映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

神様メール

2016年06月06日 | 映画(か行)
新・新約聖書、いいな



* * * * * * * * * *

なんとも荒唐無稽かつファンタジックな作品で、
「???」と思いながら見ていたのですが、
何やら次第に胸の中にストンと落ちてくる、不思議な味わいのある作品です。



ベルギーのブリュッセル、とあるアパートらしきところに、
「神様」は住んでいます。
神様の家族は愚鈍そうな妻と、10歳の娘エア。
本当は兄がいたのですが、すでに亡くなっています。
その兄こそがJC(イエス・キリスト)なので、
確かにこの神さまは、キリスト教の“神”なのですね。
でも亡くなった兄は、ミニサイズの「像」となっており、
必要なときには、エアの相談相手になってくれたりします。



さて、ところがこの神様、私たちがイメージする神とは全くかけ離れていて・・・
自分の部屋のパソコンを管理し、面白半分で事故や災害を引き起こします。
エアはそんな残忍な父がイヤでイヤでたまらない。
ある日父の部屋に忍び込んだエアは、父のパソコンをいじっているうちに、
世界中の人々に余命を知らせるメールを送信してしまいます。

人々は大混乱。
エアは家出を決行し人々の世界へやってきます。
そして6人の使徒を得て「新・新約聖書」を作ることにします。



私たちのイメージする神、と先に書きましたが、
現代、悲惨な事故や出来事が毎日起こります。
もし本当に神がいるとしたら、実際こんなふうに、イヤな奴なんじゃないでしょうか。
神が人を幸福にするための存在とはとても思えない、
そんな世の中であります・・・。
だから本作は、そんな神様じゃなくて本当に人々を幸せにしてくれる神様がいればいいのに・・・
という思いから発したストーリーなのかもしれません。
ラストには本当に“いいなあ”と思うシーンが見られますよ。


余命メールというのも怖いですね。
でも時々思います。余命がはっきりとわかれば、
それまでにやりたいことを心置きなくやってしまうのに・・・と。
私がガンで死にたいなどと思うのも、およその余命がわかるからにほかなりません。
いつまで生きるかわからないから、
多少の蓄えはしておかなければならないし、
つい面倒な問題は先送りにしてしまいがちだし・・・。
計画的に身仕舞いできるのはいいなあ・・・と思います。
でも、年齢にかかわらず、余命わずかの人と、
ほぼ永遠とも言えるような人生がある人に、
不公平を感じずにはいられなくなるかもしれません。
やはり、分からないほうが良さそうです。



夫の言いなりで、愚鈍そうな母=女神が、ラストのほうですることの爽快さ。
人界に於いてはお金もIDも持ち合わせず、頭のおかしい浮浪者に成り果ててしまう“神”。
なんともおかしな世界をたっぷり堪能しました。


2015年/ベルギー・フランス・ルクセンブル/115分
監督:ジャコバン・ドルマル
出演:ブノワ・ポールブールド、カトリーヌ・ドヌーブ、フランソワ・ダミアン、ヨランド・モロー、ピリ・グロワーヌ

荒唐無稽度★★★★☆
ユーモア度★★★★☆
満足度★★★★☆