BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

十字架

2018年11月01日 | 新 刊
この本も再読だ。「キャパ その青春」「キャパ その死」「ロバート・キャパ写真集」の3冊を再読すると
出た直後に新刊で買った「キャパの十字架」も再読したくなった。(しかし沢木さんはタイトルの付け方がうまい)
前回〔CAPA〕で書いたこれはやらせ写真ではというアタシの推察は違っていて、どうやら偶然性によって
ゲルダ・タローが使っていたローライフレックスによって撮られたものではないか、という推論が正しいように
思える。それはキャパが使っていたライカの35mmフィルムサイズやゲルダ・タローの使っていたローライ
フレックスカメラのサイズなどの比較、さらにはキャパ自身が仕事仲間に「あれはゲルダが撮った」という意味
を言ったことにも伺える。サイズの大きいカメラはいかようにでもトリミングして横長のライカサイズにできる
のだ。ただそれも100パーセントそうだとの断言は出来ない。ゲルダは暴走戦車にひかれて死に、キャパも
あの「崩れ落ちる兵士」については多くを語らなかったようである。
沢木さんはその問題のスペインの地を調べ、ライカとローラィフレックスを持ち、あらゆる人脈を探し検証した。
当初その現場がスペインのセロ・ムリアーノではなくエスペホ地方であることによって、撃たれたとする兵士も
別人であることになった。これは写真界にとって重大な事件である。この本、世界中に翻訳出版されるべきだ。
キャパはその後も優れた〔戦争写真家〕であったことは疑いようがない。「崩れ落ちる兵士」という正に十字架
を背負い、地雷を踏んだのだ。
キャパより3歳年上だった〔ゲルダ・タロー〕は1937年7月26日、27歳の誕生日を迎える少し前の、
理不尽な戦死となった。

 「キャパの十字架」 著者 沢木 耕太郎  文藝春秋 定価1500円+税
  ( 2013年2月15日 第1刷発行 )