映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

上海の伯爵夫人

2008年08月23日 | 映画(さ行)

(DVD)

1936年上海とくれば、イヤでもドラマチックな展開が予想されますね。
日中、そして、欧米各国の人々の政治的思惑が入り乱れた魔都。

主人公ソフィアは、ロシアの亡命貴族の未亡人。
貴族といっても名ばかり。
国を追われ、わずかな財産もすぐに使い果たし、
けれどプライドばかり高くて働くすべを知らない、という最悪な状況。
ベッドも交代で使わなければならない、というようなぎりぎりの生活。
ソフィアは、娘カティアと、義父母や義妹たちの一家を養うため、
ただ一人で、クラブのホステスをして稼がなければならない。
そのくせ、一家は、卑しい仕事といって、彼女を蔑む。
冒頭のこの辺で、私は相当むかついてしまったのですが・・・。

そのクラブで、ソフィアは盲目の元アメリカ外交官ジャクソンと出会います。
彼は事故で失明したばかりでなく、家族も失い、厭世的。
自分の理想のバーをつくろうとしている。
ジャクソンはソフィアこそ理想の女性と思い定め、
彼女を招いて、バー「白い伯爵夫人」を開くのです。

さて、そこに謎の日本人、マツダ登場。
これが真田広之。別に悪人じゃないんですけどね。
彼は大日本帝国の発展を夢見ている・・・。
詳しい正体は出てこないのですが、かなり日本外交の中心的人物であるらしい・・・。

ジャクソンは自分だけの小さな世界をバーの中に作ろうとした。
わざと様々な思想の人々を引き入れて、政治的緊張を作ったりもして・・・。
しかし、マツダはいうのです。
もっと大きなカンバスに絵を描いてみたくはないかと。
マツダは実世界を動かしてみたいという野望に燃えているわけですね。
この二人の対比がみせどころなのであります。
真田広之も国際俳優として、がんばってくれています。

いよいよ、上海に日本軍が突入、軍隊と逃げ惑う人々で、町は大混乱。
ところがですよ、なんと、例の一家はソフィアだけを置き去りに、
娘のカティアまで引き連れて自分たちだけ香港へ脱出しようとしていた!!!
むむむ、許せんっ!!!
その、費用も、ソフィアが工面したんですよ!
私はもう感情移入しまくりで、頼むから悲劇で終わらないで・・・と、思わず祈ってしまいました。

このロシア亡命貴族の他に、ヨーロッパの難を逃れたユダヤ人も登場します。
上海は流浪の人々の行き着くところでもあるのですねえ・・・。
しかし、わずかではありますが、希望も見出せるこの映画のラストには、満足しました。

脚本はカズオ・イシグロ。
この映画のためのオリジナルだそうです。
さすが、いい脚本だなあ・・・。

2005年/イギリス・アメリカ・ドイツ・中国/135分
監督:ジェームズ・アイヴォリー
出演:レイフ・ファインズ、ナターシャ・リチャードソン、真田広之、バネッサ・レッドブレイヴ



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4 コメント

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Unknown (tanabata)
2008-08-24 01:27:30
見てませんがコメント入れます。
真田広之には、国際俳優になって欲しいですね。
日本人俳優のカッコイイところ見せてほしいですよね。ジョン・ローンの妖しい東洋の魅了とは違う、ジャパニーズのエキゾチズムを際立たせて欲しいなぁ。

えー、tanabataは只今上海在住です。
まぁ、どうでしょうか、中国のイメージや報道は。
あまり偏ってもね、って思います。

というわけで、タンポポさんのレビューは帰国時のセレクトに役立たせて頂いています。
今後とも、よろしく。
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びっくり (たんぽぽ)
2008-08-24 11:41:14
>tanabataさま
上海からのコメントだったのですか、びっくりです。
映画では戦時中の上海はよく出てきますが、今は、普通の都会なんでしょうね・・・。
カズオ・イシグロの小説に「わたしたちが孤児だったころ」というのがあって、それの舞台がやはり上海なんですね。だから、この映画の脚本がカズオ・イシグロというのはすごく納得できたのです。今度紹介するハムナプトラ3にも、ちょっぴり上海が出てきます。
なんだか、急に上海に興味がわいてきました。
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Unknown (tanabata)
2008-08-28 19:09:19
上海、近いですよ。

一言だと、混沌の街。
今も魔都の顔は持っています。
もちろん市井の暮らしも、、。
この激変の時代に、物語もいっぱい落ちているはずです。
誰か現代上海を誇張せずに描いてくれないかなと思います。
この国のこの街の、喜びを悲しみを知って欲しいと思います。
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Unknown (たんぽぽ)
2008-08-29 21:17:28
>tanabataさま
ほんとうですね、今の上海が舞台のリアルなストーリーがあれば、読んでみたい気がします。
それはやはり、日中戦争時代の上海を生き抜いた一族の年代記だったりして・・・、もちろんラブロマンスもありで。
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