BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

あの時の深夜

2018年11月13日 | 古本
札幌に戻った翌々日にいつものBOOK OFFへ行った。疲れているので単行棚だけに目を通した。
収穫は単行本で5冊、〆て2260円。文庫まで探す気力はなかった。

そんな中、中田美知子さんのがあった。別な棚にもあったので比べるとこれが安い。しかも帯付きだ
った。つまりは売れた証拠だ。18年6月末に出たばかり。だが売価が違う。当然安い方を手にした。
もう35年程前のことだ。彼女がHBCを辞してフリーのころだ。よくアタシが属していた会社の録音
スタジオに時々来てCMなど読んでいた。
ある日のいつものように遅い帰り道だった。信号待ちで止まると横にライトエース的1BOXカーが止
まっていた。中をみると中田さんがハンドルを握っていた。そしてその中に3人の齢の近い幼子が座席
に立ったりしてはしゃいでた。中田さんはかまうことなく毅然としてハンドルを抱えていた。
その頃のアタシは夜目遠目がまだ問題なかった。だがなにかアタシはイケないものを見てしまった様な
気がして誰にも言わなかった。低く艶があり滑らかな喋りとはイメージがあまりにも違う。シングルマ
ザーとなっていた彼女には仕方のない深夜の帰宅だったに違いない。
その後中田さんはFM北海道に入り、常務取締役にまでなって退職された。あの時に見たお子達はもう
それぞれの道に進んで社会人になっているだろう。そのことの言及は特にこの本には書かれていない。
 「少女は、いまでも海の夢を見る」 著者 中田 美知子  亜璃西社 定価1500円+税
  ( 2018年6月30日 第1刷発行 )