだ。
10回利用すると1回がタダになる。1割引というわけだ。年
に10回以上は利用するから平均すると1泊6千円ほどか。ま
あまあである。
さて、ホテルに荷物を置いた時点でまだ4時だ。迷わず上り
の電車に飛び乗り再び都心へ向かう。この後の予定は実はディ
ズニーランドだったのだが、あまりの寒さにとっくに断念して
いる。足の向くまま気の向くままなら自然と丸の内から銀座に
かけてとなる。やはり年代のせいか。東京駅前にあるJPタワー、
通称KITTEの1Fに千疋屋がある。実はここだけの話、私はこ
このパフェの大ファンなのだ。季節ごとに変わるパフェに乗る
のは旬の果物。それも千疋屋がチョイスする飛っきりの高級フ
ルーツである。たかだかパフェだが時には3千円を超える。今
回は栗のパフェ。甘いマロンクリームにビターなコーヒーアイ
スが絶妙だ。こういう味の合わせかたもあるのか勉強になる。
だいたいこのパフェというもの。上のトッピングで興味を惹き
付けるが下半分で利益を出す代物。だが天下の千疋屋のパフェ
は違う。最後まで手を抜かない。今回も最下層に栗のムースが
隠されておりなかなかの美味であった。
iPhoneの万歩計アプリがこの日1万6千歩420kcalを示して
いた。パフェは少なく見積もっても300kcalはあるだろう。
ちようどご破算だ。夕食どころではない。もちろん5時にパフェ
を食べたら夕食など入る気もしないのだが…。こんなことだか
らビルのひとつも建てられないのである。重々分かっている。
東京と熊本は東西に約900キロ離れている。北西に直線で
600キロしか離れていない熊本とソウルとは1時間の時差が
あるというのに東京と熊本に時差はない。だから日の入りが1
時間ほど違う。5時ともなるとこの時期東京は真っ暗だ。千疋
屋を出たのが5時半。腹ごなしに数寄屋橋まで歩こう。まだ行
った事のない東急プラザが目的地だ。
銀座が変わりつつある。時代に合わせて様々な方向に変貌し
てきた銀座はあくまでも銀座は銀座だった。だが今の銀座はち
ょっと違う。東急プラザもギンザシックスも気張りすぎて味が
ない。大好きだった丸の内も最近は何だか物足りなさを感じる。
自動運転の車のように便利かもしれないが寂しさと物足りなさ
が入り交じった感情…そうだ私はもう少し人間臭いものが欲し
いのだ。4月に訪れたベトナムのような人間臭さ。台湾のよう
な活気ある温かさ。それらアジアの国々は日本が戦後切り捨て
て来た古き良き日本文化に似たものをいまだ大切に守っている
ような気がしてならない。それが私の持論だ。アメリカナイズ
することを良しとして歩んできた日本の行きつく先を銀座や丸
の内が見せてくれているのである。丸の内の高級ホテルの前に
停まる黒塗りの車を横目に成功とは何か、豊かさとは何かを考
えながら再び埼玉へと足を向ける。
好評ならつづく 不評ならつづきません。(笑)
写真に見とれるのも好きだったけど、
時折ツッコミ(!)入れながら読むのも好き。
ぜひぜひ続きを。
…ビルよりパフェがいいなぁ(笑)
いまいちインスタが好きになれない…
これだけ文章打ったらしゃべったつもりでストレス解消(笑)
途中に他の話を入れながら続き、やります。