『ソウルボート航海記』 by 遊田玉彦(ゆうでん・たまひこ)

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出雲見聞録8

2010年04月10日 18時45分36秒 | 歴史の断層
       須佐神社ご本殿とご神木

先月末の3日間の出雲旅で最後に向かったのは、奥出雲の山里にある須佐神社でした。前々から気になっていた神社でしたが、今回、やっと御縁で参ることが叶いました。この神社は、須佐之男命(スサノオ=素戔鳴尊)を主祭神に祀っています。よって地名も須佐です。名字に須佐さんという方がありますが、ご先祖がここの出に繋がるようです。

神社縁起によると、出雲各地を開発した須佐之男命が最後にこの地に来て、「小さな国なれど、よき土地である」と語り、終生まで暮らしたそうで、その御魂を神社に祀ったとあります。『出雲風土記』に記された話であり、須佐之男命について語られるのは須佐神社にまつわる章だけだそうです。

古事記に、姉アマテラスと弟スサノオの神話が出てきますが、あれは中央で創作されたのではないかという説が研究者の間でも論じられています。風土記というのは、奈良の朝廷の命で地方に提出させた「記録書」のようなもので、記紀とはずいぶん内容が異なるのです。どちらが真実に近いものか、約1300年前の話ですから何ともいえませんが、地方が自分たちの先祖の話をするのに、遠慮しつつも、本当に近い「口伝されている事」を記したと思えます。

とにかく、出雲では須佐之男命は実在の人物であり、後に神格化されて祀られたようです。須佐の地に住み、終の棲家としたと。それはまるで子に家督を譲り、山へ隠居した姿のようにも思えます。その御魂が鎮まるのが須佐神社ということです。今回、取材で出雲大社や日御碕神社、宍道湖などを巡り、最後にここへ辿り着きましたが、取材スタッフ一同が、「ここは雰囲気がいますね。何か強いものを感じる」と口を揃えました。

私が感応したのは、凛とした気でした。社務所の方がおっしゃるには、「全国からいろんな方が来ますよ。ご本殿の横で泣き崩れた人もいました。ふしぎなものを観る人もいるようです」といわれました。私は、いつものように「生かして頂いて、ありがとう御座います」と祈り、この須佐神社を後にしたのでした。御縁があって参れたのであり、また、無事に帰して頂けることの感謝のみでした。
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雑誌記事は、4月27日発売の「男の隠れ家」に掲載されますので、そちらもご覧いただければ幸いです。