![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/9f/d1a21fb1326ffb61ec9c08c4433375f7.jpg)
著作権法に触れるかどうかわからないが、
いい作品だと思うので、多くの人に読んでいただきたく、また自分の備忘のため、
今から、図書館で借りてきた角川「短歌」2月号に掲載されていた
馬場あき子さんという大ベテラン歌人の追悼20首をタイピングしてアップさせていただく。
誰を追悼していられるかというと、馬場あき子さんのお連れ合いであった歌人、岩田正氏である。
「別れ」 馬場あき子
ふたりゐてその一人ふと死にたれば検視の現場となるわが部屋は
けはひさへなかりしきみの心不全あらはれてふいにきみを倒せり
一瞬にひとは死ぬもの浴室に倒れゐし裸形思へば泣かゆ
腰ぬけるほどに重たき死を抱へ引きずりしこのわが手うたがふ
きみ死にて検視を受くる夜半の部屋日常を暴くごとく撮(うつ)さる
大下一真に葬りの導師頼みたるのち安らぎて眠りに入りぬ
お逮夜の家に一燈ともすのみ心不全の死者たる岩田正よ
月桃餅すこし残るをあたためて分かち食うべぬ最後の昼餉
夫(つま)のきみ死にてゐし風呂に今宵入る六十年を越えて夫婦たりにし
深き皺ひとつ増えたり夫の死後三日の朝の鏡に見たり
夫のなき女の貌になりゆくかさびれゆく顔を朝々に見る
きみの死のみづみづとわれの手に蘇るまだ温かき胸や肩や手
母が縫ひてわれが贈りし大島紬着ましてきみは棺に寝ます
篝火草あるじなき部屋に燃え咲きて遺影の声の時にきこゆる
通夜の席の棺に近く座しくれし幸綱さんありがたう遺影ほほゑむ
瑞泉寺の白玉椿ふふめるを棺にいれよと賜ふ和上は
葬りはててみれば落葉の積もる庭燦燦と照る陽みつつわが坐す
三七日のひとりの夜を訪れて経読みましき福島泰樹
きみなくて視力おとろふる未亡人われ黒き眼鏡す
亡き人はまこと無きなり新しき年は来るともまこと亡きなり
(註)幸綱さんというのは歌人、佐佐木幸綱氏のことである。
大下一真氏と福島泰樹氏は、お二人とも、僧侶であり、歌人であられる方です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/c0/0f1cc0ea1d424c63c1b36f69640cacd9.jpg)
私は、この連作を、母を亡くして数日後に初読したせいか、深く心に沁みた。
が、私の個人的な事情に関わらず、心に沁みる一連と思ったので、アップさせていただいた。
いい作品だと思うので、多くの人に読んでいただきたく、また自分の備忘のため、
今から、図書館で借りてきた角川「短歌」2月号に掲載されていた
馬場あき子さんという大ベテラン歌人の追悼20首をタイピングしてアップさせていただく。
誰を追悼していられるかというと、馬場あき子さんのお連れ合いであった歌人、岩田正氏である。
「別れ」 馬場あき子
ふたりゐてその一人ふと死にたれば検視の現場となるわが部屋は
けはひさへなかりしきみの心不全あらはれてふいにきみを倒せり
一瞬にひとは死ぬもの浴室に倒れゐし裸形思へば泣かゆ
腰ぬけるほどに重たき死を抱へ引きずりしこのわが手うたがふ
きみ死にて検視を受くる夜半の部屋日常を暴くごとく撮(うつ)さる
大下一真に葬りの導師頼みたるのち安らぎて眠りに入りぬ
お逮夜の家に一燈ともすのみ心不全の死者たる岩田正よ
月桃餅すこし残るをあたためて分かち食うべぬ最後の昼餉
夫(つま)のきみ死にてゐし風呂に今宵入る六十年を越えて夫婦たりにし
深き皺ひとつ増えたり夫の死後三日の朝の鏡に見たり
夫のなき女の貌になりゆくかさびれゆく顔を朝々に見る
きみの死のみづみづとわれの手に蘇るまだ温かき胸や肩や手
母が縫ひてわれが贈りし大島紬着ましてきみは棺に寝ます
篝火草あるじなき部屋に燃え咲きて遺影の声の時にきこゆる
通夜の席の棺に近く座しくれし幸綱さんありがたう遺影ほほゑむ
瑞泉寺の白玉椿ふふめるを棺にいれよと賜ふ和上は
葬りはててみれば落葉の積もる庭燦燦と照る陽みつつわが坐す
三七日のひとりの夜を訪れて経読みましき福島泰樹
きみなくて視力おとろふる未亡人われ黒き眼鏡す
亡き人はまこと無きなり新しき年は来るともまこと亡きなり
(註)幸綱さんというのは歌人、佐佐木幸綱氏のことである。
大下一真氏と福島泰樹氏は、お二人とも、僧侶であり、歌人であられる方です。
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私は、この連作を、母を亡くして数日後に初読したせいか、深く心に沁みた。
が、私の個人的な事情に関わらず、心に沁みる一連と思ったので、アップさせていただいた。
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