(4/23(木) 12:15 NIKKEI STYLE)
東京都健康長寿医療センターは「運動カウンター」をLINEで公開
新型コロナウイルスの感染拡大で外出の自粛が広がる中、医療関係者らが高齢者に自宅で運動に取り組むよう呼びかけている。心身の活力を失って要介護手前の状態「フレイル(虚弱)」に陥るのを防ぐため、座りながら実践できるなど手軽なプログラムをオンライン上に公開する動きも広がる。うまく利用して運動習慣を身につけ、筋力の維持・向上に努めたい。
椅子を使ったもも上げで股関節強化、寝た状態での腰ひねりで腰痛を防止――。
東京都健康長寿医療センター(東京・板橋)は、スマートフォンの画面で、フレイルの予防を指導する「運動カウンター」を無料対話アプリのLINE(ライン)で公開している。
3月に慶応大と開発し、スマホの画面で全8種類の運動メニューから選ぶと、実践方法を示すテキストと動画が表示される。フレイル予防は口腔(こうくう)機能の維持も大切で、口を開閉して発声する「あーんー体操」では、かむ筋肉を鍛えることができる。
実践した日付や回数は自動で集計される。人と交流する機会が減るとフレイルを招きやすいことから、データを他人と共有して競える工夫も施した。同センターの遠峰結衣・研究員は「少しきつい程度の負荷が筋力維持の効果を得やすい。まずは10回、20回と回数を増やしていって自分に合う回数を把握してほしい」とアドバイスする。
リハビリ事業所の「動きのコツ研究所リハビリセンター」(兵庫県西宮市)は3月中旬、脳卒中でまひなどの後遺症がある人や高齢者らを対象に、リハビリメニューを紹介する無料の相談を始めた。
理学療法士が症状や悩みなどを電話で聞き取り、動画サイトに公開している約570本の「リハビリ動画」を組み合わせてメニューを作成。動画は字幕付きで1本あたり数分から10分程度。足や腕などにまひや痛みを抱えている人に向け、硬直した部位のほぐし方やうまく体を動かすコツを紹介している。5月末までメールで無償提供する予定。
同センターの生野達也代表は「脳卒中発症者の多くは高血圧や糖尿病などの疾患を抱え、感染が怖くてリハビリを休止する高齢者は少なくない。外出自粛が長期化する中、自宅でできるリハビリを知りたい需要に応えたい」と話す。
インターネットが苦手な高齢者のために、今月下旬からは動画を収録したDVDを西宮市内の介護施設などに配布する支援を予定。動画のデータを全国の自治体や企業などに無償提供する検討も始めている。
介護事業所やフィットネスクラブなどの臨時休業が相次ぎ、高齢者のリハビリや運動の機会は減っている。フレイルや移動機能が低下するロコモティブシンドローム(運動器症候群)などの広がりを懸念する医療関係者は少なくない。
日本整形外科学会(東京・文京)の任意団体「ロコモ チャレンジ!推進協議会」が3月中旬、全国の20歳以上の5千人を対象にした調査によると、過去1カ月の生活が昨年の同時期と比べて運動機会や活動量が減ったのは全体で40.3%に上った。60歳以上は女性が52.8%、男性が43.6%でシニア層が目立つ。
日本老年医学会(東京・文京)の飯島勝矢理事は「高齢者は2週間寝たきりの生活で失われる筋肉量は、7年間の加齢で失うのと同水準とされる」と警鐘を鳴らす。フレイルの状態では免疫力が落ちやすく、認知機能の低下も懸念される。
同医学会はテレビのコマーシャル中に足踏みするなど、こまめに運動することを勧めている。飯島理事は「家族ら周囲の人が一緒に取り組んだり、会えなくても電話などで運動を促したり、高齢者を孤独にさせないことが重要だ」と話している。
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