ドルフィンベルベット

高齢馬のケアと徒然日記

馬学講座2015 その2

2015年01月26日 22時32分52秒 | 高齢馬のケア
さて、お次は齋藤先生の乗馬の病気についてです。

乗馬の三大死因というのが、「疝痛」、「骨折」、そして「蹄葉炎」で、結論として、疝痛も骨折も最終的には蹄葉炎に繋がるというものでした。

蹄葉炎の原因には、ホルモンや代謝異常(特に糖代謝)があり、人間で言う2型糖尿病(いわゆる成人病)が原因となるそうです。
人も馬もメタボはダメ、ということです。

2,000の馬を調査したところ、慢性蹄葉炎を持つ馬は7.5%に上り、生涯発生率になると15%にもなるとのことでした。
どんな馬にも起こりうる身近な病気ということでしょうか。

疝痛は腸内環境の悪化によるエンドトキシンが、骨折は負重性に蹄葉炎を引き起こす原因となります。
飼料、適切な運動、そして、早期発見早期治療が大切ということでした。

講義のあとで質問に行きました。
まず、蹄葉炎で蹄壁の血流が途絶えてしまった場合の回復の可能性についてです。
軽度のものであれば、血流が回復する可能性はあるとのことでした。
ただし、血管造影をして状態をみないとわからないとも。
血管造影・・・してみようかな?とも思いましたが、造影剤を使いますから、万が一のことを考えると、きちんとした施設で行った方が良いと私は思います。

クー太郎の蹄骨が5度ほどローテーションして、蟻洞になっていることを伝えると、パックを入れて支えないとダメだと言われました。
最近では、内側や外側などにローテーションしてくるものもあるのだそうです。
パックで痛みが出る場合は、蹄鉗子で部位を特定して、その部分だけをオープンにする、とも言われました。

次に指動脈の亢進という状況について、亢進そのものが血管のダメージに繋がるのか知りたかったのですが、回答では、亢進している原因=炎症の方が問題のようでした。

それから、蹄は血流をよくするために温めた方が良いのか、冷やしたほうが良いのかを聞きました。
最近の動向は、冷やすよりも温めた方が良いというものらしいですが、齋藤先生は、いつもよりも熱があるときは冷やした方が良いと考えていると言われました。

蹄葉炎は治らない病気です。
蹄の負担を軽くして、上手く付き合っていくしかなさそうですが、疑問に思っていたことがクリアになってスッキリしました。
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馬学講座2015 その1

2015年01月23日 13時01分46秒 | 高齢馬のケア

これまで年末の開催でしたが、今回は1月。なので「2015」となりました。

さて、今回は、青木先生が『ホッピング動作と後肢の駆動力 ―筋力というより弾発力―~』をテーマにバイオメカニクスについて、そして、大和高原動物診療所の齋藤重彰先生が乗馬の3大死因である『疝痛、骨折、蹄葉炎』についてお話されました。

青木先生のお話
直線のギャロップ(キャンターに近いもの)での四肢の荷重調査の結果、荷重の大きい順に、反手前前肢、手前前肢、反手前後肢、手前後肢、となる。
推進力は、大きい順に、反手前後肢、反手前前肢、手前前肢、手前後肢、となる。

反手前の肢の方が、手前の肢よりも荷重がかかっているとは思いもよりませんでした。
但し、あとで質問したことですが、円運動になれば、手前の肢の荷重の方が大きくなるそうです。
また、円運動では、蹄の内側の方がより負担がかかるとのことでした。
実は今回知りたかったのはこのことで、ここ数か月、クー太郎が右手前で歩様が悪いのは、左前の内側の蟻洞が原因ではないかと考えていたからです。

馬は重力をうまく使い分けて推進し、使う筋力は少ない。
つまり、筋肉ばかり鍛えてもダメ、ということらしいです
一瞬、クールにしている丘の往復は…、と思いましたが、あのくらいだったら筋トレとは呼べないかな?と自分を納得させました

肢の駆動に関する筋肉の働きについて詳細な説明もありました。
前肢は肩甲骨の周辺にある筋肉、後肢は大腿骨周辺にある筋肉が大きな役割を果たします。
前肢後肢それぞれに、①前引筋群(肢を前に引っ張る)、②後引筋群(振り出された肢を引き戻す)、③抗重力筋(関節をホールドする)がありますが、前肢の場合は、①は前肢を引き上げる時に、②は肢を引き戻す時に、③は肢を地面についてから後ろに行くまで働きます。
後肢の場合は、③は殆どなく、②の多くが抗重力筋としても働くのだそうです。

つまり、②の後引筋群が推進させるのではなく、ステップ後半の地面を蹴るというかpushingを担っているのは③の抗重力筋なのだそうです。
まとめると、地面に肢をついて垂直になるまで(pulling)は筋力を使い、垂直になってから地面をける時(pushing)は筋力とは絡んでいないということでした。

抗重力筋というのは、重力に対して立っている姿勢を保持する筋肉のことで、ヒトで言えば、下肢の大きな筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス、大臀筋など)や上体では腹筋などの筋肉のことです。

筋電図を用いた研究では、常歩では最初の2-3歩や、坂道など加速が必要な時以外は、殆ど平坦(=筋肉を使わない)ことが分かったそうです。
動き出したら、あとは前倒モーメント・・・ヒトも前に倒れると足が出て進みますが、あとは惰性というのでしょうか?
確かに、人間だって平地を歩くのに筋肉使ってる感じはしませんし、そんなに使っていたらすぐに疲れてしまいますし。
生き物の身体ってうまくできているんだなぁ、とあらためて思いました。

弾発力は関節同士の連動性から生まれる
主役は羽状筋という、筋肉の中央(腱膜)に向かって筋線維が斜めに集まる鳥の羽のような形をしている筋肉。
調べたら、ヒトの場合は下腿に多い筋肉で、筋線維の収縮が小さくても、強い筋力を発揮することができるのが特徴なのだそうです。
関節周囲のこの筋肉が働くことで、弾発力が生まれるとのことでした。
重力で関節がつぶされる⇒抗重力筋が関節をホールドする(=羽状筋の腱が引っ張られる)⇒体が浮いて重力から解き放たれるときに羽状筋の力が発揮される⇒それが弾発(=エンゲージメント)なのだそうです。

つまりは体重圧の抜き差しということですが、乗馬の場合は、人を乗せ、ハミで頚の位置も変わり、つまりは馬の重心が変わります。
大切なのは、馬の望む重心移動を邪魔しないこと、とのことでした。

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