映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

丘を越えて

2014年05月15日 | 西島秀俊
昭和初期、“モダン”を生きる人々



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えーと、西島秀俊さん出演作品、久しぶりじゃないですか?
だんだん、残り少なくなってきたからね。
 後はレンタルにはないので、購入するしかなさそうなのもあったりする・・・
う~む、悩むところだねえ。


でも本作、もっと早く見ればよかったというくらい、西島さんの見せ所たっぷり、ステキでしたねー。
そうそう、だから油断なりません。
 舞台は昭和初期。主人公は小説家菊池寛(西田敏行)。
江戸情緒の残る下町育ちの細川葉子(池脇千鶴)が、知人の紹介で文藝春秋社の面接を受け、
 社長である菊池寛の秘書に採用される。
 そしてこの社の編集者・朝鮮人の青年馬海松(西島秀俊)と出会う・・・と。



この辺りの時代感がすごく良いんだなあ。
葉子は面接のために、バッサリ髪を切って洋装になるのだけれど・・・。
この頃のファッションがステキだよね。
 当時で言うモダン。今で言えばレトロ。
 池脇千鶴さんの可愛らしいこと!!
私の認識不足で、全くお恥ずかしいけれど、菊池寛が文言春秋社を創業したんだねえ・・・。
 それで、直木賞や芥川賞を創設したのも彼だって。
本作中では、人情味厚く太っ腹、ちょっと変わったところもある大人物。
 こういう時期、こんな人が時々いたみたいだね。
 今どきは誰もがビジネスライクで、
 人情とか趣味とかにお金をつぎ込む大人物なんてあんまり見かけないけどね・・・。
葉子は服装こそモダンだけれど、ハートはしっかり江戸情緒、江戸の女という風情。
 菊池寛を尊敬し、いたわるしっかりもの。
 まあ、ここで心が動かされなければ男じゃないよね。
一方、馬青年は、朝鮮では貴族階級。
 しかし朝鮮は当時既に日本の支配下にあり、立場としてはなかなか複雑。
 ここでは一見、まともに仕事もせず遊び暮らしている気障な青年だ。
でも葉子は次第にその内面に触れて行くわけだね。
西島秀俊さんの魅力満載。西島ファンにはお得な作品です!!
 ダンスシーンがまたステキ!!


ところで、この馬海松氏は実在の人物で、朝鮮の児童文学作家として有名な人なのだって・・・。
 それと菊池寛の秘書を務めていた女性というのも実在で、佐藤碧子。
 実際に小説も書いていたそうです。
原作の猪瀬直樹氏も出演していたりする、色々と興味深い作品なのだわ・・・。
満州事変勃発というところで終わる本作。
その後ますます時代はきな臭く危険になっていくわけですが、
 グランドフィナーレはせめて気持ちだけでも明るく、
 ということで「丘を越えて」の曲と登場人物たちのダンス。
それから大きな丘をいくつも越えて、今の日本に至る、というわけ。
丘を越えた先は、平和な幸せの地だったといえるのかどうか・・・。
そうなるにはまだまだ幾つもの丘を越えなければならないのでしょうね・・・。

丘を越えて [DVD]
猪瀬直樹,今野勉
東映ビデオ


2008年/日本/114分
監督:高橋伴明
原作:猪瀬直樹
出演:西田敏行、池脇千鶴、西島秀俊、余貴美子

歴史発掘度★★★★☆
時代色★★★★★
満足度★★★★☆



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