歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

ガーディナー『バッハ_マタイ受難曲』

2014年03月03日 | CD バッハ
Bach
Matthäus-Passion
Rolfe Johnson, Schmidt, Bonney, Monoyios, von Otter, Chance, Crook, Bär, Hauptmann
The Monteverdi Choir
The London Oratory Junior Choir
The English Baroque Soloists
John Eliot Gardiner
POCA-2131/3

1988年録音。65分48秒/49分51秒/41分09秒。ARCHIV。このガーディナーの『マタイ』については、悪口を言う人の方が多いです。スタイリッシュにすぎて、感動が薄いと言われます。そう言いたくなる気持ちも分かる。でもわたしはこの演奏嫌いぢゃないんですよ。余計なものを排除し、バッハの音楽を、しっかりした演奏で聴き手の前にそのまま差し出して、あとは聴き手にゆだねるこのガーディナーの行き方は、あり、だと思う。とにかく手堅い、スキのない演奏だということはだれしも認めるでしょう。

福音史家はロルフジョンソンで、もちろんイギリス人ですが、わたしにはこの人のドイツ語のディクションの善し悪しは分かりません。聞いていて違和感はありません。柔らかめの発声で、奥行き感のある懐のふかい歌いぶり。わたしの好みとしてはも少し澄んだ響きが好きなのですけどね。何度か書いてきたようにこの人は本来古楽畑の人ではなく、ガーディナーとの仕事が多かったせいで結果的にいろいろな古楽の録音に携わることになった人ですが、この『マタイ』は、ロルフジョンソンの古楽における代表作、ということになるんぢゃないかと思います。(このテナーの、ボーンウィリアムズの歌曲集の録音は絶品です。)

ほかにソリストはシュミット、ベア、オッター、ボニー、チャンスと当時のスター歌手を集めていて、そりゃ豪華。さらにわたしはボニーの蔭に隠れたもうひとりのソプラノのアン・モノイオスが好きですねえ。線は細いけれど透明感のある声で、個性ある歌い手でした。アメリカの人で、リフキンの指揮でバッハを入れているほか、ヨーロッパではピノックの『パーセル_ダイオクリージャン』でも澄んだ声を聴かせています。

独唱者たち、合唱、オーケストラと、どれをとっても手抜かりのない密度の高い音楽を聴かせる。それで充分なんぢゃないでしょうか。