斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

水中構造物の下流は深くなっている

2012年07月14日 13時45分51秒 | 水難・ういてまて
4月の後半からある水難に関して新聞各社より取材を受けています。ある河川で発生した事故ですが、「あの浅い川でなぜ溺れたのか?」という疑問をぶつけられています。水底の構造物で遊んでいて、そのすぐ下流側に入った瞬間、深みがあって溺れたというものです。私は、土木工学の専門家ではありませんが、物理は工学部共通なのであくまでも物理をベースとしてのお話しで次のように答えています。

「水の中に突起状構造物があれば下流は深く掘られます。」
水が突起の上を通過すると突起から水底に向かって水が落ちることになります。水は底と激しく衝突し、水面に沸きあがります。このときに水底を削るわけです。

ここから先は追加情報です。詳細は土木工学の専門家にお聞きください。
土木工学では洗掘といって、有名な現象です。たとえば、大河津資料館のHPをご覧ください。
http://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/ohkouzu/tayori/tanken/tanken-10-dainitikogatame.htm
構造物の下流で最大15mも河床が掘られていることが報告されています。

平成16年7月13日の洪水後の大河津分水路の様子を写してありましたので、それを公開します。
http://hts.nagaokaut.ac.jp/survival/survideo/X-2.mp4

水中構造物(バッフルピア)で一旦盛り上がった水が水底に向かい、一気に下流側で吹き上がる様子が見られます。この場所では、洗掘を防ぐために床固めと呼ばれる施設が河床を守っています。

構造物の下流にて「水に巻き込まれて溺死する」とセンセーショナルに語る専門家?がおられるようですが、水難の専門家でない方が解説されるのには、不安を覚えます。そもそも洗掘箇所は深いのですから、足が水底に届かずに溺死するのが普通です。水難を語るのであれば、「水中構造物の下流は深くなっているので入り込むと溺れる可能性が大である」と簡単明瞭に伝えなければなりません。

水中構造物の下流で、3mほどの深さに川の中央部が削られた深みの場所で撮影されたビデオは。
http://hts.nagaokaut.ac.jp/survival/river.htm
の下方にあります。

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