(4/28(土) 16:56 夕刊フジ)
東京都健康長寿医療センター循環器内科
原田和昌副院長
Q.なぜ夜間に血圧が上昇するのか?
A.脳を守る血圧調整機能が低下しているから
寝ている間に血圧が高いままの夜間高血圧は、そうでない人と比べて脳・心血管死亡リスクが上昇するとの疫学調査結果がある。
その指標となるのが、朝起きて家庭血圧測定を行ったときに、135/85(単位・mmHg)以上の高血圧。本来、血圧は日中に上昇して夜間は低くなる仕組みがあるが、寝ている間にも血圧が上昇してしまう人がいる。就寝中は安静状態なのに、なぜ血圧が上昇するのか。
「人間は立った状態で、心臓より上部に位置する脳へ血液を送り出すために血圧を調整する仕組みがあります。夜間に横になると、心臓と脳の位置が水平になるため、血圧を下げて脳への圧力を抑制するのです。しかし、夜間高血圧の人はその機能が落ちているのです」
こう話すのは、東京都健康長寿医療センター循環器内科の原田和昌副院長。日本高血圧学会評議員を務め、長年、高血圧の診断・治療を行っている。
日中130程度の血圧でも、脳への圧力はそれより低いという。布団に入って寝ると心臓と脳の位置が水平になるので、首の血管で血圧を調節する機能が働き、血圧を下げて脳への圧力を抑制する。血圧による影響を受けることなく脳は守られ、心臓も血圧が下がるので休むことができる。
ところが、首の血管の調整機能が低下すると、寝ているときにも血圧は下がらず、脳は高い血圧の影響をダイレクトに受け、心臓も休めなくなってしまう。結果として、脳卒中や心筋梗塞などにつながるのだ。
「首の血管で血圧を調整する部位を『圧受容器(あつじゅようき)』といいます。年を取るだけでも機能は落ちますが、それに拍車をかけるのが塩分のとり過ぎです」
塩分をたくさんとると、主成分のナトリウム濃度を体内で一定に保つため、血液の量が増えて、血管壁に圧力がかかって高血圧につながる。一方、体内で多すぎるナトリウムは、腎臓が排出するが、夜間はその機能が落ちる。ナトリウム濃度が高い状態が続き、血圧が上昇し続けると、腎臓に負荷がかかってナトリウムを排出する機能が低下するのだ。
「高血圧で動脈硬化が進むことで、圧受容器の働きは落ちます。結果として、寝ている間中ずっと血圧が高い状態が続くことになるのです。それを防ぐためには、塩分のとり過ぎに注意していただきたい」
加齢に伴う機能低下は抗いにくいが、塩分調節は自ら行うことが可能だ。夜間の高血圧を防ぐことを考えたときには、夜の飲食がキーポイントとなる。飲んだ後の〆のラーメンのスープを飲み干すのを止めるなど、夕食だけ塩分を減らすようにするのはどうか。
「1日の塩分摂取量で体は反応します。高血圧症と診断された人は、1日6グラム未満、健康な人は1日8グラム未満を目指しましょう」
グッスリ眠って血圧を下げるには、日中の塩分量を意識することが大切なのだ。