東京国立近代美術館で「民藝の100年」を見てきました。
この展覧会は柳宗悦没後60年記念の展覧会ということです…そして、民藝運動が始まってから約100年。民藝名品展みたいな展開になるのかと思いきや、400点を超える作品で民藝運動の歴史を丹念に掘り起こすという非常に重厚な展覧会でした。思い出したのが、約10年前に同じく東京国立近代美術館で開催された「美術にぶるっ!」(←今見ても斬新なタイトル…)の「第2部 実験場1950’s」。いまだに私の中では伝説の展覧会です。近代の歴史と美術の関係性を膨大な資料を通じて解き明かすというのは、国立近代美術館ならではの仕事ですよね…。そして、東京都国立近代美術館は柳宗悦に名指しで批判された過去がありました。「近代美術館は、その名称が標榜している如く、「近代」に主眼が置かれる」と。この展覧会は当時の柳宗悦の問いに対する返答というチャレンジでもあるようです…。
展覧会は「民藝」の発端から始まります。柳宗悦を含む「白樺」の面々がロダンに熱烈なファンレターを送ったところ、ロダンからお礼に作品が送られ、それを見に来た浅川伯教が手みやげとして持参した朝鮮白磁を見て柳宗悦が工芸品の魅力に開眼…という話ですが、目覚めた後の柳宗悦の活動が凄かった…単に工芸品を収集するのみならず、「運動」へと展開するのです…。名もなき人々の手仕事をピックアップするには、相当な眼力と胆力が必要ですし、説得力のある言葉で人々にそのよさを伝えるためには相当な言語力も必要になりますが、それらすべてを兼ね備えていたのが柳宗悦でした。展覧会では「美術館」「出版」「流通」という三本柱を掲げた民藝のモダンな「編集」手法についても触れていますが、柳宗悦は最強の編集者でありプロデューサーであったのかもしれません…。そして、その活動範囲は日本全国から海外へと及びます。膨大な数の作品からは、こういう用の美的なものは時代も地域も超えて存在するのだということを目の当たりにさせられます。「芸術」というとある意味、時代の華という面があるやもしれませんが、「民藝」的なものは人間の存在そのものについてまわるというか…。「民藝館の方は、展示する品物に、別に「近代」を標榜しない」という」という柳宗悦の言葉があらためて思い起こされます。そもそも「近代」とか「美術」という言葉がいったい何を指しているというのか…70年も前の柳宗悦の言葉が、今を生きる者にいまだに問いかけているようです…。