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「ナルニア国ものがたり3 朝びらき丸東の海へ」 C.S.ルイス 

2016年09月19日 | 本(SF・ファンタジー)
東の果てにあるものは・・・

朝びらき丸東の海へ―ナルニア国ものがたり〈3〉 (岩波少年文庫)
ポーリン・ベインズ,C.S. Lewis,瀬田 貞二
岩波書店


* * * * * * * * * *

いとこのユースチスの家に来ていたエドマンドとルーシィは,
その部屋の額の絵の中に,いとこもろとも吸い込まれます.
絵の中はナルニアの外海.かれらは,朝びらき丸という美しい船にのり,
カスピアン王子とともにこれまで探検されたことのない東の海へ進み,
竜の島,死水島,声の島,くらやみ島を通って東のはてにゆきつきます.


* * * * * * * * * *

ナルニア国第3弾。
ここまでは映画化されていて、私には割と印象深いところだったのですが、
かなり原作を変えてあったのではないかと思います。
…それとも私の記憶が怪しいのか??


いずれにしても印象深いのはこの巻から登場する、ペベンシー兄弟のイトコであるユースチフ。
なんともひねくれ者でいじわるで、はじめの方ではどうにも好きになれません。
しかし、エドマンドとルーシィはこのユースチフとともに、
ナルニアの海へいきなり飛び込んでしまいます。
彼らはすぐにカスピアン王子の乗る船に救い上げられました。
ナルニアでは前作から3年が過ぎたところでした。
カスピアンは以前東の海へ旅だったまま消息を絶った7人の諸侯たちを探しに行くところだったのです。
この7人はカスピアンの亡くなった父王の忠実な友人たちで、
カスピアンも彼らには恩義を感じているのです。
そこで彼らは、カスピアンの航海に同行し、大冒険をすることになります。


日の昇る東へ東へ・・・。
その果てにはアスランの国があると言います。
7人の諸侯を探しつつ、できることならばその果てまで行ってみたいと彼らは思っているのです。
ところが、竜の島ではユースチフが大変なことに・・・!!
しかしこの事件でユースチフは身も心も大きく変貌を遂げる。
彼は自分が傷つくまいと、まとっていた心の鎧を脱ぎ捨てたということなのかもしれませんね。


その後も、行方不明の諸侯の足取りをたどりながら幾つかの島に上陸し、
大変な目にあったり、素晴らしい光景を見たり・・・。
なんとも心が沸き立つ冒険の旅。


地球は丸い。
それはもちろんですが、どうやらナルニア国の世界はそうではないようなのです。
平らなこの世界に果てがあって、その東の果てがアスランの国。
その周辺の光景が素晴らしいのですよ。
いつの間にか海水は澄んだ真水に変わっていて、真っ白いスイレンが水面を覆い尽くしています。
正に天国のような・・・。
ひっそりとして厳粛なこの光景が、いつまでも胸の中に残ります。


彼らが通った一つ一つの島には、
それぞれ心の奥底の様々な問題と結びつく象徴的なものが表されているのかもしれないのですが、
まあ、ここではあまり理屈っぽく考えるのはやめておきましょう。
無心に愉しめばいい。


ここで、エドマンドとルーシィは
「もうこの先二度とナルニアへ来ることはない」とアスランに言われてしまいます。
もうじき二人は子どもの年齢をとおりこしてしまうから。
というわけで、次巻では、ユースチフがペベンシー兄弟の冒険を引き継ぎます。
本巻のラストがまた素敵で、すっかり様子が変わってしまったユースチフに対して、
彼のオバサンが言うのです。
「ユースチフがばかにあたりまえになり、たいくつになってしまった。」と。
著者は本当は普通に良い子よりも、
ちょっぴりひねくれたはみ出しっ子が好きなのだろうなあ、と伺わせます。


「ナルニア国ものがたり3 朝びらき丸東の海へ」 C.S.ルイス 岩波少年文庫
満足度★★★★★