映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ダンス・ダンス・ダンス 上・下」村上春樹

2016年06月23日 | 本(その他)
全てはつながっている

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)
村上 春樹
講談社


ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)
村上 春樹
講談社


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『羊をめぐる冒険』から四年、
激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。
奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。
七〇年代の魂の遍歴を辿った著者が八〇年代を舞台に、
新たな価値を求めて闇と光の交錯を鮮やかに描きあげた話題作。(上)


失われた心の震えを回復するために、
「僕」は様々な喪失と絶望の世界を通り抜けていく。
渋谷の雑踏からホノルルのダウンタウンまで―。
そこではあらゆることが起こりうる。
羊男、美少女、娼婦、片腕の詩人、映画スター、そして幾つかの殺人が―。
デビュー十年、新しい成熟に向かうムラカミ・ワールド。(下)


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『羊をめぐる冒険』の続編となっています。
なんだかやっと村上春樹さんの文章とかスタイルにすっかり馴染んだようで、
どのシーンもすごく興味深く楽しんで読めた気がします。
楽しんで・・・と言っても、内容はなかなかハードなのですが。


物語は、前作の4年後から始まります。
「僕」は、
「見失っているし、見失われている。混乱している。どこにも結びついていない。」
そのような虚ろを抱えたままのある時、あの"キキ"の夢を見ます。
何度も繰り返して。
「僕」は、キキが呼んでいるような気がするのですが、行方が全くわからない。
手がかりを探しに、札幌の"いるかホテル"にやってきます。
ところが行ってみて驚いた。
同じ場所に「ドルフィンホテル」はあったのですが、新しい巨大な豪華ホテルが建っている。
あの、羊の博物館のあった古いホテルはすでに無く・・・。
やむなくそこに宿泊した「僕」は、
それでも自分とつながっている不思議な場所へと導かれ、"羊男"と再会します。
羊男はいいます。
「踊るんだ、踊り続けるんだ。音楽のなっている間はとにかく踊り続けるんだ。」


ダンスをしろというわけではないんですよ。
流れ続ける音楽に合わせること、
すなわち周りの状況のままに、タイミングを逃さず、やるべきことをせよ!ということ。
その時から、「僕」は様々な人と出会います。
ホテルの精のような女性、
母親に忘れられた美少女、
娼婦、片腕の詩人、
中学の時同級生だった二枚目スター。
なんと警察で幾日も事情聴取を受けたりします。
また、ハワイでののどかな二週間もあったりするのですが、
でもそれは大事なヒントを掴むためのものでもあったのです。
「僕」は、音楽に合わせて見事に踊った!!


そして、ものすごくショッキングな真相も現れてきます。
すべてはつながっている。
驚かされて、そして「僕」の味わう苦悩に恐れおののく・・・。

五反田くん・・・!!

今さらですが、私、村上春樹ファンになりました!!
これまではそうじゃなかったのかって?
嫌いではなかったけれど、のめり込むほどでもなかったかな、と。
でも本作で、完全にのめり込みました。

「ダンス・ダンス・ダンス 上・下」村上春樹 講談社(図書館蔵書にて)

満足度★★★★★