映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ペイルライダー

2010年03月12日 | クリント・イーストウッド
蒼ざめた馬に乗ってきた男

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ペイルライダー [DVD]

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久しぶりに西部劇ですね。
うん、やっぱりにあいますねー。騎乗のイーストウッド。かっこいい。
この作品の舞台はゴールドラッシュに涌くカリフォルニア。
地方を牛耳るボスと、彼らに追い出されようとしつつある開拓民。
その弱者に味方するヒーローがイーストウッドの役どころです。
これって、あの「荒野の用心棒」に似てるんですね。
いやいやそれより、世間では「シェーン」との類似を言う人が多いようですよ。
ああ、そういえばラスト、少女が去りゆく彼を呼ぶシーンね。
思わず「シェーン!」と叫ぶかと思っちゃった。


でも、この作品の特異性は、イーストウッド演じるこの男にあるんだと思う。
そうそう、結局最後まで名前が出てこないのね。
牧師のスタイルをしているので、皆は彼を牧師(プリーチャー)と呼ぶ。
牧師にしては、なんと背中にいくつもの銃弾の痕があって、めっぽう強い。
何かちょっと陰りがあって雰囲気が危険な感じ・・・?
そうです。何しろペイルライダーだから。
えー、そもそも、そのペイルライダーってなんなの?
よくぞ聞いてくれました。
これは彼が乗っている馬に関係するんだね。
「蒼ざめた馬」ってのを知ってる?
二日酔いの馬・・・ってわけじゃないよね。
聞いたことはある気がするけど。
これは、ヨハネの黙示録にある言葉。
「見よ、蒼ざめたる馬あり。これに乗る物の名を死といい、黄泉これに随う。」
・・・つまり、死を象徴する馬。
このプリーチャーが乗っていた馬は、まあ、グレイの細かなぶち模様だったけれど。
これ、いわゆる連銭葦毛っていうやつなんじゃない?
あー、平家物語で出てくるヤツ。
・・・そうなのかな? とにかく美しい馬です・・・。
この映画では、ちょうどサラとミーガン母娘がこの黙示録の下りを読んでいるところへ
この馬に乗った男がやってくる。
蒼ざめた馬に乗った男・・・。
なんて不吉な。きっと彼には死がまとわりついている・・・。
それが彼女たちの第一印象だったのだけれど、やがてそれは事実になっていく
・・・という訳なのね。
そうそう、ここの下りが非常にステキなのだわ・・・。
この地域のボスが雇ったストックバーンという男。
これがプリーチャーの傷を作った宿敵であるらしいのですね?
そうそう。でも、このあたりの詳しい事情も、特に説明がありません。
おそらくプリーチャーは、過去にコイツのために傷を負い、生死の境をさまよった。
もしかすると、悪いことをした仲間同士だったのかも・・・。
ただ、そこで彼は荒くれ稼業がすっかりいやになり、
牧師となって銃を封印していたのだろうね。
そういう事情は一切説明なしで、見る者の想像に任せるあたりがちょっとしゃれています。


それから、金鉱を掘る様子も、あんなのは初めて見たなあ・・・。
うん、イーストウッドが味方についたところの人たちは、
よく私たちが映画などで見るように、川で砂をさらうんだよね。地道に。
けれど、ここの実力者は、ダイナマイトを使い、
水圧式のノズルで水を噴射して山を削る。
この強引な方法が、彼がココまでのしあがった所以なんだね。
こんなことをやったからたちまち鉱脈が枯れてしまった訳ね。
自然破壊・・・なわけですよ。
まあ、それを言ったら、今なんかどこもかしこもそれ以上の自然破壊が平気でおこなわれているんだけどね。
まあ、それはおいておくとして、このあたりにちくっとイーストウッドの反骨精神がのぞいているわけです。
大資本の金持ち対社会の底辺。自然破壊と自然との融和。

ということで、ストーリー自体はそう、珍しいわけではないのですが、
いろいろ考えると面白い部分がたくさんある。そういう作品でしたね。


1985年/アメリカ/116分
制作・監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、キャリー・スノッドグレス、マイケル・モリアーティ、リチャード・キール



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