Movieな空間

映画大好き人間の気ままな空間です!!

下町商店街の笑いと涙『なくもんか』

2009年11月22日 09時49分23秒 | Weblog
            
             なくもんか
 下町商店街に、あるきっかけで生きていかねばならなくなった主人公の笑いと涙の人情喜劇が『なくもんか』(2009年東宝制作)である。父親にも捨てられ、家族を失った中で、ハムカツ屋「デリカの山ちゃん」の主人に育てられた。しかも、店の売り上げを持ち逃げした親の子であるにもかかわらず、2代目として受け継がせてくれた人情ある初代主人の意思に応えるため、常に、必死にハムカツを毎日揚げ、しかも、周り商店街の人たちからの頼まれことを一生懸命、笑いながら行なう2代目ハムカツ屋主人・祐太の生き様に感銘を受ける人情映画作品なのだ。
 東京・下町。ハムカツで人気の「デリカの山ちゃん」の2代目店主・祐太は、誰の頼みも断らない究極のお人よし。彼は親に捨てられ、弟と生き別れた過去がある。そしてその弟こそ、人気お笑い芸人「金城ブラザーズ」の祐介だった。祐太は先代の娘・徹子と結婚、婚姻届を出すために手に入れた戸籍謄本で祐介が実の弟だと知る。早速祐介に会いに行く祐太。しかし偽の兄弟芸人として売り出していた祐介の態度はすげないものだった…。
 『舞妓Haaaan!!!』の監督:水田伸生×脚本:宮藤官九郎のコンビが再び作り上げたのは、笑って泣けるホームドラマ。両親の離婚後父親に捨てられ、それでも笑顔を絶やさずに生きてきた兄・祐太。母親の死んだ後イジメられないよう、お笑いを頼りに生きてきた弟・祐介。そんな複雑な過去を持つ生き別れの兄弟の関係を軸に“家族”というものを真っ正面から描いていく。宮藤脚本らしいアクがあって活きのいいキャラクターを、主演の阿部サダヲはじめ、瑛太、竹内結子らがそれぞれ特徴ある演技で表現。それを水田監督のテンポのよい演出が支える。観た後に家族とハムカツが恋しくなる作品である。
 しかし、今回の阿部サダヲの演技も、「舞妓Haaaan!!!」の時以上にスケールアップしていく。常に、周りとの差しさわりを起こさないために、いつも笑顔で事に当たる兄・祐太。人気お笑いで生きている弟・祐介、しかし、母親が死んでからは親戚の家や児童所を転々としなければならず、しかも、転校の度にイジメに会わないためお笑いで新しい環境に入り込む術を身につけた祐介にとって、お笑いは生きていくための護身術であっただけで、心底お笑いを好いてはいなかった。「なんでそうな風にいつも笑っていられるんだ」と兄・祐太を責める弟。しかし、偽兄弟として売り出していた相方の疾走で、沖縄のコントライブを一人でやる窮地に追い込まれる祐介。デパートの屋上で、サルの着ぐるみで一人コントとをやって、全員にシラケられ、子供にもバカにされた売れない時代の悪夢が甦ってくるのである。そこを、女装してピンチを救う兄・祐太。この時、初めて兄弟と言う、強い絆が発揮されるのである。最後の兄弟でのコントは、まるで映画「手紙」の刑務所慰問のシーンを彷彿とさせるようで、涙が溢れ出てくるのでした。苦労を笑いに変える天才の兄・祐太は、「なんくるないさ~!」(どうってことないの意の沖縄方言)と涙ながらに言うのであった。