アグリコ日記

岩手の山里で自給自足的な暮らしをしています。

火鉢猫

2005-12-09 19:28:50 | 
我が家の玄関には火鉢猫がいる。

茶箪笥の棚に置いた有線電話から朝の挨拶と6時のニュースが流れる頃、外はまだ暗い。最低気温はマイナス6度。そんな朝にも猫家の猫たちは元気だ。私が布団の中でもぞもぞしてると早く起きろとばかりに合唱が始まる。我が家では猫たちは冬でも戸外で寝かせている。
戸を開けると一斉に猫たちが雪崩れ込んでくる。今日の朝ごはんは玄米と鶏肉入り野菜スープ。ストーブの上で煮詰めた鍋にはカボチャや人参、昆布や葉野菜が形が崩れるほど煮込まれている。湯気の立った温かいスープを争うように舐める音が聞こえる。幼い頃から季節の野菜類と玄米を食べながら育っている彼らには好き嫌いが無い。因みにこの野菜スープは私の日々の食事でもある。この家ではなぜか人間と猫・犬たちは同じ鍋を分け合って暮らしている。
そして食事を終えた彼らはムニャムニャと舌なめずりをしながら再び凍てついた戸外に帰っていく・・・のだが・・・

足元を見ると今日も一匹だけ残っていた。アポロ、またお前か・・・。他の猫たちが背伸びをしながらゆうゆうと戸外に出て行くのを横目で見ながら、彼は玄関の土間に置いた火鉢の側を離れない。まるで自分はどうしてもそこにいなければならない用事があるとでも言うように。





彼はこの夏に猫家に流れ着いた迷い猫である。もしかしたらこの家の裏山に捨てられたのかもしれない。当初は痩せて怪我や病気だらけだったけれど今では傷も癒えて皮膚炎も治りふさふさとした冬毛が体を覆っている。
でも「寒がり」の体質はすぐには治らないようだ。多分前に飼われていた家では炬燵の中にぐでんと寝転びながら一冬越していたに違いない。我が家に来てからもしょっちゅう家の中に入れろ入れろと煩いし入れてやるとすぐさま炬燵に直行する。
最近では薪ストーブにも慣れたようで、炬燵の電気が入っていないとストーブの側にごろんと寝そべって目を細めるようになった。

でもこんなに軟弱では我が家では生きていけない。質実剛健が猫家のモットーである。猫は例えマイナス15~16度の寒さでも納屋や物置に設えた段ボール箱の寝床に丸くなって眠る。犬や鶏は吹きっ晒しの吹雪の中風通しのよい各自の小屋で眠る。それで誰も風邪ひとつ引かない。家でぬくぬくとストーブにあたってるのは人間だけである。まあ、それは大目に見てもいい。

だからアポロよ。お前もみんなのように強くならないといけないよ。おや、片方のひげの先が焦げて縮れてるじゃないか。さてが火鉢に近づき過ぎて焦がしてしまったな。・・・
さあ、みんなと一緒に外に行くんだ。そのうち陽が射せば少しは暖かくなるから。いつまでも玄関にいちゃいけない。え?なに?火鉢を背中に背負わせてくれって?・・・

そんなわけで今日もアポロを強引に外に出した。来たるべき本格的な冬に向けて少しずつでも体を慣らしていかないと。まあ実際は今までの生い立ちというハンディがあるか、他の猫より頻繁に家の中に入れてはいるのだけど・・・
同じように猫家に居ついたクマもタインも、今ではすっかり逞しくなってご飯を食べ終えると率先して外に飛び出す。そのうちアポロもそうなるんだろう。時間の問題だ。私はそれを早まらず過度に無理させないようにしてじっと待てばいい。

今日も我が家の火鉢猫は未練たっぷりの様子で玄関を振り返りつつ薄っすらと綿雪の積もった庭に歩み出した。そう、それでいいんだ、アポロ。すべてはお前のためなんだよ。

さあて私は、ストーブにあたりながらコーヒーでも飲むか。ぶるぶる!今朝は本当に冷え込んだなぁ・・・



【写真は猫家の火鉢猫・アポロ】




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6 コメント

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アポロ同志っ (cacho)
2005-12-10 00:40:25
この雪の中、戸外へとさっさと出てゆく猫達…心から尊敬いたします。

そう。育ちが違うのですよね。

私も今日、「いや、寒くなってきたから、ストーブ出してみたんだ」と言って、灯油タンクをタオルでこすっているお婆ちゃんの話を聞きながらいやはやさすが…と内心敬服しておりました。当地でも真っ白な霜が降りるようになって数週間。今朝の最低気温は-2℃でしたのに、これまでコタツだけで過ごされていたとは。。。こちとら、11月の初めからストーブつけているとは、とても口に出せません(笑



それにしてもアポロ、立派な体つきになりましたね。火鉢も背負えそうです。
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猫たちの (yocchi)
2005-12-10 08:28:55
逞しさもさることながら、屋根から下がって固まっている雪に驚きました。

視覚的にも、冬、が伝わってきます。



いつも思うのですが、東京で暮らしていると冬場に水道が凍結することもなく、電車も、お店も、仕事場もホカホカに暖まっていて、年々季節感を感じるような暮らしがなくなっていくような気がします。



冬が思いっきり寒いから、春の暖かさが嬉しくって、ありがたくって、待ち遠しい、って思えるんでしょうね・・・。
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cachoさん・・・ (あぐりこ)
2005-12-10 13:33:46
猫たちにもそれぞれやることがあるみたいなのですよ。オスたちは見回りに行きますしメスでも毎日行くお気に入りの場所があるみたいですね。ネズミの狩場なんでしょうか。

でもこのアポロはオスだけれどまだ休養期間なのかほとんど一日中家の周りにいます。日向ぼっこしたり帰ってくるメスたちを追い回したりしています。

そして私が外に出るたびに私のお供をして歩くんですよ。こちらもつい可愛くなって一緒に家に入れてやったりしてしまいます。

そう、ほとんど回復しました。皮膚炎で下半身は禿げていたんですが、心配していた冬毛もだいたい生え揃いました。

あとは慣れさせるだけですね。猫や犬は一般に思われているよりずっと逞しく適応力があります。多くの家ではそれを人間が甘やかして弱くしてるんですよ。そうなると病気で苦しむ姿を見ないとならなくなるから可哀想です。



アポロは本当に立派な猫ですよ。体も大きくてがっちりしています。そして人懐っこい。

彼のためになることをしてやろうと思いますよ。この家に来てよかったなと確かめ合ってます。
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yocchiさん・・・ (あぐりこ)
2005-12-10 13:48:09
猫も本来家の中で冬を過ごすような動物ではないのです。だから夏と冬では毛の長さが3倍くらいは違いますよ。でも人間と同じようにして飼ってるとそんな変化も現れません。

季節感が無くなってるのは人間だけじゃないんですね。でも何事も人間と同じくしてやるのがその動物のためになるとは限らない。



それが当たり前だと思えれば冬は冬なりに楽しみがあるんですよ。毎朝スヌーピーを連れて散歩をするのですがその時に新鮮な発見をすることもあります。人間だって本来炬燵に丸くなって冬を過ごす存在ではないんですね。



今朝はマイナス6度くらいだったでしょうか。これからもっともっと寒くなります。消費する薪の量も目に見えて増えてきました。今日は半日ストーブの上で味噌南蛮を作り続けていました。

朝からずっとストーブ燃やしっぱなしなんですがそれでも現在居間の温度は6度です。冬なんですね。



現代はまま経済活動にすべてを合わせてますからね。「いかに合理的に稼ぐか」という命題の上に人間もひとつの道具になっているように見えます。

でもそれはそれでひとつの生き方だからそれなりに面白いしいいんだと思いますよ。いつだってどこだって、楽しめるものですよね。
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薪ストーブと煙突 (てらまち)
2005-12-11 12:46:40
こんにちは。



私の家の薪ストーブのこと、煙突の付け替えのこと、望ましい煙突の縦横の比率のこと、コワイ煙道火災のこと、低温炭化のこと、雪対策などを写真たっぷりで載せました。



トラックバックします。

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ありがとうございます。 (agrico)
2005-12-11 18:40:27
薪ストーブに関わるためになる情報、確かに頂きました。去年自分で施工する際に調べはしたのですが、今回頂いた情報の方がより的確で詳細です。これからの長くなるだろうストーブとの付き合いの上で大いに参考にさせていただきます。



ところで岐阜県において市会議員をされているのですね。なるほど、このようなBLOGの使い方もあるのかと感心しました。我が地元の議員もそれなりに住民とのコミュニケーションに努めているみたいですが、これからはやはりこういう情報伝達手段を活用した方がいいようですね。



ご丁寧な御示唆ありがとう。これからそちらのBLOGも読ませていただきます。
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