映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

クライ・マッチョ

2022年06月04日 | クリント・イーストウッド

老人と少年の旅

* * * * * * * * * * * *

クリント・イーストウッド作品はまずほとんど公開時に見ているのですが、
本作はまた、コロナ自粛で見そびれていました。
さっそく配信が始まって、ありがたい。

本作は1975年、N・リチャード・ナッシュによる小説の映画化です。

かつてロデオ界のスターとして一世を風靡したマイク・マイロ(クリント・イーストウッド)。
落馬事故をきっかけに落ちぶれていき、今は家族もいません。
ある日マイクは、元雇い主からメキシコにいる息子ラフォを連れてくるように依頼されます。
彼の息子ラフォは13歳。
母親と共に暮らしていて、息子を父親に渡すことは拒否しているので、
無理に連れてくれば誘拐になってしまいます。
しかし、マイクは元雇い主に恩もあるため、
なんとかその希望を果たそうとメキシコへ旅立ちます。

 

さて、ラフォはろくに愛情を与えてくれない母との暮らしよりも
アメリカの牧場暮らしを望み、自分の意志でマイクと同行することに。
アメリカ国境を目指す、親の愛を知らない不良少年と
ヨレヨレカウボーイの、二人連れロードムービーとなります。



ところが移動シーンはそう長くはなくて、
車が故障し、とある田舎町に長く逗留することに。
この町で、マイクは馬の調教を手伝ったり、動物の健康相談に乗ったりして
人々に慕われるようになっていきます。
そして思わぬロマンスも・・・。
ラフォも乗馬を習ったりしてのびのびした毎日を過ごします。

ラスト、もうあまり先が長くないと思われる老人と、
これからの人生が待ち受ける少年の、
それぞれの決断が、納得できます。

ラフォが闘鶏のために飼育していたニワトリの名前が「マッチョ」で、
この旅の間、彼は常にマッチョを引き連れています。
こうしてみるとニワトリもなかなか愛らしいではありませんか。

クリント・イーストウッド監督はこの時点で91歳。
まだまだ主演として荒馬も乗りこなす格好良さ。
ちょっと前屈みでとぼとぼ歩くシーンはリアルではなくて演出なのでしょうか? 
こうなったら、長寿監督のギネス記録に挑戦するつもりで、
今後も活躍していただきたいものです。
本作は、まさにクリント・イーストウッドのためにあるようなストーリーでした。

 

<Amazon prime videoにて>

「クライ・マッチョ」

2021年/アメリカ/104分

監督:クリント・イーストウッド

出演:クリント・イーストウッド、エドゥアルド・ミネット、ナタリア・トラベン、ドワイト・ヨーカム

 

イーストウッドらしさ★★★★★

満足度★★★★.5

 


リチャード・ジュエル

2020年01月30日 | クリント・イーストウッド

怪しいというだけで犯人?

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またまた登場しました、ぴょこぴょこコンビ。
たまたまなんだけど、出番が重なりました。

さて、こちらはクリント・イーストウッド監督作品。
 残念ながらご本人は出演されていません。
1996年、アトランタオリンピックの時にあった実話なんだね。
はい、96年、オリンピック開催中のアトランタ。
 警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォーター・ハウザー)が、
 公園で行われている音楽イベントで、不審なバッグを発見します。
 彼は付近の人々を避難させましたが、全員退去とまではならず、
 突然爆発したそのパイプ爆弾で、けが人も出てしまいました。
 それでも、多くの人の命を救った彼は英雄視されます。
 ところが、FBIがジュエルを第一容疑者として捜査を始めます。
 そのことを知った現地の新聞記者がスクープとして新聞に掲載。
 メディアは一斉にジュエルを犯人扱いし、非難し始め、
 ジュエルは人格をおとしめられてしまいます。
 そんなところに旧知の弁護士・ブライアント(サム・ロックウェル)が立ち上がり・・・。

そもそも特にジュエルを犯人とする物証もないのに、
 まずジュエルが怪しい、と見られてしまうのだよね。
 恐ろしい・・・。
しかも、FBIはあの手この手で、無理矢理証拠をねつ造しかねない危うさが見えて・・・
 実にハラハラさせられるよね。
 でもジュエルが怪しいと思われるのは、無理もないところがあるわけね。
うん、まあ見たようにでぶっちょで、いい年して結婚もしておらず、母親の家に同居してる。
 職も正規職員ではなくて臨時雇い・・・。
それだけなら近頃たくさんいそうだけど・・・。
彼自身は警官に憧れていて、すごく正義感は強いんだよね。
そう、でもそれが強すぎてあちこちで問題を起こしていた。
 自分は正義を実行する人物という思い込みが強すぎて、
 人と接するのも上から目線で強引。
 大学の警備員をしていたときも、そんな感じで学生ともめ事を起こしてクビになっている。
・・・というところだけを見たら、私だってこの人怪しい、と思ってしまうかも。


弁護士ブライアンは以前からジュエルを知っていて、
 まあ態度はでかいけれど悪いヤツじゃないと知っていたので、
 弁護を引き受ける気になったわけ。
 実際、犯人ではあり得ない確証を得てもいたのだけれど・・・。
そこね、FBIも本当はそれに気づいていたのではないの?
そこが怖いところなんだよ。
 そんなことムシして、あくまでもジュエル犯人説を押し通そうとする・・・。
それにしても、仮に逮捕されて起訴されたとしても、
 裁判で有罪判決が出ない限りはまだ犯罪者ではないんだよね。
 この事件に限らず、逮捕されること=犯人という世間の思い込みが強すぎる気がする。
クリント・イーストウッド監督らしい、「名もなき英雄」の物語。
 そして私たちも冷静に自分で物事を考えなければ・・・ということでもあります。

<シネマフロンティアにて>
「リチャード・ジュエル」
2019年/アメリカ/131分
監督:クリント・イーストウッド
出演:ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ジョン・ハム

権力の持つ恐ろしさ★★★★★
満足度★★★★☆

 


運び屋

2019年03月11日 | クリント・イーストウッド

男の筋の通し方

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さて、お楽しみのクリント・イーストウッド監督作品です。
監督兼主演を務める作品としては「グラン・トリノ」以来10年ぶりですって。
うわ~、あのときでもご高齢にかかわらず・・・と思ったのだけれど、
 それからさらに10年経ってるというのもすごいよねえ。
 実話に基づく作品で、でもなるほど、なぜこの歳で今なのか、なぜこのストーリーなのか、
 というのは見れば実に納得だよね。

はい。ストーリーは、デイリリーを育てる仕事一筋で、
 家族をないがしろにしてきたアール・ストーン(クリント・イーストウッド)ですが、
 社会の変化に乗り遅れ、農場が失敗。
 住む家も差し押さえられて、元妻のところを頼ろうと思っても、けんもほろろ。
 行き詰まってしまいます。


デイリリーはこちらでは「ヘメロカリス」と呼ばれているよね。
 一日花だけど、次々に咲くので、一日花とは思えないくらいのユリに似た華やかな花。
 日本の感覚だとこういう仕事って家族で行うことが多いと思うんだけどなあ・・・。
だよね。日本ならふつう家族力を合わせてだよね・・・。
みんなで取り組めば良かったのに。
まあまあ・・・、はじめからそんなことで異議申し立てしても仕方ないじゃん。
とにかく、彼は家族を立ち入らせなかったってことだよ。


はいはい。そんな時、車の運転さえすれば稼げるという仕事を紹介されて、引き受けることにするんだね。
気楽に引き受けたその仕事は、思いの外報酬がたんまり。
 実は、メキシコの麻薬カルテルの「運び屋」の仕事だったわけ。
荷物のカバンは見ないほうがいいと言われて、アールも始めはあえて見ようとはしなかったのだけれど、
 3回目くらいの仕事のときに、あまりの高額報酬を不審に思って見てしまうと、なんと鞄の中は麻薬だった!!
これまで一応真っ当に生きてきた彼は、とても狼狽してしまうんだね。


だけど、始めの報酬は孫娘の結婚式の費用に、つぎの報酬は退役軍人施設への寄付に使ってしまった。
 お金はいくらあっても困らない。
 農場も買い戻したいし・・・。
 というようなことで、覚悟を決めて続けて仕事を引き受けます。

でも相変わらずどこか気楽で、途中で寄り道をしたり、パンクで困っている人に手を貸したりしちゃう。
 老人であることと予測不能の動きをすることで、捜査当局の網に引っかからないわけなんだ。
 意外にも好成績を上げるので、メキシコのボスの邸宅に招かれさえするんだよね。
しかしある時、運搬の仕事中、どうしても大きく逸脱しなければならないことが起きる・・・。
いくらなんでもこの仕事はいい加減にすると命にかかわるということは承知の上だよね。
そこがね、やっぱり男の筋の通し方というか、イーストウッドらしさなんだなあ・・・。
老いてもやっぱりカッコイイよー!



私が好きだったのは、ベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー)とアールがカフェで話をする場面。
 捜査官は必死で「運び屋」を探しているのだけれど、目の前の老人がそうだとは夢にも思わない。
 そんな彼にアールは「仕事よりも家族が大事だ」と諭したりする。
自分に言い聞かせてもいるわけだなあ・・・。
 ・・・というわけで、この役はイーストウッド監督が、今、この歳でなければできなかったということなんだ。
88歳!!
出演は無理としても、まだまだ監督としては頑張ってもらいたいところだねえ。


ところで、本作のアールの長女役アリソン・イーストウッドは、実のイーストウッドの娘さんですって。
ああ、他にもイーストウッド作品で何回か出演したことがあったような・・・。
仕事一筋で家族を顧みない父・・・というあたりで、
 結構本作と似たような家族関係だったのかも、なーんて想像しちゃいます。
 女性関係の出入りの多いイーストウッド氏でもありますし・・・ね。
まあ、それはさておき、実にイーストウッドらしい感動作ではありました。

<シネマフロンティアにて>
「運び屋」
2018年/アメリカ/116分
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アンディ・ガルシア、アリソン・イーストウッド

老人力度★★★★★
満足度★★★★★


15時17分、パリ行き

2018年03月09日 | クリント・イーストウッド

何者かに導かれるように・・・

 

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久しぶりの、ぴょこぴょこコンビ!
クリント・イーストウッド監督作品ですね!
 2015年8月、ヨーロッパで起きた無差別テロ「タリス銃乱射事件」で、
 現場に居合わせて、犯人を取り押さえた3人の若者の実話を映画化したもの。
しかもね、なんとその本人たちが出演しているというのが凄いんだよね。
そう。そして実際の事件の場面は最後の最後にあるだけで、
 映像はず~っとこの3人の子供時代から、事件に遭遇する直前の夏のバカンス旅行のことを映し出します。


ほとんど、青春ロードムービーだね。
そう、でもこの過程がなかなか興味深いわけなんだよ。
まずこの幼馴染の3人は、学校では落ちこぼれ。
 授業についていけていないとか、落ち着きがないとか・・・
 いつも校長室に呼び出されてお説教を食らっている。
 遊ぶのは戦闘サバイバルゲーム。
 けれど決して乱暴者というわけではない。
長じたスペンサーは、はじめて努力してダイエットし、トレーニングも積んで軍に入るのだけど、
 希望の部署にはつけなかった。
 そして、緊急時の行動を学んだり、
 軍の中では落ちこぼれの行くところと言われる部署で人命救助法を学んだり・・・。
まあ、これぞ天職とは思えてはいなかったわけだよね。



そんな中で、幼馴染の3人は久しぶりに揃ってヨーロッパ旅行に行くんだね。
イタリア、ドイツ、オランダ・・・。
 自撮り写真を撮ったり、遊覧ボートでナンパしたり、クラブで飲んだり踊ったり・・・。
 行き当たりばったりの気ままな旅・・・。
 いいなあ・・・。
そんな中で、スペンサーが言うんだよね。
「人生の大きな目的に向かって導かれているような気がする。」



せっかくだからやっぱりパリまで行こうと、
 3人はその日アムステルダム発パリ行きの高速列車タリスに乗り込んだんだね。
まさに運命に導かれて・・・ということかあ。
そして銃で武装したイスラム過激派の男が現れる。
が、ほとんど瞬発的に彼は行動を始めるよね。ほとんど迷いがない。
ホントに、ここで彼が今まで身につけたことがそのまま役に立つわけなのね。
 まるでこの日のために学んででもいたように・・・。
そこで、私たちはさっきのスペンサーの言葉を思い出して噛みしめるというわけなんだ。
 単なる偶然、というよりもやはり神の配剤のように思えてしまうなあ・・・。



登場人物はこの3人だけでなく、他の乗客たちも本人たちで、
 実際にこの列車で撮影されたんだね。
本人たちが演じるからリアルのはずと言う人もいるかもしれないけど、
 私は、そうじゃないと思う。
 だってねえ、普通の人が映画の撮影と言われてカメラを向けられたら、
 緊張して、普通のようには振る舞えないよ・・。
 というか、少なくとも私ならそうだ。
そこをいかにさり気なくリアルに動くようにするというのが監督の腕だったのじゃないかと思う。
 的確な指示とかカメラアングルとか・・・ね。
結末はわかっているのに、とてもスリリングで感動的。
 幸せな気持ちになる作品だったなあ・・・。
 誰もが、ヒーローになる瞬間があるってことかな。
何が役に立つかわからないのだから、なんでも真剣に吸収しろってことでもある。
そだね~。

そうそう、この3人の子供時代。
 見事にこの3人が大きくなったらこんな感じ、とおもわせるキャスティングだったよねえ。
はい、お見事でした!


<シネマフロンティアにて>
「15時17分、パリ行き」
2018年/アメリカ/94分
監督:クリント・イーストウッド
出演:スペンサー・ストーン、アレク・スカラトス、アンソニー・サドラー、ジェナ・フィッシャー、ジュディ・グリア

青春ロードムービー度★★★★☆
スリリング度★★★★☆
満足度★★★★★


ハドソン川の奇跡

2016年10月23日 | クリント・イーストウッド
英雄か、犯罪か



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さて、クリント・イーストウッド監督作品です!!
2009年ニューヨークで実際に起こった航空機事故を描いているんだね。
2009年1月15日乗客乗員155名を乗せた旅客機がマンハッタン上空850メートルでエンジン停止。
バードストライクと言って鳥がエンジンに入り込んじゃったんだね。
空港に引き返すかあるいは別の近くの空港に着陸するという選択肢もあったのだけれど、
 機長チェズレイ・サリンバーガー(トム・ハンクス)は、
 それでは間に合わないと判断して、ハドソン川へ着水したわけだ。

その間、事故発生から208秒。
 ほんとに、あれこれ悩んでるヒマなんかないよね。
しかし、着水したのはいいけれど、1月の凍りつきそうな水がどんどん侵入してくる。
 機長を始め乗務員が乗客を誘導して、翼の上に避難させて・・・。
でもこれはニューヨークという人目の多いところなのが良かったんだよね。
すぐに近くを行く船が救助に駆けつけた。
 結局155名全員が救出されたというのは、やはり奇跡に違いないと思うよ。
そして、その様子はすぐにそのままTVで流されて、
 機長は一躍国民的英雄になったのだけれど・・・。
国家運輸安全委員会が、機長の判断について異議を唱えるんだね。
 機長の判断は本当に正しかったのか、
 あえて乗客を不必要な危険に晒したのではないかと、厳しい追求が始まります。
全員が助かったのは事実だから、はじめからわかっている。
 だけど、実際すごくドキドキさせられちゃいました。
 迫力があって、リアルです。
 実際に自分では絶対に体験したくないと思っちゃったもの。



私、少し前に見た「フライト」という作品を思い出してしまった。
 あれも制御不能の飛行機を背面飛行までしてなんとか着陸に成功し、
 乗客を救った機長が、その直後、罪に問われるという・・・。
 だからもしかしたらその「フライト」は
 このハドソン川の事故をモデルにしたのかと思ったのだけれど・・・。
そうではなくて、それはまた別の事故がモデルだったんだね。
つまり、そういう事故が、結構あるということか・・・。



それにしてもね、実際全員が助かったと言うのに、この理不尽な対応はどうなのよっ!!
 ていうのが本作のキモということだよね。
 結果オーライ、それでいいじゃん、って普通は思う。
でもきっと、この事故の損害を機長の「判断ミス」って言うことで
 責任を押し付けたかった何者か(?)の意図があったんじゃないかなあ・・・。



私はだから本作、機長が責任を押し付けられて終わりなのかと思ってたんですよ、実は。
 でもそうじゃなかった。
そこがやっぱり、イーストウッド監督じゃないですか。
奇跡を起こすのは機械じゃない、人間だって言うのがね、いいですね。
余計な枝葉を付けず、シンプルに一つの顛末にまとめ上げたのがよかったと思う。



「ハドソン川の奇跡」
2016年/アメリカ/96分
監督:クリント・イーストウッド
原作:チェズレイ・サレンバーガー「機長、究極の決断『ハドソン川』の奇跡」
出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー、クリス・バウアー、マイク・オマリー
ドキドキ度★★★★☆
満足度★★★★☆

アメリカン・スナイパー

2015年02月25日 | クリント・イーストウッド
本国では迷子の子供のような・・・




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楽しみにしていたイーストウッド作品。
でも何だねえ、本作はかなり重いから、
 私ら ぴょこぴょこコンビでいいの?って気がするけど。
だってクリント・イーストウッド出演及び監督作品は私らで、
 ってことにしちゃったんだからさ、がんばろうよ。
はいはい。では気合を入れて。



これは、米軍史上最強の狙撃手と言われるクリス・カイルのベストセラー自伝を映画化したものだね。
先日の「フォックスキャッチャー」といい、本作といい、
 やっぱり“事実”の重みがモノを言う気がするね。
そうだねえ。どちらも、結末があまりにも予測不能で、
 これがフィクションだったら怒ってしまうところかもしれないね。
 でも、実際にあったことだから・・・。
だけれど、どうしてそんなことになってしまったのかは、
 ちゃんと納得できるようにじっくり描かれているわけだね、双方とも。
そういうこと。この二作は甲乙つけがたく、ガツンと心に響く作品でありました。



さて、このクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)、
 2003年~2009年の間に4回もイラクに派遣されてるね。
 きっかけはあの9.11同時多発テロ。
 もともと「弱いものを守れ」と父に言われて育った彼は、
 アメリカは自分が守る、とばかりに米海軍特殊部隊ネイビー・シールズに入隊。
 結婚直後にすぐ1回めのイラクに行ってる。
彼は天才的な狙撃手でなんと160人を殺したという・・・。
別に殺人鬼じゃないよ。
 敵を倒さなければ味方がやられるから、正義感に燃えて弾丸を放ったわけだ。
 けれど自分だっていつ敵にやられるかわからない。
絶え間ない緊張感にさらされるんだね。
そんな彼が平和な米本国に帰還すれば・・・。全くの別世界。
 本来はその平和に浸りきれるはずなんだ。
 最愛の妻と子どもたちがいて。
これはね、絶えず危険に晒されて緊張感を保ち続けた生活を続けていると、
 この全く緊張のない生活は、空虚で現実味のないものに
 感じるんじゃないかなあ・・・と私は想像するわけだ。
少し前に見た「アルマジロ」もそうだったよね。
 せっかく生還した兵士たちが、また戦場に戻っていくケースが
 とても多いということだった。



実際、カイルは米国の社会には全然溶け込めない。
 戦場ではあんなに頼もしく見えるのに、
 アメリカに返った彼はまるで迷子の子供のようだ・・・。
戦争がどんなふうに人の心を蝕んでいくのかが、よく分かるよ・・・。
怪我のように目には見えないから余計たちが悪いね。



カイルにとって、最期の闘いの、あの砂嵐のシーンは凄かったねえ・・・。
というかほとんど何も見えなかったけどね。
 でもまあ、あの砂嵐のお陰で助かったようなもんだからね。
あんな銃弾の飛び交う中で、家族と電話できちゃうというのもすごいよねえ。
 二次大戦の映画なんかでは考えられないね。
電話してる最中に相手が撃たれて亡くなってしまったりしたら、
 電話の相手も救われないなあ。
すごく遠いのに、近いんだよ。
 なんだかおかしな世の中になっちゃったなあ。



そして、無音のエンディング・クレジット。
 これはね、すごく効果的だったような気がする。
どんな音楽もここは虚しいだけ。
実際、無音の中でも最期まで座っている人が多かったね。
 というか、放心して動けなかったんだよ、私なんかは。
いや、ホントにすごい作品でした。

「アメリカン・スナイパー」
2014年/アメリカ/132分
監督:クリント・イーストウッド
出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、ルーク・グライムス、ジェイク・マクドーマン、ケビン・ラーチ

緊迫度★★★★☆
満足度★★★★★

ジャージー・ボーイズ

2014年10月03日 | クリント・イーストウッド
日本人はきっと気にいる・・・



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60年代、世界的人気を誇った米ポップスグループ、フォー・シーズンズ。
 その栄光と挫折の物語です。

えーと、例によって私たちぴょこぴょこコンビが出てきたのは、
 クリント・イーストウッド作品だからなんだよね。
はい。出演はしていないけれど、監督です!!
あ、だけどほんの一瞬映画の中のTVに映ってたよね。
うん、若~いクリント・イーストウッドがね。
 ちょっと心憎い演出。
で、本作はこの映画オリジナルではなくて、
 2006年トニー賞でミュージカル作品賞等4部門受賞の
 ブロードウェイミュージカルを映画化したものなんだね。
ミュージカルにクリント・イーストウッド監督?というと
 ちょっと違和感があるかも知れないけれど、
 音楽にも造詣が深いイーストウッド監督だから、それはアリでしょう。
うん、多分フォー・シーズンズの曲は、
 監督自身の青春を飾った懐かしい曲でもあるのだろうな。
そういうあなたは???
イヤこんなこと言うといい年なのがバレるけど、
 「シェリー」の曲が流行った頃はまだ子供の頃だね・・・。
 でも、テレビやラジオでずいぶん流れていたから、とても良く覚えているよ。
 日本のバンドが日本語で歌っていて、そちらの印象のほうが強いかもしれない。
小学生のしかも低学年の頃? 
だからなんというグループだったのかもおぼえていないけど・・・
 今、つい調べてしまったよ。
ダニー飯田とパラダイスキング。
あ、そう言われれば思い出した・・・。
 ちゃんとYouTubeにもあるんだなあ・・・。便利な世の中だよ。
 で、やっぱりフランキー・ヴァリ並みの声を出せる男性がいなかったようで、
 ボーカルは九重佑三子さんなんだな。
ついでに本家のフォー・シーズンズ版も聞いたけど、やっぱりいいねえ~。
 懐かしいだけじゃなくて、なんだか楽しくなっちゃう曲だなあ。
本作で初めてこの曲を聞く若い方もきっと気にいると思います・・・って、
 いやいや、ちょっとー、映画そっちのけで「シェリー」の話になっちゃってるよ。
はい、軌道修正します。



ニュージャージー州の貧しい地区。
 4人の若者たちがポップスのグループを結成。
お金もコネもない者がこの町から出るには、
 軍隊に入るかギャングになるしかない・・・などと言われていた。
実際、グループのニック・マッシとトミー・デヴィートは前科もあるチンピラだ。
 でも、フランキー・ヴァリの特異な声と才能は買っていて、
 なにかと大事に思っているのは見て取れる。
そうそう、それはあのギャングのボス(クリストファー・ウォーケン)も同じで、
 密かな後ろ盾としては心強い!!
 なんとなく、町のみんなが応援しているという感じが心地よかった。
そこにまた、作曲もできて歌も抜群のボブ・コーディオが加わって
 グループは一段とレベルアップ。
 そしてその「シェリー」が空前の大ヒットとなるわけだ。



まあでも、たいていの音楽ユニットはその後分裂していくよね。
 フォー・シーズンズもまた然り。
つまりもともとチンピラのトミーが、マネージャー的役割を務めていたのだけれど、
 コイツがいつでもトラブルメーカーだ。
 彼のお陰で空中分裂しかけたグループの後始末を、フランキーがどうつけていくのか。
うん、そこのところが見どころだし、
 フランキーは日本的義理人情になじむ奴だなあ。
確かに・・・。


それから、映画になるようなミュージシャンは、
 100%といっていいくらいドラッグに溺れ、自滅していくものだけど、
 本作、それがないのがステキだなあと思った。
うん、事実はどうかわからないけれど、少なくとも本作では、ね。
でもフランキーの娘が・・・。
やっぱり、そういうものにはすごく近い世界なんだろうね。



作中、出演者が観客に向けて語りかけるところがあるでしょう?
面白い演出だなあと思ったのだけれど、
 これはこの映画独自のものではなくて、元のミュージカルにある演出なんだって。
そうなのか。
 さすがイーストウッド監督・・・なんて感心してみてしまった!


ラストのカーテンコールにも似たフィナーレがまた、
 すこぶる楽しくてステキだった!!
華やかで、やっぱりいいよねえ。
 クリストファー・ウォーケンまで踊ってたし、それこそ、インド映画のノリに近い。
「舞妓はレディ」の残念なラストとつい引き比べてしまったよ・・・。
いや、それは初めから比べちゃダメだから・・・。

「ジャージー・ボーイズ」
2014年/アメリカ/134分
監督:クリント・イーストウッド
出演:ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、マイケル・ロメンダ、ビンセント・ピアッツァ、クリストファー・ウォーケン

懐かしのメロディ度★★★★★
栄光と挫折度★★★★☆
ほんのりユーモア度★★★★☆
満足度★★★★☆

荒鷲の要塞

2014年09月21日 | クリント・イーストウッド
ロープウェイ上のアクション

荒鷲の要塞 [DVD]
クリント・イーストウッド,リチャード・バートン,メアリー・ユーア,マイケル・ホーダーン
ワーナー・ホーム・ビデオ


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あれ? クリント・イーストウッド出演作、見ていないのがあったんだね。
へへへ。実はね、結構中盤ですっ飛ばしたのがあったんだよ。
 先日何かでこの作品が紹介されていたのを見て、
 あれ、クリント・イーストウッドだワ・・・ということで、観る気になった次第。


第二次大戦中の話なんだね。
 アメリカのカーナビー将軍がドイツ軍に囚われの身となってしまった。
 しかも山岳部にある難攻不落の「荒鷲の要塞」と呼ばれる場所に。
 英国情報部のジョン・スミス(リチャード・バートン)ら6名と、
 アメリカレンジャー部隊員のシャファー(クリント・イーストウッド)が、
 カーナビー救出のため要塞に侵入を図る。
 しかし、付近の雪山へ降下した際、事故に偽装されて一人の諜報員が殺害されてしまう。
この中に、敵のスパイが・・・?! そしてこの作戦の真の目的とは??


・・・ということで、入り組んだスパイ合戦。
 誰が敵か、味方か、実際油断ならないね。
このジョン・スミス自身が最も怪しい感じもしたけど・・・。
ま、そこも注意してみてね、ってところかな?
 唯一信じられるのはクリント・イーストウッドだけ。
だね。
 実際、若かりしクリント・イーストウッド、さっそうとしていてカッコイイわ~。
ロープウェイ上のアクションとか、マシンガンをぶっぱなすところとか。
いや、007などでもあったけど、ロープウェイの屋根の上でアクションするのなんか、
 高所恐怖症気味の私にはぞっとします。やめて欲しい・・・。
ワイヤーを張って引っかかったらダイナマイトが爆発する仕組み、それが後のシーンで、うまく敵が引っかかるわけ。
これが本当の伏線だわ・・・。
はは、シャレじゃないけど、ちょっとユニークだったね。
 68年作品ということで、今にすればアクションは控えめだけど、
 いろいろな騙しのテクニックを仕掛けるスミスと、アクションで見せるシャファー。
 そこそこ楽しめます。

「荒鷲の要塞」
1968年/アメリカ/
監督:ブライアン・G・ハットン
脚本:アリステア・マクリーン
出演:リチャード・バートン、クリント・イーストウッド、メアリー・ユーア、マイケル・ホーダーン、パトリック・ワイマーク

満足度★★★☆☆

J・エドガー

2012年02月07日 | クリント・イーストウッド
真の姿を覆い隠すヨロイ



                 * * * * * * * * * *

さて、イーストウッド監督作品なので、久しぶりにまた出てきました~。
007よりはハリキリがいがある。
でも、実はこの作品を見るのは、あんまり乗り気ではなかったんだよね。
うん、ジャンル的に、政治ネタと言うか社会ネタがどうも苦手なんだなあ・・・。
しかし、イーストウッド作品は見逃す訳にはいかない、と。
そう。けれどこの作品、フーバー長官と腹心の部下の秘められた愛も描かれている
・・・と聞きまして、やっとその気になったのでした!!



さてまず、レオナルド・ディカプリオとイーストウッド監督、これで初タッグなんだね。
そういうこと。だからこそ、もうちょっと私好みのテーマ作であって欲しかったと余計に思うのよね・・・。
まあ、まあ・・・。
えーと、まずこのジョン・エドガー・フーバーについて。
29歳でアメリカ連邦捜査局つまりFBI局長に就任して
約半世紀にわたって局長を勤め上げた、FBIの顔ともいえる人。
現場検証、指紋採取、筆跡鑑定、操作情報のデータ化等々・・・
現在の犯罪捜査の基礎を築いた人だね。
ははあ・・・、今時のミステリはこのあたりが基礎基本だもんね。
そういうこと考えると、なかなか偉大ではないの。
ところがですね、そういう功績の一方で、
政治家や左翼系の活動家の言動を監視。
歴代の大統領の弱みを握って脅していたらしい。
すごい自己顕示欲だよね・・・
そもそもそういうところのトップが何十年もずっと同じ人物なんて、普通は考えられないよ・・・。
誰も恐ろしくて、変われとは言えなかったのかな・・・。
まあ、とにかくFBIの活躍は様々なTVや映画で語られる所でもあるし、
実際数々の大きな事件を解決してきたわけだ。
だからアメリカではこの人はまあ、英雄として誰もが知っているということらしい。
でも残念ながら日本では知名度はイマイチだよね。
そう、結局日本で盛り上がりに欠けるのは、そういうことだから仕方ないんじゃないかな・・・。



で、今作ではその伝説的フーバー氏の実像を描こうということだね。
まず表面上見えるのは、ものすごい上昇志向。自己顕示欲の塊。
狡猾。共産主義嫌い。正義の人と見られたがっている。
ところが次第に見えてくる内面は・・・。
根っこは、マザコンなんだろうなあ。
何しろ母親があのジュディ・デンチだよ。
この迫力には大抵の男は負ける・・・。
まあ、それはともかく、幼少の時から全てに母親が支配していただろうことが伺えるよね。
で、男は強くなくてはならない!!という呪縛を植えつけられる。
しか~し、そのためなのかどうか・・・、彼は女性を好きになれない。
と言うかむしろ男が好きだ!!
FBI副局長クライド・トルソンとの秘められた恋。
いや実際そんなエロいシーンがあるわけではないのだけれど、
トルソンはフーバーの下で働き始める時に、こう約束するんだね。
「毎日昼食か夕食を共にすること」。
口には出さないけれど、二人の心の絆が一目会ったその日から結ばれる。
あるとき、珍しく二人が大げんかをするのだけれど、その時トルソンはこういうね。
「お前なんか小心者で嘘つきで、凡庸だ!」
若干違うかもしれないけど、まあ、そんなセリフでした。
が、実はこの言葉こそが核心を突いているよね。
そうなのです。女々しい・・・って女の立場では嫌な言葉なんだけど、
フーバーは母親が求めていた「男らしい」男という理想とは真逆・・・。
彼の自己顕示欲たっぷりの言動は、つまり自分の真の姿を覆い隠す鎧なんだよ・・・。
結局なんだかんだと言いながら、そういうフーバーをトルソンは愛したわけなんだな・・・。
うーん、それにしてもやっぱり老人男性同士の愛って・・・。
正直気色悪いわな・・・。
むろん、この解釈が正しいというわけじゃないよね。
こういうふうにも考えられるんじゃないかって、イーストウッド監督の投げかけだから。
人の内面は、本人にだってわからないものだから・・・。
だからドラマになるってことか。
ディカプリオの老人姿は評判がいいようだけど・・・。
老人の動作とか、すごくそれらしかったと思うよ。
私が思うに、昔はさっそうとかっこ良くキビキビ動けたけど、年をとるとこんなふうになっちゃうって、
若干イーストウッド監督の実感もあったんじゃないかなあなんてね・・・。
そうだねえ・・・。



で、全然別の話だけど、今作を見たときに「タイタニック」の予告編をやってたね!
そう、今度3Dで、また公開になるとかで。
そこで写ったディカプリオのなんと若々しいこと!!
はあ~、やっぱり若いということはそれだけで美しいのだわ。
タイタニックは一度ならず見たけど、やっぱりまた見たくなっちゃったなあ。
ぜひ、3Dで!!
船の舳先で二人で風を切って・・・!、あの名シーンが3Dだと一層盛り上がりそうだ~!!


J・エドガー
2011年/アメリカ/138分
監督:クリント・イーストウッド
出演:レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、アーミー・ハマー、ジョシュ・ルーカス、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ピアソン

硫黄島からの手紙

2011年01月28日 | クリント・イーストウッド
故郷の家族へ向ける思いは同じ



             * * * * * * * *

ハイ、では硫黄島2部作の2作目ですね。
こちらは日本側の視点から描いている。
始めイーストウッド監督は『父親たちの星条旗』だけを作るつもりでいたといいます。
でも、いろいろな資料を見る内に、栗林中将が家族に宛てた手紙を読んで、
これは是非日本側からの話も作ってみたいと思ったそうなんだ。
実際その栗林氏の手紙は硫黄島から出したものではなくて、
彼がそれ以前アメリカにしばらく滞在したときのものだそうだけれど・・・。
でも確かにこの作品は“手紙”に焦点があてられているね。


日本の総司令官が、その栗林中将(渡辺謙)だね。
彼はアメリカで生活しただけあって、リベラルな精神の持ち主。
精神主義に凝り固まった他の上層部と比べて、偉ぶらないし考えが合理的だ。
また一兵卒の立場としては、西郷(二宮和也)の視点を活用しているんだね。
彼は故郷ではパン屋さん。
妻と生まれたばかりの子供がいて、口には出せないけれど、生きて帰りたいと強く思っている。
アメリカ軍が上陸してくる前は、ひたすら穴ばかり掘ってたようだね。
そうだよ。それも大変だったんだろうなあ・・・。
いよいよの戦闘シーンは、前作と同じくほとんどモノクロに近い色彩で描写されているよね。
うん、日常を超越した殺伐とした狂った世界に突入・・ということだね。
こちらは前作よりずっと悲惨で残虐なシーンが多いな。
前作は帰国した兵士たちの話が中心だったからね。
でもこちらはまさにその戦闘こそがメインだ。
日本軍の精神構造とか・・・、
まあ、私たちも本や映画、ドラマなどで知るだけなんだけれど、
きちんと把握して描かれていると思う。
自決を強要するようなシーンとかね。
なんと投降した日本兵を米兵が平気で撃ち殺しちゃうなんてシーンもあったなあ。
ああいう場なら、そんなこともアリだろうと何だか納得できちゃったよ・・・。
アメリカ作品だからってアメリカにえこひいきもナシ、と。


私が泣けたのはね、こんなシーン。
怪我した米兵が一人日本の陣地に運び込まれてくる。
そのときは、介抱しちゃうんだな。
結局息を引き取るんだけれど。
その米兵が、故郷の母からの手紙を大事に持っていた。
「早く戦争が終わって平和になるといい。そして、必ず生きて帰ってきてね・・・」
そこで、日本兵のみんなも心打たれるんだ。
アメリカ人も自分たちと同じなんだ。同じ心を持った人間なんだ・・・。
故郷で待つ人の思いも、どちらも同じ。
鬼畜米英なんてウソだ・・・。
それなのにどうして、銃を持って殺し合わなければならないのか・・・・・・
一番訴えたいところだよね・・・。


この作品、もちろんアメリカでも公開されたわけだよね。
むこうでの評判ってどうだったのかな。ちょっと気になるね。

さて、作品中、ニノのセリフにもありました。
「こんなちっぽけな島なんかアメリカにくれてやればいい。」
そう、東西8キロ南北4キロ程度の小さな島です。
でも、問題なのはその位置だったんだね。
東京とグアムの中間。
アメリカの攻撃拠点として、非常に重要な場所だ。
米上陸は1945年2月18日。米軍33000名。日本軍26000名。
民間人も住んでいたんだけれど、この戦闘以前にすべて退去していた。
一ヶ月以上の戦闘を経て米軍死者6800名。負傷者26000名。日本軍死者21000名。
・・・ということは日本はほぼ全滅かあ・・・。
その硫黄島は現在遺族や軍・政府関係者・マスコミしか入れなくて、
観光目的では上陸出来ないそうです。
そうだね、畏れ多くてとても遊びではいけない感じ。
まあ、礼儀としてこれくらいのことは覚えておきましょう・・・。


この作品は音楽もとても良かったけど・・・、
ああ、カイル・イーストウッド。監督の息子さんだよね。
うん、ここまでの作品だと身びいきだなんていえない。
イーストウッド監督の2部作。
渾身の作品でした。

硫黄島からの手紙 期間限定版 [DVD]
クリント・イーストウッド,スティーブン・スピルバーグ,アイリス・ヤマシタ
ワーナー・ホーム・ビデオ


「硫黄島からの手紙」
2006年/アメリカ/141分
監督:クリント・イーストウッド
音楽:カイル・イーストウッド
出演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童


父親たちの星条旗

2011年01月27日 | クリント・イーストウッド
自分たちはヒーローなんかじゃない



            * * * * * * * *

太平洋戦争の最激戦地である硫黄島。
その戦闘を日米双方の視点で描こうとするクリント・イーストウッド2部作の内の第一作です。

あれ、クリント・イーストウッドはもう終わったんじゃなかったっけ?
それがですね、確かに、既に見た作品なので、
てっきりブログに載せたと思い込んでいたのですが、
実はこれを見たのはこのブログを始めるほんの少し前で、記事にはしていなかったんです。
それでまあ遅まきながら、この度またきちんと見まして、穴埋めをしているわけ・・・。
うん、この作品は見るの2度目だけれど、やっぱり胸に迫るモノがあるよね。
ただ戦争で人が大勢亡くなって、悲しいとか、むなしいというだけではなくて、
生き残った人がずっと持ち続けた心の傷が・・・ね。


まずは、冒頭のこの写真。
当時、この写真がアメリカの新聞で紹介されて話題になったんだね。
確かに何か訴えるモノがあるよ。
戦地で兵士たちがこうして力を合わせて必死で闘って勝利したんだ・・・というような。
実際にはまだ戦闘の始めの頃の写真なんだね。
当初アメリカは4日もあればカタがつくと思っていた。
でも実際は1ヶ月以上も激しい戦いが続いたんだ。
で、この旗は見ての通り6人で立てているけれど、生き残ったのは3人だけ。
それで、政府がこの写真に目をつけたんだ。これは使えるぞ!と。
当時アメリカでも戦費の捻出に苦労していたんだ。
そうなのか・・・、その頃日本でもモノが無くて、
皆飢えていたし、鍋や釜など家庭の鉄製品まで供出していたとは良く聞くけどね。
アメリカは戦時中でもモノが豊かだと思っていたよ・・・。
庶民の暮らしは、日本よりはよほどましだったろうとは思えるけどね。
国家予算としては大変だったのでしょう。
そこで、費用をかき集めるために、軍事国債を売り出したんだけれど、
そのPR要員にかり出されたのが、この旗を揚げた3人というわけだ。
彼らは一躍ヒーローに祭り上げられる。
イーストウッド監督も、当時まだ子供だったけれど、
この写真を見たことを覚えている、と語っているよ・・・。
ほう、さすが年季の入った監督!!
さて、でも彼ら自身が本当のことを一番よく知っている。
自分たちはたまたま写真に写ってしまっただけ。
多くの仲間は死んで、悲惨な現場もみたし、敵兵も殺した・・・。
自分たちはヒーローなんかじゃない。
忘れてしまいたいのに、作り物の岩塊上に旗を立てるシーンまで
ショーとして再現させられたりする。
いまでこそPTSDという概念は広くあるけれど・・・。
当時はそんなことお構いなしだったんだろうね。
この三人の一人が衛生兵のドクで、
彼はまあ、その後普通に年老いてから亡くなったんだけれど、
その悲惨な島での体験は、家族にも語ることはなかったらしい。
でも、ご本人が亡くなった後で息子さんが調べて本にしたんだね。
それがこの映画の原作ということなんだ。
ドクは「衛生兵・・! 衛生兵・・・!」と誰かが遠くで自分を呼んでいるような気がするんだ。
帰還した直後も、また、数十年を経た死の間際でさえも。
うん、ここの演出はすごくいいと思う。
この作品では、硫黄島の戦闘シーンはほとんどモノクロに近いくらい、色調を落としているね。
そう。いかにも殺伐としたシーンにふさわしい。
それから、現れる日本兵の姿が、極端に少ない。
実際、地下道を掘って潜んでいたらしいのだけれど。
だから、どこにいるんだか、どこから襲ってくるのだか、解らないから不気味で怖い。
そういう風に描かれている。
なるほど・・・。
しかしその日本兵の実体は・・・。
ということで、「硫黄島からの手紙」に続きまーす!

父親たちの星条旗 (特別版) [DVD]
クリント・イーストウッド,ポール・ハギス,ウィリアムス・ブロイルズ・Jr
ワーナー・ホーム・ビデオ


「父親たちの星条旗」
2006年/アメリカ/132分
監督:クリント・イーストウッド
出演:ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ、バリー・ペッパー、ジョン・ベンジャミン・ヒッキー

さよなら。いつかわかること

2010年12月09日 | クリント・イーストウッド
母親の死を乗り越えるための旅



            * * * * * * * *

えーと、これ、クリント・イーストウッド作品?
いえ、監督でも出演でもないのですが、音楽担当なんです。
・・・そうでなかったら見なかったかも知れないのだけれど、
これがなかなか切なくじ~んときてしまう作品でしたね。


え・・・と、それで一応、今回で私たちのクリント・イーストウッド特集は幕ということになります。
えっ、そうなの。
後の作品は、リアルタイムで見て記事になってるんだよ。
うん、でもずいぶんたくさん見ましたね。
初期の出演作品は、かなり飛ばしたのがあるけどね。

音楽担当といえば、2003年に「ピアノ・ブルース」という彼の監督作品があるけど、抜かしたでしょう。
うん、一応見たのだけれど・・・音楽ドキュメンタリーというか、ジャズの巨匠たちをイーストウッドが直接インタビューした作品でね。
そういうことにぜんぜん疎い私では全く歯が立ちませんでした・・・。
ジャズに興味がある方なら、たぶん食いついてみたくなる作品だと思います。


で、話を戻して、まずこの作品に行ってみましょう。
ホームセンターで働くスタンレーの妻は、兵士としてイラクに赴任している。
逆パターンは多いけど、奥さんが兵隊って、もちろんないわけじゃないよね。
それで、スタンレーは二人の娘たちと家を守っているわけ。
まあでも、たいていの家がそうであるように、
父親と子供たちだけってのはちょっと関係がぎくしゃくしちゃうんだね。
この作品には結局母親は登場しないんです。
背景として写真があるくらいで。
しかし冒頭まもなく、この家のドアをたたく正装の軍人。
このシーンよくあるけど、本当に不吉だよね。
妻の戦死を告げに来たわけだね・・・。
呆然としてしまったスタンレーは、この事実を娘たちに言うことが出来ない。
衝動的に娘二人を連れて旅に出てしまう。

次女ドーンは8歳。フロリダの遊園地へ行くというのでウキウキ。
でも、長女ハイディは12歳。
なぜ突然父親が仕事を休み、自分たちが学校を休んでまで旅行をするのか、怪訝なようす。
屈託なさそうに見える娘たちだけれど、母親不在の家庭で、必死に寂しさを押さえ込んでいたんですよね。
そんな娘たちに、母親の死をどういうきっかけでどのように話せばいいのか。
いつまでたっても切り出す勇気をもてないんだ。
スタンレーが自宅に電話を入れるシーンが2回あって。
うん、すごく切ないよね。
自宅の留守電には、妻グレイスの声が入っている。
まるで、そこにグレイスがいるみたいだ。
「娘たちとフロリダにいくよ。みんな元気だよ・・・。」
電話に語りかけるスタンレーの姿が切ない・・・。
でも、この旅の間に彼らは家族としての絆を深めていくんだね。
そういう意味では、やはり必要な旅だったんだろうなあ。

アメリカのこの戦争は無意味だ、間違っていると多くの人が言う。
でも、その戦争のために命を失う人はやはりいて、
残された家族の気持ちを思うと本当に複雑だよ・・・。
この作品では、スタンレー自身はそんなことを言うような余裕も何もないんだけれど、彼の弟が代弁者としてそれを語っているね。
悲劇ではあるけれども、やはり今生きている子供たちのパワーのおかげかな、
母の死を受け入れ乗り越えて前進していけそうな、
ちょっぴりの希望が見えるところで終わるので、後味はそんなに悪くない。
いい作品でした。
あ、肝心の音楽も、出しゃばりすぎずしっとりと密やかに・・・
まさに、この作品ぴったりの音楽でした!
原題はGrace is gone とかなり、ストレート。
「さよなら。いつかわかること」というのは何だか舌足らずで、マぬけた感じがしなくもないけど・・・、原題よりはましか・・・。

2007年/アメリカ/85分
監督・脚本:ジェームズ・C・ストラウス
音楽:クリント・イーストウッド
出演:ジョン・キューザック、シェラン・オキーフ、グレイシー・ベドナルジク、アレッサンッドロ・ニボラ

さよなら。いつかわかること [DVD]
ジョン・キューザック
メディアファクトリー



さて、というところで、クリント・イーストウッド特集、いよいよおしまい!
これまでおつきあいいただきまして、ありがとうございます。
ちなみに、作品順としてはこのあと、
硫黄島からの手紙
父親たちの星条旗
チェンジリング
グラン・トリノ
インビクタス
となります。


さて、この後どうしましょうか・・・ということで、
やはりまた誰かの作品を追ってみたいと思うのですが・・・
皆様の中で、誰かリクエストがありますでしょうか?
・・・出来れば男優の方がいいなっ!!

ミリオンダラー・ベイビー

2010年11月19日 | クリント・イーストウッド
神の意志よりも人の意志・・・



             * * * * * * * *

これは、アカデミー賞最優秀作品賞、監督賞、主演女優賞に助演男優賞とすばらしく評価の高い作品ですね。

ミスティックリバーに続いて、またがーんと重い作品かと思ったら、
結構わくわく・どきどき。
しかし、かと思えば、終盤またものすごく重いテーマにぶち当たるという・・・。
そうなんです、イーストウッド監督の進化形なんじゃないでしょうかね。
重いテーマもエンタテイメントにくるんで、
さも“重い”という印象をあえて持たせないようにしている。
そういう傾向はあるような気がするね。


マギーは田舎から出てきて、ひたすらボクサーの夢を持ち続けている。
ウェイトレスをしながら切り詰めた生活。でももう31歳。
何とかいいコーチに就きたいと、
フランキーがオーナー兼トレーナーをしている寂れたボクシングジムにやってくるのだけれど、
フランキーは女には教えない、とつれない。
けれども、彼女のひたむきな情熱は、このうらぶれたおっさんたちにも伝わっていくんだね。
いよいよ試合に出るようになってからは、ほとんどKO勝ちで勝ち進んでいくマギー。
かっこいい。あの筋肉質の締まった体、いいよねえ・・・。
ヒラリー・スワンク、この作品のために、相当トレーニングを積んだことがうかがわれますね。

でも、これは単なるサクセスストーリーではなかったんだ。
試合中の事故なんだけど、首から下が不随、
人口呼吸器が無ければ呼吸も出来ないという体になってしまった彼女。
あんなに輝いていたのに。
彼女とともに死んだようになってしまったフランキー。
マギーは言う。「死なせて」と。


これは快進撃を続け、輝いていたマギーと、
その後のベッドに縛り付けられたマギーの対比がすごく痛々しい。
生きていくためには、何か心のより所が必要だよね。
たとえば、希望。
でも、体を動かすことが出来るようになるのぞみはたたれている。
呼吸すら自分で出来ないというなら、ただ生かされていると感じるだろうね。
では、周りの人の愛?。
ところが、彼女の家族と来たら・・・。
いやひどいよね。
彼女はファイトマネーを自分では使わずに、田舎のお母さんに家を買ってプレゼントしたんだ。
ところが、家なんか持ったら生活保護が打ち切られると、文句を言うんだよ。
いやはや・・・こんな家で、よくこんなしっかり者の娘が出来たもんだ。
それというのも、亡くなったお父さんがいい人だったみたいなので・・・。
うん、そうか。彼女はフランキーに父親像を重ね合わせてる。
フランキーの方も、今はもう音信不通で行方も知れない自分の娘と、マギーを
重ね合わせてもいるんだね。
だから、彼女の今の支えはフランキーなのだけれど、彼とてもう年だし・・・、
負担をかけられないと思うよね、そりゃ。

今回再見なんで、フランキーの最後の決断は解っていたのですが・・・。
やはりこうするのが良かったんだと、私は思いますけど・・・。
「海を飛ぶ夢」も、同じテーマだったよね。
ウ~ン、でも本当にそれでいいのだろうか・・・と、ヒューマニズムぶって言うのはやさしいけれどね。
もし自分だったら、やはりそのまま生き永らえようなんて思わないと思う。
まして彼女はほとんどやりたいことをなしとげたあとだった。
同じに輝けないで、ベッドに横たわっているだけ、息をしているというだけで、
それが生きているということだろうか・・・。
でもね、自分が本当にその立場にならなきゃ解らないよ。
案外、それでも生きたいって思うかも知れない。
意識がしっかりしているんだからさ、本を読んだり、映画を見たりは出来るよね。
瞬きだけで自分の意志を表現して生き続けた人だっているよ。
まだ若いのだし、何が生き甲斐になるか先のことは解らない。
やっぱり、誰にも答はだせないんだ・・・。
うん。でも最終的には本人の意志、ということなんじゃないかな。
「空を飛ぶ夢」も本人の強い意志が認められる・・・ということだったと思う。


フランキーはいつも教会のミサに通っているのに、神については懐疑的で、
いつも牧師さん(神父さん?)を困らせていたね。
で、最後にも結局、神はなんの答えも与えてくれない。
このへん、日本人なら「あ、そう」と流してしまうところだと思うけれど、
本当はもっと重いのじゃないかな。
フランキーは本当は神にすがりたかったけれど、結局自分で答えを出すしかなかった。
いろいろ考えてしまう作品なんだなあ・・・。
配役も実に決まってましたね。
こういうときのモーガン・フリーマンはホントにいいね。
穴の開いた靴下をはいてさ。
そこの二人のやりとりがすごくよかったなあ。

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]
F・X・トゥール,ポール・ハギス
ポニーキャニオン


2004年/アメリカ/133分
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ポール・ハギス
出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン

ミスティック・リバー

2010年10月11日 | クリント・イーストウッド
無邪気な子供のままではいられなくなってしまう、ある事件から・・・

ミスティック・リバー [Blu-ray]
ショーン・ペン,ティム・ロビンス,ケビン・ベーコン,ローレンス・フィッシュバーン
ワーナー・ホーム・ビデオ


          * * * * * * * *

幼なじみの三人。
ジミー、デイブ、ショーン。
ある時、この3人のうちデイブだけが車で連れ去られ暴行を受けてしまいます。
その後何となく疎遠になってしまった3人。
さて、それから25年後。
ある殺人事件を機に再開する3人。
ただし、ジミーは被害者の父親として。デイブは容疑者として。ショーンは刑事として。


これ、7年ほど前の公開時に見てるんですね。
うん。そのときの感想がこれ。


重いです。
幼なじみが大人になって再会したときに,
一人は被害者の父親,一人は容疑者,そしてもう一人は刑事となっていた。
少年時代に起きた事件が落とす影。
う~む。ラストがまた,ショッキング。
うそー。これで終わりなの?といいたくなる,やり切れない思い。
けど,世の中って,実際こんなことばかりだよね・・・。
ショーン・ペンのすさまじいまでの父親の娘に対する愛情,
名演ではあるけれど,あのマッチョさ,入れ墨,
現実的には私は「うげー」,です。
私ならとっくに家出してるわ。
彼の少年時代役のコがすご~く美形でした。
それがなぜ,ああなっちゃうのよー。
ケビン・ベーコンの相棒の刑事はモーフィアスでした。
かっこいい!
結局,少年に対する性的虐待とか,
青少年のあまりにも衝動的な犯罪とか,
現代の抱える病理を背景としつつ,それぞれの人生を浮かび上がらせ,
さらには真犯人を探るというミステリ的要素もからめた重厚な作品と,
まとめておきましょう。




その頃はまだ今ほどいろいろな作品は見ていなくて、まあ、どちらかというと派手なCG作品とか完全な娯楽作品が多かった気がする。
だからこの作品は、やたら重くて、正直言って面白いとは思えなかったんだけど・・・。
今見てどうなんでしょう。
やっぱり重いけど、なかなかいいと思う。
昔一緒に遊んでいた時にはなんの隔たりもなかった3人。
けれど、その事件が彼らのその後に微妙な影を落としていくんだね。
これまでイーストウッド作品を見てきた中でも、特に渋く重厚。
これは彼自身出演しない分、じっくり練ってあるという感じがする。


だけど、この作品のテーマはいったい何なのかって、ちょっと腑に落ちなかったところがある。
そうだね。先の感想にもあるけど、少年の性的虐待。青少年の刹那的犯罪。
そういうのもあるけど、ここのテーマはそれじゃないよね。
3人の皮肉な運命を通して、人生って何なのか、語りかけているのかも知れない。
人生の分かれ道は、元はほんの些細なことだけれど、
後になるとどんどん隔たりが大きくなってくる
・・・私たちは自分でもそんなドラマの中を歩いているのかも知れないね。
この中ではデイブが全然救われないじゃない。
あまりにも彼ばかりが貧乏くじって感じ。
でも現実にはそんなことたくさんあるよ。
ジミーを突き動かしたものはやっぱり「愛」なのだろうし・・・。
この作品では「正義」とか「愛」とかまあ、たいていの映画が美しいものとして掲げるものを、じっくり本気で見据えている感じがする。
それは必ずしも救いではないんだ・・・。
う~ん。で、この三人の俳優の演技がまたすばらしいよね。
そうですね。先の感想ではショーン・ペンがちょっと気に入らなかった風だけどさ。
でも、役柄から言うとそういう印象を持たせる男っていうのがまさに正解じゃん。
そういうことでした。
「相棒の刑事がモーフィアス」って何?
はは・・。それはその頃の大ヒット、「マトリックス」に登場するローレンス・フィッシュバーンの名前ですよ!
あ、そ・・・。


少年の日、車で連れ去られたデイブ。
バックシートから哀しげに二人を見つめていたその日。
なんにしてもその日から3人は
それぞれ無邪気な子供のままではいられなくなってしまったのだろうなあ・・・・・・・


2003年/アメリカ/138分
監督:クリント・イーストウッド
出演:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、ローレンス・フィッシュバーン、マーシャ・ゲイ・ハーディン、ローラ・リニー

ブラッド・ワーク

2010年10月02日 | クリント・イーストウッド
驚愕の犯人の異常心理

ブラッド・ワーク [DVD]
クリント・イーストウッド,マイクル・コナリー,ブライアン・ヘルゲランド
ワーナー・ホーム・ビデオ


         * * * * * * * *

今回のイーストウッドはFBIの心理分析官マッケイレブですね。
はい、冒頭から大きな事件の渦中でして、
その連続殺人事件の犯人は殺人現場に、あえてマッケイレブあての挑発文を書き残すのです。
その一連の事件現場を調べている最中、
マッケイレブは野次馬の中に、現場に残されていた足跡と同じスニーカーをはいた男を見つけるんです。しかもそのスニーカーには血痕が付いている・・・。
マッケイレブは直ぐにその男を追いかけるけれども、敵も逃げ足が速い。
そんな時、突如マッケイレブは心臓発作に襲われてダウン。
そこで暗転。


そして事件は未解決のまま2年が過ぎるんだね。
その2年後というのがびっくり。
マッケイレブは心臓の移植手術を受けているんです。
とりあえず手術は成功。
でももう職は退いて、海辺の街でクルーザーに住んで気ままな生活。
そんな時、一人の女性が彼を訪ねてきて言うんだ。
妹が強盗殺人犯に殺された。その犯人を探して欲しい、と。
なぜならば、その妹の心臓こそが、事件後にマッケイレブに移植されたのだから
・・・ということなんだね。
そう、普通臓器の提供者は公表されないんだけれど、
血液型が特殊なこととか、移植の時期などである程度わかるというのは確かかも知れない。
マッケイレブの心臓移植のことはマスコミで華々しく報道されていたので・・・。
そう言われて、以前のFBI魂に火が付いたマッケイレブは、事件の捜査にのりだすわけです。
このへんのツカミが、結構興味深いねえ。
主人公が心臓移植を受けるなんてさ。
今まで見たことが無いパターンだなあ・・・。
体調がまだ思わしくないマッケイレブは、
となりに停泊してある船に住んでる男の協力も借りて
いろいろな事実をつかんでいくんだね。


これは結局サイコパス相手のサスペンスで、事件の真相は非常に怖いんです。
意外な真犯人、という意味では実際意外で、実に虚を付かれてしまいました。
そもそもその動機が普通じゃないよね。
うん。根っこは2年前の事件の続きで、
この度の新たな強盗殺人事件も別物ではない。
この関連もまた驚愕なんだなあ。
この犯人の異常心理、表面ではわからないので、
私たちの身の回りにもそういう人がいるとしたら・・・などと思うと全く怖い。
人の心は、ナゾだ・・・。
なかなかよく出来たサスペンスものだと思います。

2002年/アメリカ/105分
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ジェフ・ダニエルズ、アンジェリカ・ヒューストン、ワンダ・デ・ジーザズ