練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『怖い絵 3』 中野京子

2010-05-22 | 読書
『怖い絵』シリーズ最終巻です。
このシリーズは本当にお勧めで、絵画好きのかたはもちろん、歴史好きの方、絵画も歴史も興味ない、という方々にもお勧めです。

著者の中野京子さんが担当されたNHKのシリーズもの、ずばり『怖い絵』を録画してあります。それをゆっくり鑑賞するのが今後の楽しみ。

『怖い絵 2』 中野京子

2010-05-16 | 読書
この『怖い絵』シリーズ、最近のヒットです。
絵画は純粋に美しさ、芸術性をその中に見つけて鑑賞、評価してもらうために創作するという一面と、その中に歴史的記録、公に声を大にして言えないメッセージをこめてひそかにアピールするという一面があります。

この本に解説されているのは、もちろん後者。
作者が意図した怖いメッセージだけでなく、意図せず、後の歴史を追って考えると実はその絵画の中に重要な意味がこめられてた、という場合もあります、
どちらかというと、後者の方が怖さが倍増・・ですね。

シリーズ2で紹介されている絵画のなかで、私が選んだ怖い度No.1は、ブリューゲルの『ベツレヘムの嬰児虐殺』です。
絵を見ただけでは、特に怖くない。でも解説を読むと、ザ~~~~~と血の気が引くくらい怖いです。

『リテイク・シックスティーン』 豊島ミホ

2010-03-10 | 読書
高校1年生のヒロインが同じクラスになった女子からある秘密を打ち明けられる。
「私は27歳の未来から、高校生活の時点から人生をやり直すためにタイムスリップしてきたの」だと。

進路の選択、進学の悩み、恋の悩み、いろんなことが起きる16歳の物語だ。

設定としては面白いようなベタなような・・・。

でも、どうも話に違和感を覚えてしまったのは、設定で「毎年東大に2~3人は進学する」という進学校のはずなのに、なんだか受験や勉強に関する緊迫感がない、というか、どっちかというとちゃらけているような・・・。

嫌な読者だなぁ、我ながら、と思いつつ・・・。

『日本の難点』 宮台真司

2010-02-28 | 読書
現代日本のコミュニケーションに関わる(特に若者の)問題、教育問題、根本的な日本の日本人の哲学(生きてゆくうえでの指標、よりどころの問題)、アメリカに関すること、その他細かな裁判員制度、環境、農業、雇用などなど・・・。
論じられているテーマはどれも身近で興味深く、読むことによってそれぞれ問題意識を持つことになるだろう。

「読んでみて難しいと思ったら、文章が難しいのではなく、論じられている物事が複雑で難しいからである」と著者が記している通り、現代の日本に関わる問題は複雑であり、新聞を毎日読むのがかえって面白いくらいだ。

アメリカの影響を強く受けて戦後発展してきた日本ではあるが、そもそも民族性、国の成立過程が異なるアメリカを手本としてきたことに問題があるのだろう。

コミュニケーションに関する論旨も印象的だ。
「何も起きないから大丈夫」というスタンスよりも「何か起きるかもしれない。しかし、大丈夫」という方が信頼感がある、という考え方は非常に説得力がある。

やはりアメリカの影響か、すべて法律、条令化する傾向にある中、本来の人間同士がうまく折り合いをつけてコミュニティとして存続するためにはどうすれば一番よいのか、改めて考えさせられる。
個人的には、個人情報保護法を誤解したまま逆手にとって企業や社会に対して過剰なまでに反応する一部の人たちが頭をよぎってしまった。
オープンでありながら、選択できる可能性のあるしくみ、それがキーワードかも。

『るり姉』 椰月美智子

2010-02-10 | 読書
時間って、流れてゆくものですよね。
過去があって、今があって、そして未来がある。

時間のながれは瞬間、瞬間の連続だけど、過去があってこその今があって、それにつづく未来は過去によって微妙に違ってゆく。

この小説の魅力は、るり姉、その姉であるお母さん、お母さんの子供たちである3姉妹、おばあちゃん、るり姉のだんなさんのカイカイ、それぞれのキャラの魅力でもあるけれど、時間軸を自由に行き来するこの小説の描写が、いろんな時にまで思いをめぐらせるように上手に描かれているところだと思う。

るり姉のくったくない、自由奔放で天衣無縫な性格や物言いも、カイカイの新婚のこの上ない幸せな感情も、そこに至るまでの過去のできごとがあってこその輝きであり、そして、小説を読む私たちに与えられた特別な特権、これから訪れるであろう、未来を知っていて読むからこそ、この今の描写がまた、輝いて感じられるのだ。

今、はもう二度と訪れない貴重な大切な時である、と実感するとともに、読後感もとてもよい、素敵な作品。

『のぼうの城』 和田竜

2010-02-08 | 読書
「のぼう」とは、「でくのぼう」のこと。
農民たちはみな、いや、家臣までもが忍城の領主、長親のことをそう呼んだ。
そう呼ばれているのを知っても怒りもせず、農民と共に野良仕事に精を出す殿様。
しかし、その名の通り、邪魔にはなっても決して役にはたたず・・・。

そんな時、秀吉がこの忍城に攻め入ってくる、ということになる。
周辺の城はみな、戦わずして城を開くことを決めている。
忍城の家臣たちもまた、それが得策、とばかりに開城の運びとなる。

しかし、豊臣の使いが城にやってきて、話合いの場を持ったとき、実質城の城主である長親は、なんと「戦う」と言ってしまうのだ。
あっけにとられる皆々・・。
だが、これは、歴史に残る戦いの始まりだった。

長親がただのでくのぼうだったのか、それとも策士であったのか。
人の心をつかむ、というのはどういうことか。
真の誇り高い人間とは。

この物語では、あの関が原では惨敗し、敗戦者としての歴史ばかりが大きい石田三成も、また、儀を尊ぶ英雄であったことが描写されている。

長親の能面のような表情の中に隠されていたのは、ただの鈍感さだったのか、それとも純真な心だったのか。それとも計算ずくの冷徹な心だったのか。
久々の面白い時代小説だった。