『映画界のスーパースター・石原裕次郎さんの知られざる一面』
―アクションも、文芸もの映画も、さらには読書・絵画へも―
スーパースターの売り出し初めたころに夢中になり、アクションものを見慣れたころに、文芸もの『陽の当たる坂道』や『あいつと私』などにも出演しています。 これのどちらかに共演した吉行和子さんには所属の劇団民芸から『ブルジョアを描いた映画に…』と文句が出たほどでした。
その、ずっと後のことですが、映画界の転換期で、『黒部の太陽』を大成功させたのは宇野重吉さんと劇団民芸のバックアップもありました。 宇野重吉さんと石原裕次郎さんとのつながりも、『五社協定』への挑戦と、『黒部の太陽』という大作映画のことを話し合ったことからだったと聞いております。 この世界は誠に大変な世界です。
ウエブ情報から引用
表題に戻ります。
日経新聞(20210515)の木村凌二氏の『半歩遅れの読書術』の抜粋です。 裕次郎さんの愛読書ですが、ヘミングウェイの著作とともに、あげたのが福永武彦氏の『草の花』(新潮文庫)だそうです。 この本は『サナトリウムに入院していた汐見茂思が残した2冊の手記』。 この青年は、未発達で危うい肺葉摘出手術を無理に志願して、術中に死んでしまった。 これは合法的な自殺にも思われた。
1冊目は、戦時中の旧制高校の寮生活や合宿生活のなかで、年下の美少年への愛情ともいえる友情が語られている。 最後は『僕は、・・・汐見さんのことが怖いんです』と言って美少年は去っていった。
2冊目は、まだ召令状が来ない汐見は、死の恐怖感やキリスト教の信仰などについて恋人と語り合ったりした。 その後、夏の休暇に浅間山の麓の林での中で結ばれるが、自己を見つめる理性が妥協なき潔癖さに追い込み情熱の焔に勝り、恋人も失うことになる。
日本文学では稀な、優れて知的な青年を描いた作品でも裕次郎さんは、自分は汐見とは正反対の性格だと思うが、なぜだか汐見の考え方や行動に共感を覚えたらしい。 「孤独感というものが、人間の魂の成長にどんなに大切なものか」を教えてくれたテキストだったともいう。
さらに、シュールリアリズムの画家ダリの作品が好きだと裕次郎さんは語っている。 自身が高校時代に描いた絵も寂寥感のあるダリの絵を彷彿させると言っている。
この不出世の大スターには、今まで知らなかった面が多々あることですが、石原裕次郎さんの場合の、長い間、想像もできなかった面を知りました。
(20210515纏め、#333)