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流石にアカデミー賞作品賞に輝く、心温まる『グリーンブック』

2019年03月02日 21時27分55秒 | Weblog

 流石に、2019年第91回アカデミー賞作品賞を受賞しした映画『グリーンブック』(2018年アメリカ制作)である。黒人に対する人種差別を扱った映画であるが、厳しい状況があまりなく、非常に心温まる展開でロードムービーが展開するのである。
 人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描き、第91回アカデミー作品賞を受賞したドラマ。1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。出自も性格も全く異なる2人は、当初は衝突を繰り返すものの、次第に友情を築いていく。トニー役に「イースタン・プロミス」のビゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役に「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。トニー・リップ(本名トニー・バレロンガ)の実の息子であるニック・バレロンガが製作・脚本を手がけ、父とドクター・シャーリーの友情の物語を映画化した。監督は、「メリーに首ったけ」などコメディ映画を得意としてきたファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリー。アカデミー賞では全5部門でノミネートされ、作品賞のほか脚本賞、助演男優賞を受賞した。
 アメリカでは「ドライビング・MISS・デイジー」になぞらえて語られがちだが、それよりもテイストが似ているのはフランスのコメディ映画「最強のふたり」の方だろう。時代や人種差別の社会背景的にはもちろん前者と重なるが、この2人はもっとユーモラスで、簡単に響き合うからだ。生い立ちも性格も正反対、お互いへの嫌悪感を隠そうともしなかった白人と黒人が、徐々にお互いへの理解を深め、自分にない長所を尊重して認め合う。このプロセスを見るのは、なんて心地いいものなんだろう! ピーター・ファレリー監督はこのシンプルなドラマを素直に、丁寧に紡ぎ出し、この上なくいい気分にしてくれる。“グリーンブック”とは50年代から60年代、人種差別の激しかった南部に旅をする黒人のために作られた施設利用ガイドのこと。1962年、イタリア移民でマフィア御用達のクラブ用心棒だったトニー・リップことバレロンガはこのガイドを渡され、イヤイヤながら新しい仕事に就くことになる。カーネギーホールに住む黒人天才ピアニスト、ドン・シャーリーの南部演奏ツアーに運転手兼ボディガートとして同行するのだ。知的な芸術家で品がよくて繊細なのが黒人、無知なマッチョで単純かつガサツなのが白人と、従来の映画とは設定が逆なわけだが、彼らは実在の人物であり、ベースは実話。このキャラクターの描き方が面白い。ドンを演じるマハーシャラ・アリは想定内の好演だが、驚くべきはトニー役のビゴ・モーテンセン。「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンでおなじみの彼は、デンマーク生まれで哲学者のような、詩人のようなパーソナリティの持ち主なのだが、化けた。「ケンタッキーっていやぁケンタッキー・フライド・キチンだろ!」とチキンを頬張るトニーのガハハ笑いを、好きにならずにいられるか? この2人の化学反応は、映画の美点そのものと言える。
 とにかくこの映画、人種差別をテーマにした作品としては、あり得ないほど口当たりがいいのである。心が痛くなるような場面もあるにはあるが、全体的には白人寄りの目線だし、スパイク・リーなら「暢気すぎるだろ!」と怒っているかもしれない。それもそのはず。だってこれはトニー・リップの息子、ニック・バレロンガがプロデュースと共同脚本を手がけ、「父から聞かされたいい話」を映画化した作品だから。つまり「いい話」を「いい話」として伝えることに重点が置かれているのだ。ここを物足りない、という人もいるだろう。しかしラストの多幸感は格別。多くの観客にとって、最高に愛すべき映画であることに間違いはない。

 久々に、高揚感のある至福の幸せな映画を見たと、感動している。この映画は、黒人ジャズピアニストに運転手兼用心棒として寄り添う白人が、1960年の当時黒人差別が色濃くあるアメリカ南部を演奏旅行するというロードムービーなのである。今でも、アメリカの白人警官が、黒人を暴動に装い射殺するという痛ましい事件がアメリカでは起きているのであるから、人種差別の激しかった50年以上前のアメリカ南部では、当たり前の出来事だったかもしれない。バスも黒人、白人で別れていたり、トイレも白人、黒人で使用する場所が違っていたという。白人は建家のちゃんとしたトイレだったのに、黒人は庭ハズレの簡易トイレだったりと・・・。食事をする場所を含め、飲食する場もかなり劣悪な場所が黒人にはあてがわれていたらしい。同じ人間でありながら、なぜに差別されるのか?これは、人間にとって最も嘆かわしい所業なのである。
 この映画の中でも登場するが、ピアニストの楽屋が、納屋小屋だったり、トイレが建家からかなり離れた簡易トイレだったり、演奏をするホテルでのレストランを、演奏する黒人ピアニストが使用できなかったり・・。
 
 人間にとって何が重要なのかが、本当に問われる映画だったと感じるのである。


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