歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

キングズ・シンガーズ『ジョスカン・デプレ作品集』

2008年10月05日 | CD ジョスカン
Renaissance: Josquin Desprez
King's Singers
BVCC-659

1992年録音。70分57秒。RCA。90年代に国内盤で出たジョスカン。そのころわたしはヘンデルに凝りまくっていたので目を向けるのが遅くなって、21世紀になってから、売れ残っているのを見かけて買ったのだと思います。──うーむ…、これはこれで立派なジョスカンだと思いますよ。しっかり聴きごたえあるし。しかしねえ、《Madrigal History Tour》のときの充実度、古楽との相性のよさからすると、このジョスカンは完成度において一歩劣るような気がします。

ハーリー、ヒューム、チルコット、ラッセル、キャリントン、コノリー。キングズ・シンガーズにデビューした時にけっこうショックを受けたボブ(ロバート)・チルコットなのですが、ここでもチルコットの声はたしかに悪い意味での存在感があって、キングズ・シンガーズのアンサンブルになかなか溶け込まない。さらにわたしはCTのデイビッド・ハーリーの声もあんまり好きぢゃないなあ。力で押してくる声なので。

曲の解釈においてはたぶん古参のアラステア・ヒュームやサイモン・キャリントンが主導権を握っていたんだろうなあ。ジョスカンの柄の大きさをよく伝えています。それだけに、肝心の声そのものの美しさに欠けているのが残念です。ふだん古楽をあまり歌っていなかったグループがいきなりここまで歌ってくれたんならそりゃ感心しますが、《Madrigal History Tour》であれだけすばらしい演奏を聴かせてくれたキングズ・シンガーズですからねえ。こちらの評価のハードルも高くなろうってもんです。

ヒリヤード・アンサンブルのジョスカンが出て評判になったのはこのアルバムの10年ほど前になりますか…。曲がいくつか重なっているので聴きくらべしてみるとおもしろいです。

キングズ・シンガーズはいまはSignumに移ってルネサンスものも積極的にリリースするようになっています。なにかきっかけがあったらSignumのCDもなにか買って聴いてみたいと思います。