自己肯定の場
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ニューヨーク、シンシン刑務所における
収監者更生プログラムの「舞台演劇」を題材にしています。
無実の罪で収監された男、ディヴァインG(コールマン・ドミンゴ)。
刑務所内更生プログラム「舞台演劇」のグループに所属。
仲間たちと日々演劇に取り組んでいます。
そんなある時、刑務所内でもワルとして恐れられている男クラレンスが
演劇グループに参加することに。
この新人を加えて、彼らは次の公演に向けた新たな演目の準備に取りかかります。
本作は、シンシン刑務所の元収監者で、
舞台演劇プログラムの卒業生や関係者たちが多数参加しています。
このクラレンスも、ご本人が演じているのです。
なので、初めて演劇に触れるクラレンスと私たちの視点が重なって、感情移入しやすい。
クラレンスはあまり気が進まないながら、このチームに参加したのですが、
始めのうちはとまどいばかり。
なんのためにこんなことをするのか、よく分からない。
それが次第にのめり込んでいく様が興味深くうかがえます。
演劇は、1人でできるものではありません。
(1人劇はあるけど・・・)
そしてどんな端役であっても、欠けるとなり立たない。
チームとしての力も問われる。
そもそも刑務所にやってくる人たちというのは、
おそらくこれまであまり自己肯定感を持ったことがないのではないでしょうか。
けれど演劇に取り組むことによって、それが得られる。
自分はみんなの中で役に立っている。
一つの作品作りに貢献している。
そうした感覚。
実際に舞台に立って、拍手喝采をあびたりすればもう、それは確実。
映画やドラマでは刑務所内はいかにも殺伐としていますが、
こうしたプログラムが用意されているということにホッとします。
「シンシン SING SING」
<シアターキノにて>
2023年/アメリカ/107分
監督:グレッグ・クウェーダー
出演:コールマン・ドミンゴ、クラレンス・マクリン、ショーン・サン・ホセ、
ポール・レイシー、デビッド・ジローディ
刑務所のリアリティ度★★★★★
自己再生度★★★★☆
満足度★★★.5