練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『しゃべれども しゃべれども』 佐藤多佳子

2007-08-29 | 読書
久しぶりに、なんとも爽やかな話を読んだ!
そして面白かった!

あまりにも爽やか系だと、どうもへそ曲がりの私としては
「物足りない」とか思ってしまうのだけど、
『しゃべれども しゃべれども』はよかった。

(新米)噺家の主人公、彼の元に、なぜか口下手な人たちが集まってくる。
トラウマのせいで吃音が出てしまう幼馴染、
口下手のために失恋、うまく感情表現できないすっごい美人、
大阪弁を直そうとしないためにクラスでは敵視され、親ともぶつかってばかりの小学生、
言いたいことが言えないプロ野球解説者。

みんながなぜか落語を習ってみよう、自分たちではなしてみよう、
ということになり、
いろんな困難を乗り越えて手作りの高座で発表会。
それぞれのトラウマをいつの間にか乗り越える・・・
というベタな展開ではあるのだけれど、比較的長い話であるのにもかかわらず、
私的にも面白い。

たぶん、登場人物が魅力的なのだろう。
メインの人物だけでなく、おばあちゃん、憧れのヒロイン、クラスのボス的存在の男の子、落語の師匠たち。
みんなそれぞれいい味出している。

映画化されたときのキャストも好印象なのかも。
(香里奈ってかわカッコいい!)

江戸文化が大好きな友達が、落語を聞きに行くのが趣味、
とか言っていたけど、
私も連れてって欲しいなぁ、なんて思ったりして。

UB40のアルバム

2007-08-26 | ピアノ・音楽
昔、ホール&オーツは「ブルー・アイド・ソウル」なんて言われていたけれど、
このUB40は「ブルー・アイド・レゲエ」とでも言うのだろうか?
レゲエはレゲエでも少し洗練された大人しい感じなので聞きやすいのかも。
そういえば、「I got you babe」はプリテンダーズのクリッシー・ハインドとのデュエットだった。カッコいい。

「キスリング展 モンパルナス その青春と哀愁」

2007-08-22 | アート
「キスリング展 モンパルナス その青春と哀愁」
そごう美術館(横浜)
2007年7月26日(木)~8月26日(日)

キスリングの絵画は「モンパルナスのキキ」という恐らく彼の作品の中で最も有名な1点しか知りませんでした。
画像は敢えてそれではなく、「イングリッドの肖像」という人物画です。

モンパルナスの・・・というサブタイトルが付けられていますが、
ほぼ彼の全生涯に渡る創作活動の集大成と思われる、幅広い作品が展示されていました。

キスリングは兵役に取られたり、体を壊したりしながら絵を描き続けた画家のようです。
キュビズムの影響を受けていた青年時代、戦争の影響で精神的にも揺れていた時代、幸せな結婚を経て活動的な20代後半、そしてパリに移り住み、多くの画家仲間と勢力的に創作活動を行った時期、フランドル派の影響を受けた時期、などなど・・・
作風にもいろいろな変化が見られてとても面白いです。

著名な画家ともなると、その中の特に有名な作品いくつかがその人の全てを表現しているかのようにとられがちですが、やはり最高地点に到達する以前、その以降も人間としていろいろな創作方法、表現方法にゆれながら活動をしていた、というのがこのキスリング展を見て、再認識します。

キスリングの人物画といえば、「キキ」の絵にも顕著に見られますが、
その三白眼とくっきりした二重まぶた、アンニュイな表情が特徴的です。
女性を描いた作品が多いようですが、それが裸体像ともなると、ポーズも含めてその表情とあいまって、なんとも官能的です。
女の私も思わず見とれてしまいました。

その裸体像でもいかんなく発揮されていると思いますが、
キスリングの魅力はその色彩感覚だと強く感じました。
白い肌のバックには真紅の布を描いて肌の美しさを引き立たせています。
「キキ」の像にしても、真っ赤なセーターに鮮やかなブルーのスカーフを巻かせています。
果物が描かれた静物画にしても、ほとんど原色に近いさまざまな果実を無秩序に並べていいるように見えて、実は赤の隣に緑、といった補色関係を効果的に使っているように感じられます。
そして、私が個人的にハッとさせられた色合いは、めずらしくパステルカラー調なのですが、明るい黄色のミモザの花のバックにやはり明るい水色の壁を持ってきた作品です。
ブルーと黄色の組み合わせが私自身が好き、というのもあるのですが、
そのブルーの色調と黄色の色調が絶妙なのです。
色を作り上げるのも画家の才能だとすれば、キスリングはまさに色彩の天才だなぁ・・・と一人で感心しました。

会期はもうあとわずかですが、とてもよかったのでおすすめする展覧会です。

『太陽の塔』 森見登美彦

2007-08-20 | 読書
笑っちゃいけないのに、笑えます!
舞台は京都。「私」は西の最高学府京大に通う大学生。
脳内の知識が抑えても抑えてもあふれ出してしまう、小難しい語り口。
でも、難しく難しく話せば話すほど、可笑しくてしかたない。

要するに、語られているのは、「私」がフラれてしまった彼女に対する未練たらたらな気持ちと、ストーカーとはどこで区別すればいいのか判断しかねる行動記録と、ばんから京大生の可笑しくも悲しい学生生活なのだから。

なんだか気持ちは分かる!でも、素直に表現できないひねくれもの?照れ屋さん?
だからこそ、回りくどいことばかり言っていて、じれったいというか、可愛らしいというか。

京都付近のローカルな描写もまたいい!
たまに京都を訪れるだけの私でも、「叡山電車」とかいう記述に懐かしさを覚えるので、実際京都在住の方、なかんずく京大生が読んだら「おお~~!」と叫びたくなるだろう。
これが湯島近辺が舞台だったら、私も「おお~~!」と言っていたかしら?
いや、京大はおろか、東大生でもなかったんだから、それはないか・・・。

『ミラクル』 辻仁成

2007-08-19 | 読書
辻仁成さんの本は、それほどたくさん読んだわけではないのだけれど、
どうも恋愛の話よりは、この『ミラクル』のようなおとぎ話、ファンタジー系、コメディ系の方が私は好きみたい。

大人、親だからと言ってかならずしも強いわけじゃないし、
子どもに教えられることも少なからずある。

この物語のようにすべてうまく丸くおさまる、
ということは現実にはなかなかないだろうけど、
いろんなことを考えさせられる話だった。

(実は中学の課題図書になっていて、子どもに貸してもらってよみました。)

『削除ボーイズ0326』 方波見大志

2007-08-18 | 読書
小学生のぼくはフリーマーケットで怪しげなおじさんから、
デジカメに似ているおかしな装置を手に入れる。
その装置はある時点の事実を消すことが出来る削除装置だった・・・。

平和な小学校生活だったら、そんなドラえもんの道具的な便利な装置が手に入ったら、面白半分でどんどん使ってしまうだろう。
だって都合の悪いことは削除できるんだから。
点数の悪かったテスト、友達と喧嘩したこと、大事なものをなくしてしまった過去・・・・。

でも、ぼくの身辺では、そんなお気楽なことばかりではなくて、
まじめに削除してしまいたいような人の命にかかわるような事件が起きてしまう。
削除装置を使って、何ヶ月も記憶を遡ってすべてなしにしてしまえばいいのか。
でも、そうすると、昔のことであればあるほど、いろいろなこと、いろいろな人に影響が及んで、それこそ歴史が変わってしまう。
そんなことをしているうちに、装置も壊れ始めてしまう・・・。

主人公たちが小学生とは思えないような会話、思考に走るところが少し違和感を覚えたが、、
削除装置、あったら便利そうだけど、それに振り回される生活を思ってぞっとしたり、
いろいろ考えながら一気に読んだ。

リセットしたいことだらけだけど、やっぱリセットしちゃだめでしょ。

『夜市』 恒川光太郎

2007-08-16 | 読書
日本ホラー小説大賞受賞、とあったのですが、
怖くはないです。どちらかというと幻想的な雰囲気。
よって、わたくし的にはおもしろかった。

「夜市」
何でも売っている、けれど、何かを買わないと抜け出て帰ってこれない怪しい市。
主人公はかつて実の弟を売って野球の才能を買い、その夜市から現実世界に戻ってきていた。
いつか必ず買い戻しに行く、と弟に約束したきり、長い年月が経ってしまった・・・。

「風の古道」
迷子になって迷い込んだのは、物の怪たちがとおりぬける不思議な道だった。
その道の世界にあるものは決して人間社会には持ち出すことはできない。
友達とその古道に入り込んでしまった主人公は、その道で生まれ出たため、一生その道から抜け出すことはできず、そちらの世界でしか生きることができないレンという青年と出会う。

古道の話は不思議なロードムービーという雰囲気でとてもよかったです。
少年同士の友情、古道の世界でしか生きられないレンの運命(「海の上のピアニスト」をちょっと思い出してしまいました。でも、あんなに優雅じゃなくてこちらはもっと血なまぐさい)、現実離れした物語、でもどこかにこんな世界が存在しているのではないかと思ってしまうような、そんな世界にどこか憧れてしまう自分の気持ちを揺さぶるような小説でした。


『雨はコーラがのめない』 江國香織

2007-08-15 | 読書
江國さんが「今日はこれを聴こう」と心して部屋に流す大好きな音楽のエッセイ。
そしてその音楽を一緒に聴いているのは、タイトルにある「雨」、
雨は江國さんのお宅にいる犬です。

江國さんと私は同年代なので、彼女が紹介している音楽たちは私にとっても懐かしく、心地良く、ただなんとなく流れてきたから聴く、というよりはむしろ、
「さぁ、今日はこの大好きなアルバムを聴こう!」と意識して聴くようなものばかり。
ほんとに似たような音楽体験をしてきたんだなぁ、と彼女に対してものすごく親近感を持ってしまうほど。
カーリー・サイモン、スティング、スザンヌ・ヴェガ、スリー・ドッグ・ナイト、シンプリー・レッド・・・・。
LPレコードは持っているけれど、CDしか再生できなくなってしまったので、大好きなのに忘れていたアーティストの名前もたくさん出てきます。
私にとって今度買うCDのリストにもなりました、この本は。
(さっそくこの本で思い出してUB40のアルバムを買ってきました)

江國さんの紹介の文章も素敵です。
音楽の紹介ではあるけれど、その文章自体が物語となっています。
そして、どうしても紹介されている曲を聴きたくなってくるのです。
さすが・・・。

そして、大事な大事な雨の話。
これらの思い入れの深い音楽たち、たぶんいろいろな思い出がつまっています。
私だったら「思い出の曲」みたいなのは一人で聴きたい。
その思い出を共有している人となら一緒に聴けるかもしれないけど、
そうでない人と聴いても私の想い出を二人で語り合う・・・なんて出来ないし。
いや、想い出を共有している人とだとなおさら恥ずかしくて聴けないかなぁ・・・。
だから一人で浸りながら聴きたい・・・。
で、「雨」です。
雨のような存在がいたら一緒に聴けるかも。
私は犬(その他のあらゆる動物)は飼っていないけど、
愛犬と一緒なら、独り言のように音楽の思い出を犬に聞かせながら一緒に懐かしい曲を聴けるかも。
すべすべ(フワフワ?)した毛並みをなでながら、そのあったかいからだをひざの上にのせながら・・・。

『生協の白石さん』 白石昌則 東京農工大学の学生の皆さん

2007-08-14 | 読書
話題になるだけのことはある内容ですね・・・
学生の質問のカード一枚一枚に対して真剣にユーモアたっぷりに答えている生協の白石さん。
それを面白がってか、調子にのってか、生協に関係ないことまで質問する学生たち。
でも、そんな質問にこそ、なるほど~と思わせるような返事を返してくれる白石さん。

この往復書簡のようなカードのメッセージが悪ふざけの域に行ってしまわなかったのは、白石さん自身書いていらっしゃるように、農工大の学生の賢さ、上品さの故なのでしょう。

昨今の大学では、学生が大学にいつかない、「たまり場」と呼ばれるような場所がない、学内での交流が少ない、など、
学生が個人行動に走りがちで大学内での交流を深めるような雰囲気がなくなってきている、という問題が取り上げられているそうです。

それを解決すべく、教職員はいろいろな知恵を出しているようですが、
この白石さんは学内でのうわさの人物になるだけにとどまらず、
学生の大学回帰に一役買っていたに違いない、と思わせます。

「歌川広重 名所江戸百景 のすべて」

2007-08-12 | アート
↓下の記事の展示会の別会場でやっていた広重の作品も見てきました。

「歌川広重 名所江戸百景 のすべて」
東京藝術大学創立120周年企画 芸大コレクション展
2007年7月7日(土)~9月9日(日)
東京藝術大学大学美術館 地下2階 展示室1

広重といえば「東海道五十三次」です。
このシリーズ、個人的にものすごく想い出があって、
子どものころ、永谷園のお茶漬けの素かなんかに入っている広重のカードを集めて送ると、東海道・・・の全部揃ったトランプ大のセットがもらえたのです!!!
それを親にねだって入手してもらっていた小学生の私がすでにおやじっぽい子どもだったかどうか・・・というのは置いておいて、
広重の絵を見ると、どこか懐かしい気持ちになります。

今回の展示は江戸の名所、ということですべて大きさも揃った作品が一挙に見ることができます。
会場に入ると、かなり圧巻です。

広重の作品は構図が素晴らしいと、今さらながら感心します。
手前にアクセントになるような図柄をド・アップになるように持ってきて、
(例えば、馬の脚、とか、飛脚のたくましい脛毛だらけの脚とかをフレームのようにもってくる)
その向こうに景色が広がってゆく、という構図。
インパクトがあって見ていて飽きません。

また、面白かったのが、この百景の地図上の分布が見れるようなディスプレイがあったことです。
描かれたポイントのほとんどは現在の江東区、中央区に位置しています。
今の繁華街である渋谷区、新宿区などは少なく、山の手の方を描いた作品はわずか1点、井の頭公園があるだけです。

色彩的にもインパクトがある広重の版画。
若冲らと並んで、江戸時代に発生したグラフィックアート感覚の芸術を堪能した展示会でした。