ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

若冲の謎 連載第1回

2016-12-01 | Weblog
 生誕300年の今年、伊藤若冲のブームは想像を絶するものがありました。確かに若冲の絵は見れば見るほど、わたしたちのこころを惹きつけます。不思議な画家です。
 電子雑誌「Lapiz」(ラピス)発行人の片山通夫さんたちと、夜の錦市場を歩いているときに「若冲特集をやりたい」と提案がありました。そして若冲画のシャッター前で、表紙写真の通りですが、即決定してしまいました。若冲の伊藤家は錦のすぐ近くで青物問屋を営んでいたのは有名です。また天才画師は、同市場の危機を救った恩人であることも、近年あきらかになりました。知れば知るほど謎の多い若冲です。
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はじめに (以下本文より)

 若冲ブームは止まる気配がない。本年が生誕三百年に当たる。
西暦二千年に京都国立博物館で開催された、若冲没後二百年記念の特別展がまず火をつけた。同展のキャッチフレーズは「こんな絵描きが日本にいた」。宣伝文句からは、そのころ若冲を知るひとが少なかったことが知られる。しかし展覧会は出だしこそ客足もまばらで主催者を落胆させたが、いつの間にか観客数は急上昇した。ついには超満員になってしまう。この異常な現象はさまざまに解釈されたがその後も十数年、衰えることを知らない。日本国民で「じゃくちゅう」と読めない成人は、いまでは少数派かもしれない。

 そして京都ではいま、市立美術館で「若冲の京都 KYOTOの若冲」展が開催中である。先週も行ってきたが、会場では当然だが携帯電話が使えない。いっしょに行った友人たちとは「出口の売店コーナーに何時何分ころに集合しましょう」。このように言いあって、混雑する会場をあわただしく観覧した。
 かつての若冲没後二百年展の仕掛け人であり、開催中のKYOTO展監修者でもある狩野博幸氏は「若冲を神様のようにあがめる昨今の風潮には、ちょっと違和感がある」(京都新聞16年10月26日)

 今年最大の若冲展覧会は、上野の東京都美術館「生誕三〇〇年記念若冲」展であった。久しぶりに「動植綵絵」全幅が並んだ。わたしも待ち焦がれ、はるばる上野まで出向いた。そして覚悟はしていたが三時間近くも長い行列に付き合った。
 同展図録に辻惟雄氏は記しておられる。「もはやブームを超えたこの不思議な現象の、焦点ともいえる今回の展覧会が、加熱しすぎないよう祈るばかりである。」

 上野の若冲展について、金子則男氏がネット「R25」(16年5月20日)で過熱ぶりをレポートされた。以下、引用させていただく。

東京都美術館で開催されている「若冲展」の人気が過熱。ネットには、目を疑うような行列報告が寄せられており、何らかの改善策を求める声があがっている。
今回の展覧会は、若冲の初期から晩年までの代表作89点が集結。若冲が京都・相国寺に寄進した「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅が初めて東京で一度にお披露目されるとあって、その混雑ぶりはもはや異常事態だ。ツイッターの現場報告を見ると、
「若冲展の待機列。公園入口の交番近くに、210分待ちの看板が出てました…」(5月16日)
「平日、雨の天気で260分待ちの若冲展、すごすぎる」(5月17日)
など、「雨」「平日」といった条件も無関係に待ち時間は伸び続け、65歳以上が無料となる「シルバーデー」(毎月第3水曜日)の5月18日には、
「10:45現在でついに320分待ち!!」「若冲展、本日、シルバー無料デイだけど、一時、入場320分待ちって、一体、何なの? 5時間20分待ちは凄い!」と、ついに5時間超えを記録。
あまりの待ち時間の長さに、ツイッターには、「待ってる間に映画2本観られるのか」、「えーと若冲展は『待ち時間の長さで世界記録を作ろう!』的なキャンペーンでもおこなわれているのでしょーか…?」
「ネットをしていない老人層に若冲展の混雑を知らせるには、もう、朝のNHKニュースの画面隅に『若冲展昨日の最大待ち時間240分』って出すしかない」と、驚きの声が寄せられている。
そして一方では、「ただ並ばせず、時間制整理券など配って近隣に客を放つ方が経済貢献するだろうに」…
「何時間もただ突っ立って待ってるとか苦行かよ。整理券でももらってその間他の展示見ててもらうなり周囲のお店で時間潰してもらうなりしたほうがみんな幸せなのでは」
など、運営側に何らかの対策を求める声もあがっている。
確かに東京都美術館の周囲は、世界遺産に登録される見通しになった国立西洋美術館や、東京国立博物館、国立科学博物館、上野の森美術館、東京藝術大学大学美術館のほか、上野動物園、アメ横、不忍池、谷根千一帯など、見どころが尽きないエリア。あまりの行列で若冲自体のイメージを下げないためにも、整理券の配布は検討に値しそうだ。


 さてあまり注目されていない若冲を紹介しよう。わたしが書いた「若冲の謎」である。時間など気にせず、ゆっくり読んでくだされば、それほどうれしいことはない。
 ただ各章間に文の重複が多い。原因は筆者の構成力の不足と、怠惰のために原稿締め切りが迫ってしまったため。推敲の不足と記載の誤りなど、ご容赦とご指摘を望む次第である。


「若冲の謎」 目次 

1 はじめに
 
2 若冲という名前

 大盈若冲
 若冲名の誕生
 さまざまの名前
 売茶翁
 若中の出現

3 石峰寺五百羅漢

 吉井勇が愛した五百羅漢
 椿山荘の羅漢
 『都名所圖會』再板版
 『拾遺都名所圖會』
 「天明七年石峰寺図」
 皆川淇園、円山応挙、呉春の梅見
 遊戯神通
 天明の大火
 蕉斎筆記
 画乗要略
 筆形石碑
 石亭画断
 京都府寺誌稿
 『京都府紀伊郡誌』と『新撰京都名所圖會』

4 天井画

 義仲寺と蝶夢
 翁堂天井画
 湖南蕉門
 もうひとりの蝶夢

5 売茶翁・大典・聞中・伯珣

 宝蔵寺・相国寺・萬福寺・石峰寺
 売茶翁再び
 大典和尚
 聞中浄復
 伯珣照浩
 
6 年齢加算

富岡鐵斎と常煕興燄
 司馬江漢
 鈴木春信
 歌川広重
 木喰行道上人
 狩野永岳

7 年譜からみる伊藤若冲の生涯

<2016年12月1日 南浦邦仁>

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