帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百〕遊びは

2011-10-15 00:01:04 | 古典

  



                                    帯とけの枕草子〔二百〕遊びは



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百〕あそびは


 文の清げな姿

管弦の遊びなどは夜、人の顔の見えぬとき。


 原文

あそびはよる、人のかほみえぬほど。


 心におかしきところ

暇な空しさは夜、あの人の顔見えないとき……空虚なのは夜、あの人の彼お、見られぬほと。


 言の戯れと言の心
 「あそび…子供の無邪気な遊び…管弦・舞・詩歌などの遊び…行楽…暇ですることがない…何もしない空虚な状態…男女の戯れごと」「かほ…顔…彼お…あのおとこ」「見…目で見る…覯…媾…まぐあい」「ほど…程…時間…ほと…陰…女」。



 『梁塵秘抄』巻第二 四句神歌 雑、にある、今様の神楽歌を聞きましょう。

遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけむ、遊ぶ子供のこゑ聞けば、我が身さえこそ揺るがるれ。

(われは、遊びをしょうとして生まれたのだろうか、戯れをしょうとして生まれたのだろうか、遊ぶ子供の声聞けば、わが身さえこそ、動揺させられる・何もせずに死ぬのだろうか……遊びをしょうとして生まれたのだろうか、戯れをしょうとして生まれたのだろうか、あそぶ子どもの、音聞けば、わが身、小枝、子ぞ、ふるいたつ)。


 この歌の「遊び」「戯れ」という言葉も、前記と同じ。複数の意味に戯れて、それぞれの意味が生かされてある。


 「こども…子供…この君ども…おとこのこ」「ども…複数または親愛を示す」「身さえこそ…身でさえもだ…身、小枝、子ぞ」「こゑ…声…音…小枝…身の枝…おとこ」「こ…小…接頭語…愛称…自嘲」「ゆるがるれ…動揺させられる…揺り動く…ふるい立たつ」「るれ…る…受身または自発の意を表わす」。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)


 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。