『ソウルボート航海記』 by 遊田玉彦(ゆうでん・たまひこ)

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古農具取材で知ったこと

2010年04月22日 22時29分05秒 | 航海日誌
             古農具収蔵庫の梅室先生

昨日は、農大の「食と農」の博物館へ。古農具収蔵約4000点は、日本全国(北海道~九州)の40地域から集められたものでした。それらは昭和40年代の10年間ほどで、一人の研究室助手が集めたものでした。

元農大教授の梅室先生(66)が、若い頃にトラックで走り回って集めたのだそうです。先生は千葉で600年続く農家の出で、農具に農民の心が宿っていると感じて、集められるだけ集めたそうです。時代は機械化が進み、それらの農具は納屋で眠り、やがて見捨てられる運命にありました。

その先生が今、大変心配していることがありました。農家の生活が成り立たない現状です。専業農家は全国で3000軒ほどしかないと聞き、ええ?万もないのかと驚きました。大型農業機械は借金で購入します。その借金が専業農家には億単位であるそうです。機械は、植え付け時期の1~2ヶ月しか使用せず、しかも10年と持たないそうです。中・小規模農家では買えるようなものではありません。しかも高齢化が進んでいるから、人力作業も大変で、機械に頼りたい。痛し返しです。

そこで先生が今立ち上げたのが、NPO「農活」。農業機械オペレーターを田植え時期に派遣して、機械もシェアするというものです。桜前線に合わせてオペレーターたちが北上していき、日本の田畑を耕す計画です。「これからです。機械メーカーとの軋轢もあるでしょうが、これを実現しないと農業が保たない」と先生は笑い、目は真剣です。この話を聞いて農業の現場は、とんでもない事になっているのだと感じました。しかし、やり方があると、先生は血気盛んでした。天候で今キャベツが倍になっていることなど、ニュースでもなんでもないと笑いました。NPO「農活」の立ち上げこそがニュースだと、私も思いました。