ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

ミャンマー維新(3)

2016-03-15 | Weblog
2月1日 ミャンマー新議会下院が招集された。
 下院議長にスーチー側近でNLD党員のウィンミンを選出。彼は法律家で1988年のNLD結党直後からの古参幹部である。この日の議会演説で彼は「我々全員が民主的な連邦制国家の建設に向け、協力と相互理解を進めなければならない。民主主義が発展し国民の権利が守られるよう、持てるものすべてを出し切って努力しよう」と強調した。
 下院副議長には少数民族カチン族のティークンミャット議員(USDP連邦団結発展党)が指名された。旧与党USDPとの協調と、少数民族重視の意向表明を象徴している人選である。USDPは前回の総選挙で大敗し、議席は全体の1割にも満たないが、国民和解を重視するスーチーは同党との連携を内外にアピールしている。
 下院(人民代表院)は定員440名、内25%の110名は軍総司令官が指名する公選外の軍人指定枠。軍人議席は憲法で保障されている。

 NLD新人議員のひとり、ボーボーウーは学生時代に民主化運動に関わったとして軍事政権に逮捕され、25年間にわたって投獄されてきた。彼は「当時、民主主義はまるでありませんでした。獄中にいたときは議員になるなんて、夢にも思いませんでした。国民ひとりひとりのための民主主義を実現したいという思いから議員を目指しました。我々に苦痛をもたらした人々(軍事政権)に対して、敵意や憎しみはありません。しかし民主化運動で命を落とした仲間たちのことは常にこころにあります」
 NLD党員の宿舎はエアコンもない狭い部屋で、ベッドと机と椅子と物干しだけが置かれている。ウー議員は「我が国はまだ貧しいですから、これくらいの部屋で十分です。監獄に比べれば、ずいぶん快適ですよ」


2月3日 上院が開会。
 上院議長に少数民族カレン族のマンウィンカインタン議員NLDを選出。カインタンは「カレン族として議場に立つことが誇らしい。ミャンマーは資源が豊富だが、我々は豊かではない。経済発展のため平和と民族間の和解が重要だ」
 副議長には少数民族政党アラカン民族党(ANP)のエイターアウン議員(ラカイン族)が指名された。上下院正副議長4人のうち、実に3名が少数民族である。
 上院(民族代表院)は定員224名、内25%の56名が軍総司令官による指名枠。

 スーチーは少数民族武装勢力との和平も最優先課題としている。あらゆる民族が平和裏に共存する真の連邦国家を国造りの土台に置いている。上下両院の正副議長4人のうち、3人を少数民族から起用したのもその方針のあらわれである。少数民族政党からの入閣も十分にありうる。ラカイン族のある議員は「新議会の初日はうまくいった。与党としてのNLDに懸念は何もない」
 ミャンマーは人口の6割以上を占める多数派のビルマ族に加え、シャン族、カレン族、ラカイン族、モン族、カチン族、カヤー族、ムスリムのロヒンギャなど130あまりの少数民族がひしめく。また彼らの多くは武装勢力でもある。1948年の独立以来、民族間の内戦が続き、新政権にとって仇敵の国軍と、利害関係の複雑な少数民族の問題は大きな課題である。


2月8日 上下両院の合同議会では実にカラフルな光景が広がった。
 NLD議員のオレンジ色のたくさんの制服と、4分の1を占める軍人議員の緑色の制服。そのなかに高山植物の花のように鮮やかな原色の民族衣装が点在した。ミャンマー人口の3割以上を占める少数民族出身の議員たちである。
 黒い衣装に赤のショルダーバッグをさげたシャン族、ビーズ飾りをつけた大きな帽子が印象的なリス族、はちまき姿のラカイン族などなど、実に多彩な装いである。国会議員に占めるカラフルな少数民族議員の割合はまだ10数%であるが、NLDは彼らのために3人の正副議長を選任した。


2月17日 スーチーNLD党首は、国軍トップのミンアウンフライン国軍総司令官と3回目の会談。
憲法59条Fがおおきな議題のひとつであったとみられる。1時間の会談後、総司令官は「法の支配と恒久的平和について議論した」と発表した。

 スーチーが民主化運動にはじめて登場したのは、1988年にビルマ(ミャンマー)で吹き荒れた国民大闘争の日であった。40万人の大群衆を前に彼女はこう語った。「平和的手段で、すべての民族が仲良く力をあわせて、民主化を実現させよう」。その日、ステージ上で演説するスーチーを見守った濱島義博京大名誉教授は「その時の彼女の演説は、決して激しい口調ではなかった。興奮する大群衆をなだめるような優しい表現だった。彼女のその姿に、私は非暴力主義を提唱したガンジーの姿をダブらせていた」
<2016年3月15日>


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