帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔百九十三〕森は

2011-10-07 00:07:20 | 古典

   



                                     帯とけの枕草子〔百九十三〕森は 



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔百九十三〕もりは

 
 
清げな姿

森は、植木の森。岩田の森。木枯の森。うたた寝の森。岩瀬の森。大荒木の森。誰その森。来るべきの森。立ち木々の森。よこたての森と言うのが耳にとまるのこそ、わからないことよ、森と言うべきではない、木がただ一本あるのを、何で名づけたのでしょう。


 原文 

もりは、うへきのもり。いはたのもり。こがらしのもり。うたゝねのもり。いはせのもり。おほあらきのもり。たれそのもり。くるべきのもり。たちぎゝのもり。よこたてのもりといふがみゝとまるこそあやしけれ。もりなどいふべくもあらず、ただ一本あるを、なにごとにつけゝむ。


 心におかしきところ

盛りは、うえ木の盛り、井は多の盛り、子涸らしの盛り、うたた根の盛り、岩背の盛り、大荒気の盛り、垂れその盛り、来るべき盛り、立ち聞きの盛り、よこ立ての盛りと言うのが耳に留まるのこそ、わからないことよ、盛りなんていうべきではない、ただ一本あるのを、何で名づけたのでしょう。


 言の戯れと言の心

「もり…森…盛り…もりあがり」「うえ…植え…うえつける…種うえつける」「木…男…こ…子…おとこ」「うたたね…うたた寝…うたた根」「うたた…普通ではない…いやらしい」「ね…寝…根…おとこ」「岩…石…女」「い…井…女」「た…田…女…多…多情」「いはせ…岩瀬…岩背…女と男」「き…木…男…氣…心地」「たれそ…誰そ…誰なの…垂れそ…垂れるな」「よこたて…横縦…横に伏した物を立てた?」「なにごとにつけけむ…一本では森と言わない、二本で林という文字にはなる。二合(ふたあい)で、かろうじて(はやし…林…早し…強列)となる、ただし、(もり…森…盛り)ではない」。



 「森」の歌を聞きましょう。
 古今和歌集 巻第十七 雑歌上よみ人知らず。
 おほあらきの森の下草おいぬれば こまもすさめず刈る人もなし

又は、さくらあさのをふのした草

(大荒木の森の下草老いてしまったので、駒も遊べず、刈る人もなし……大荒気の盛りの下ひと、おいてしまったので、股間ももてあそばず、むさぼる男もなし)。

又は、(桜麻の麻生の下草老いたので、駒も遊べず刈る人もなし……さくら浅のお夫の下具さ、感極まれば、股間ももてあそばず、むさぼるおとこもなし)


 「おほ…大…男お…おとこ」「あらき…荒木…荒気」「木…男」「もり…森…盛り…さかり」「くさ…草
…女…ぐさ…具さ…身に付随のもの」「おい…老い…年齢の極まり…感の極まり…盛りの尽き果て」「こま…駒…股間」「すさめず…進めず…遊べず…手すさびにせず」「かる…刈る…つむ…めとる…むさぼる…まぐあう」「さくら…桜…男花…咲くら…裂くら」「ら…状態を表わす」「あさ…麻…浅」「おふ…麻生…お夫…男」。
 
  

 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)


 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。