ブログ日和。

映画と、『ER緊急救命室』『ザ・ホワイトハウス』などの海外ドラマと、世間に対してのツッコミを徒然に書いていきます。

『博士の愛した数式』@東京国際映画祭

2005-10-30 12:35:35 | 映画
小川洋子原作のベストセラー、『博士の愛した数式』の映画化。

事故で記憶が80分しか持たなくなってしまった「博士」とそこに雇われた家政婦と息子の交流を描く。監督は、『阿弥陀堂だより』の小泉堯史。四季の移り変わりが柔らかに映し出されて、心地がいい。雨の日もまたそれを慈しむようなゆったりとした時間が流れる。

寺尾聰演ずる博士は記憶が80分しか持たない代わりに、感情を数式で表す。それを家政婦役の深津絵里は、丁寧にそれを受け止める。彼女も新たな発見をし、それを博士に伝える。彼女の息子ルートもまた、博士を慕い、思いやる。お互いが作用しあう、学びの理想的な姿がそこにはあった。登場する「数式」は、そんなに難しくないし、無機質なものだと思っていた「数」というものが、人間と触れ合うことで、ここまで美しく、有機的なものなんだと気づかされた。ただ、最後の一つの数式は、全くわからなかった。そりゃそうだよな。誰か教えて。でも、博士の気持ちは、伝わってきたような気がした。

なにか、とてつもない事件がおきるわけでもないけれど、スクリーンの中にある空間や時間の雰囲気がとても好きだ。邦画らしい邦画。

舞台挨拶に現れた寺尾聰は、「宣伝費がないのでお友達に勧めてください」。こうやって勧めてますよー。何も考えていないような表情をしておきながら、とても思慮深い博士には、打ってつけだった。名優だね。深津絵里がいなかったのが残念だったけど、彼女も良かった。眉間にしわ寄せてるような役よりもずっと。

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