平塚市美術館20周年記念展「画家たちの二十歳の原点」に行ってきました。
以前に芸大美術館で卒業生の自画像を展示する展覧会があって、おそらくそれと同じようなものになってるんではないかと想像していたのです。
ところがまったく違っていました。
芸大美術館のほうの展示はあくまで自画像のみ。
でも、今回の「画家たちの二十歳の原点」は自画像が中心なのだけれどもほっかの作品もあるし、自画像はなく20歳前後に描いた作品のみというケースもありました。
いやー、期待してた以上のボリューム。黒田清輝から石田徹也まで幅広い年代で日本の画家たちの若き日の作品を紹介しています。
萬鉄五郎の「雪の風景」は後の濃い作風とはまるで違いびっくり。
この淡い紫を忍ばせた色彩も描けたんですね。
中村彝の自画像は突出したインパクトがありました。なんか、存在尾の重さ加減が他と違うような気がしました。
高野野十郎の自画像は何故か、首と足に傷があり出血しているというもの。これもちょっと他の作家ではあり得ない感じ。
中川一政「椅子の少女」は気持ち悪いくらいの生っぽさ。でも、リアルな写実をもっとアレンジしてあって印象は怖いくらい。
河野通勢「3人の乞食」。のっぱらにたむりろする三人。身なりは汚いけども、何か不自由をしてるという感じではない。画面上方がアーチ上になっていて左右のカーブの画面の外が土と草になってるのが何とも面白い。
村山槐多「尿する裸僧」はやはり異様。暗いトーンなのにレインボウ。
坊主が手を合わせおしっこする姿。でも見ていたくなる不思議な絵。
関根正二「死を思う日」はなんと風景。ただ、木を描いてるのだけど寂しい気持ちいっぱい。なんともせつなくなる。実際に関根は20歳で亡くなっている。
桜井浜江「途上」は素敵!!こんな絵描いてたんですね。女性2人と小屋を描いてるのだけども斜めで切り取るダイナミックな構図。
松本俊介「少女」。後の作風と異なってて意外でした。
桂ゆき「日なた」。木の表皮?コルクがめくれたかのよう。一見なんてことなさそうで見てると感覚があれれとなる感じ。
草間彌生 「無題」には戦慄を覚えた。キノコ雲にも脳髄にも見える。どす黒いもくもくしたもの。本能的な怖さです。
森村泰昌の作品は2点とも想像外でした。
どうしても現在の自分が名画の中の人物に扮するという作風からすると繋がらないような気がしました。
石田徹也は「飛べなくなった人」と「ビアガーデン発」が並んでてせつなくなりました。
「ビアガーデン発」はサラリーマン3人が肩を組んでて、真ん中のひとりだけが飛行機を着ているというもの。まだ、ユーモアというレベルのもの。
「飛べなくなった人」はひとり、錆付いた飛行機になった男で元々のモチーフは「ビアガーデン発」であるのは間違いありません。
でも、こちらはユーモアよりも重さが勝ってるんですよね。
山口晃は「洞穴の頼朝」がよかったです。
筆に勢いがあるんですよね。
彩色を入れている箇所と入れてない箇所。あと、画面上をエーテルが漂うかの如く走る色の線。
会田誠の「無題」(通称:まんが屏風)は少年マンガが貼り付けられた上に写真やペインティングが乗っているというもの。
うーん、実はあまり好きなマンガがないなあと思ってたらありました。
陸軍中野予備校を貼り付けてるのをみつけて喜んでしまいました。
解説の履歴にちゃんと、「日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ」が記されていて、タイムリーでびっくり。
O JUNの自画像は2点。
解説に書かれてたのを見て笑いました。
ひとつは岸田劉生の自画像を、もうひとつは関根正二の子供を意識して、描いたのだそう。
前者はほんといい雰囲気で劉生のテイストが出てました。後者は解説読んでなるほどなという感じでした。
6/12まで。
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