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人生訓ー「大河の一滴」

2020年05月28日 23時07分34秒 | Weblog

 五木寛之著の「大河の一滴」を購入し、読み終えた。実に深い味わいのある話が多かったと感じるのである。自殺を真剣に考えた著者は、その2回の回顧から始まる。生と死は常に隣り合わせであることも真実であるようだ。生きることは、地獄に生を受けた脱却であり、人間に与えられた生きる使命なのかもしれない。
 
 ~小さな人間像への共感~の節に、私自身が深く感じ入った文章がある。

「ルネサンスは、「人間は偉大である!」と力強く宣言した時代である。それまでの教会と神の権威のもとでは、人間は卑小でちっぽけな存在でしかなかった。しかし、その小さな存在である人間たちには、現代の私たちのように、自分らが宇宙の最強の生物であるというおごりはなかったにちがいない。
 私たちはふたたび、人間はちっぽけな存在である、と考え直してみたい。だが、それがどれほど小さくとも、草の葉の上の一滴の露にも天地の生命は宿る。生命という言いかたが大げさなら、宇宙の呼吸と言いかえてもいい。
 空から降った雨水は樹々の葉に注ぎ、一滴の露は森の湿った地面に落ちて吸い込まれる。そして地下の水脈は地上に出て小さな流れをつくる。やがて渓流は川となり、平野を抜けて大河に合流する。
 その流れに身をあずけて海へと注ぐ大河の水の一滴が私たちの命だ。濁った水も、汚染された水も、すべての水を差別なく受け入れて海は広がる。やがて太陽の光に熱せられた海水は蒸発して空の雲となり、ふたたび雨水となって地上に注ぐ。」

 人生に迷ったとき、著者は生きることの意味を真剣に考えたのである。そして、仏教についても深く教えを追求したようである。輪廻転生とも思えるこのくだりは、実に含蓄のあるもので、この著書の表題を言い表しているのである。


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