歌わない時間

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石原千秋さんのカミングアウト

2008年02月15日 | 本とか雑誌とか
■石原千秋さんは、小学一年の二学期に狛江市に転校し、その秋の父親参観日に担任の先生が、教室の端から順番に生徒を立たせて父親の職業を言わせた(!)とき、「僕の父は去年飛行機事故で亡くなりました」とだけ言って、座ったそうです。これはNHKブックスから出た『小説入門のための高校入試国語』という本に載っている話で、石原さんの文脈としては、実はその「父親参観日」に石原さんのところはお母さんが見えていて、「こういう僕の姿を教室の後ろで見ていなければならなかった母親の気持ちを、僕の背中で痛いほどに感じ取った。」と続くのである。

■担任教師が、よりによって保護者さえいる中で生徒全員に父親の職業を発表させたことについて、石原さんは「いまだったら絶対に許されないような」授業だと言っているけれど、当時だって、これ、問題になったんぢゃないのかなあ。この担任の先生は想像力がなさすぎる。まあこういう鈍感な感覚の人は世の中にはよくいますよね。先生がこんなだと、教え子は当然傷つきますけど、しかしいっぽうでは往々にして、これを文字どおりの反面教師にして、けっこう成長していくものですよ。子どもってそんなもんですよね。

■で、石原さんのこの話ですが、こういうのをカミングアウトといいますね。石原さんはここで、母子家庭に育ったことと、小学一年でこのような劇的な体験をしたということと、それから、少年時代のその体験を今にいたるまで鮮明に記憶していてそれをこうして自分の本に書きつけてしまうという自分自身のキャラクターと、それらをまるごとカミングアウトしている。この気合いがすごい。

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