歌わない時間

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レオンハルトの退場

2012年01月18日 | 音楽について
グスタフ・レオンハルト死去。83歳。わたしがはじめて接する時代楽器派の大物指揮者の訃報である。考えてみれば、わたしが古楽を聴くようになった80年代なかば以降、古楽界の大物はだれも死んでいませんでした。ってこういう言い方はオーバーですかね。でも、ほんとにそんな感じよ。なおマンロウが死んだのは76年、パーセルでは指揮もやったデラーが死んだのは79年で、わたしはそのころのことは知らないんです。それ以降、レオンハルトとともにバッハのカンタータ全集を完成させたアーノンクールは当時より大物になって今なお君臨している。時たま時代楽器派になるコルボもまだ生きている(はず)。マルゴワールもまだ死んでない(はず)。

つまりわたしは、鍵盤楽器奏者としてよりもどちらかというと指揮者として、レオンハルトを認識してきたのね。パーセルの鍵盤楽器のための曲の録音もありますが、わたしにとってのレオンハルトはやはり何といっても、セオン盤の『ブランデンブルク協奏曲』。もちろんあの録音でもチェンバロ弾いてるけど、クイケンやらブリュッヘンやらの手だれを率いて、演奏のリーダーを務めていたのがレオンハルトだった。あの演奏のセッション感覚、っていうか、プレイヤー同士の丁々発止のライブ感は何度聴いても素晴らしい。それから、実はいま入手不可な状態なんですが、彼はVirginに、パーセルのオードを1枚録音していて、わたしはそれが聴きたくてたまらんの。追悼企画で復活してくれないかな。

時代楽器派の周辺にあった指揮者としては、レパードとマッケラスが近年死去しました。このふたりとマリナーは、そのころまだマイナーだったヘンデルを、それぞれある程度録音していて、今から思えば、冬の時代によくがんばってくれたと思います。とくにレパードはいい。レパードの『水上』『花火』はいま聴いても古さを感じさせない若々しいものですし、名歌手を揃えた『サムソン』も序曲の重ささえ我慢すればいつのまにか引込まれてしまう。