落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

幻想曲風ソナタ

2008年11月11日 | movie
『トウキョウソナタ』

健康器具メーカーの総務部に勤務する竜平(香川照之)は経営合理化のあおりでリストラされるが、その事実を妻(小泉今日子)に告げることができない。長男・貴(小柳友)は突然米軍に入隊したいといいだして家を出てしまい、次男・健二(井之脇海)は家族の反対を押しきって内緒でピアノの勉強を始める。バラバラになっていく家庭で、妻もまた自身の存在意義に疑問を感じ始めていた。

んー。なんだかなー。
もう完全に海外市場向けの映画だよね。これ。日本の観客のことはわりとどーでもいーんだなーって感じがありあり。
ディテールにリアリティがないことは大して問題じゃないかもしれないけど、全編どこを切ってもまるっきりリアリティのない設定の連続だとやっぱしキツイです。カメラワークや照明や美術装飾など技術的には文句のつけようがない映像だけに、「現実なんてこんなもんでしょ」的な上から目線をどうしても感じてしまうのだ。素直に入ってけないよ。これじゃ。
おもしろい作品だとは思うけど、残念ながらぐりはちょっと好きじゃないね。すいません。

ただ出演者は全員ものすごいハマり役で、みなさん非常に魅力的で、この人物描写の素晴らしさだけで最後まで観終えることができたといっても過言ではない。
香川照之は意味もない固定観念にしばられた中年というものすごくイケてない主人公そのものになりきってたし、まったく現実味はないのに存在感たっぷりな主婦役なんてキョンキョン以外誰にもできない。小柳友は根拠のない自信でつっぱる傲慢な若者そのものでありつつ非常にフォトジェニックだし、井之脇海は『誰も知らない』のころの柳楽優弥を彷佛とさせるような妙なセックスアピールがある。

二転三転するストーリーは凝ってるし、観る人によってはすごく楽しめる作品なんだろうということはわかるだけに、そうは感じなかった自分が悔しい。
けどさー、いくら映画ったってさー、これはちょっとあまりにもあまりですよー・・・。

Fix You

2008年11月11日 | movie
『ヤング@ハート』

マサチューセッツ州ノーサンプトンを本拠地とするコーラス隊・ヤング@ハートの平均年齢は80歳。全米はおろかヨーロッパでもツアーが催されるほど大人気の彼らのレパートリーはポリス、ラモーンズ、ジミ・ヘンドリックス、デヴィッド・ボウイ、トーキング・ヘッズ、ボブ・ディラン、ソニック・ユース、コールドプレイなどなど、つまり要するにロックである。
6週間後にコンサートを控えた彼らに密着したドキュメンタリー。

「子どもと動物には勝てない」とは広告界でいい習わされたセオリーだが、子どもにも動物にも負けない魅力を持つのが老人である。
大人である義務が終わって、だんだん子どもに戻っていく過程にある老人の魅力はこれまでにもさまざまなドキュメンタリーに描かれて来たが(『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』『ミリキタニの猫』『サルサとチャンプルー』)、この映画に登場する老人たちはまったく一般のごくふつうの庶民。コーラスを趣味とする純粋にただの市井の人々である。
だからそれを思うと指揮者ボブ・シルマンの苦労がぐっと重く感じられる。どんなに人気のご老人たちでも、素の人柄と持って生まれた(そして残された)声以外に特殊な能力などない。歌詞を覚えるのすらひと苦労だし、覚えたところで歌いこなせるまでの道もまた平坦にはいかない。想像するだに投げ出したくなるほど練習はハードだ。
それでも彼らが挫けず諦めないのは、歌がどれほど人を励まし、心をあたため、魂を輝かせてくれるかを、彼ら自身が深く深く理解しているからなのだろう。彼らの情熱は、音楽への愛と、残りの生をできるかぎり明るく燃やしつくしたいというプライドに支えられている。

題材は確かに非常におもしろいし、ぐりもコンサートに行ってみたいとは思ったけど、映画としてはうーん?どーかな?まあ観てソンはないんだけど・・・。6週間の取材じゃ足りなかったね?ってのが正直なところかな?内容が薄いわりに冗長な印象がちょっと残念。
ヤング@ハート、日本公演はないかなー?あったら是非とも拝聴したいものですが。彼らのパフォーマンスってたぶん、CDじゃ半分も楽しめないと思うんだよね。ライブで聴きたいです。可能であれば。