ブログ日和。

映画と、『ER緊急救命室』『ザ・ホワイトハウス』などの海外ドラマと、世間に対してのツッコミを徒然に書いていきます。

『オリバー・ツイスト』@東京国際映画祭

2005-10-30 21:05:17 | 映画
渋谷・オーチャードホールにて。

19世紀イギリス、救貧院を逃げ出したオリバーは、70マイルも離れたロンドンへ向かう。ロンドンの街並みは、さすが80億円も掛けただけあって、リアルで説得力がある。それにエキストラの数がとても多く、しかも各々の動きをうまく捌いていて、街の喧噪が伝わってくる。

偉い人や金持ちは、でっぷりとしていたり、爺さん婆さんは、あからさまにヨボヨボだったり、登場する大人たちは、デフォルメされている。つまり、子どもの目から見た姿なのだ。ロマン・ポランスキー監督の前作『戦場のピアニスト』では、絶望的な風景を描いていたけど、今回は、辛い日々の中にメルヘン風味が織り込まれてて、純粋すぎるオリバーが笑いを誘う場面もあった。

そう、オリバーは純粋で聡明。だからこそ、ラストの監獄のシーンで、狂ってしまい許しを請い祈ることさえできなくなってしまったフェイギンを見つめる目はどこまでも悲しげで、彼の負ってしまった運命の重さを感じた。

舞台挨拶では、オリバー役のバーニー・クラークとなぜか神木隆之介が登場。物憂げな目を持つ子役と、動きが女の子チックな子役と。時代が求めている子ども像は、彼らなのかな。

『博士の愛した数式』@東京国際映画祭

2005-10-30 12:35:35 | 映画
小川洋子原作のベストセラー、『博士の愛した数式』の映画化。

事故で記憶が80分しか持たなくなってしまった「博士」とそこに雇われた家政婦と息子の交流を描く。監督は、『阿弥陀堂だより』の小泉堯史。四季の移り変わりが柔らかに映し出されて、心地がいい。雨の日もまたそれを慈しむようなゆったりとした時間が流れる。

寺尾聰演ずる博士は記憶が80分しか持たない代わりに、感情を数式で表す。それを家政婦役の深津絵里は、丁寧にそれを受け止める。彼女も新たな発見をし、それを博士に伝える。彼女の息子ルートもまた、博士を慕い、思いやる。お互いが作用しあう、学びの理想的な姿がそこにはあった。登場する「数式」は、そんなに難しくないし、無機質なものだと思っていた「数」というものが、人間と触れ合うことで、ここまで美しく、有機的なものなんだと気づかされた。ただ、最後の一つの数式は、全くわからなかった。そりゃそうだよな。誰か教えて。でも、博士の気持ちは、伝わってきたような気がした。

なにか、とてつもない事件がおきるわけでもないけれど、スクリーンの中にある空間や時間の雰囲気がとても好きだ。邦画らしい邦画。

舞台挨拶に現れた寺尾聰は、「宣伝費がないのでお友達に勧めてください」。こうやって勧めてますよー。何も考えていないような表情をしておきながら、とても思慮深い博士には、打ってつけだった。名優だね。深津絵里がいなかったのが残念だったけど、彼女も良かった。眉間にしわ寄せてるような役よりもずっと。