【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

パリ紀行⑤(モンマントル)

2012-09-12 00:17:15 | 旅行/温泉

        

 日本人はフランスをどのような国と理解しているだろうか。藝術、文化の分野の紹介はかなりある。絵画、文学、映画、シャンソンなど。あるいは、フランスを象徴するキーワードには、どんあものがあるだろうか? キーワードの確認は、フランス理解の最初の一歩だ。


 早川雅水という人が『フランス生まれ』(集英社)という新書を著している。そこにフランス理解のキーワードが並んでいる。例えばリモージュで生まれたウエストンの靴(モカシンとダービー),織の手法がルイ14世時代そのままのゴブラン,90cm×90cmで75gのエルメスのスカーフ,コットン製で紙質が抜群のカスグランのレターペーパー等々。他にもマーガリン,カマンベール(神の足の臭い),マヨネーズ,ベレー,ビデ,ネオン,ファックス,点字,BCGは,フランスが発祥の地。言葉(エレガナンス,レストラン)にまつわる文化と伝統。

 わたしのようにフランスについての基礎知識が乏しい人間は、まずキーワードを確認し、そこから一歩を踏み出すしかない。さいわい、今回の旅行では、同行人が、事前にモデルコースをいくつか想定してくれたので、抵抗することなくそれを参考にした。短期間での美術館巡りは、それで可能になったのである。

 そのモデルコースを参考に、かつわたしがパリとくれば連想するキーワードを手掛かりに、計画を練り、実行した。一度、どうしても行きたかった地域は(2003年の前回旅行で実現しなかった場所)、モンマントル、モンパルナスなど。わたしの中では、連想のキーワードであり、キーワードにとどまっているかぎり、それは「記号」でしかない。単なる「記号」に意味を持たせるには、体感、経験、そこの空気を吸うことが必要。というわけで、モンマントルに向かうことにした。

 モンマントルは、パリ北方の小高い丘のような地域。そのてっぺんにたどり着くと、美しいパリ市内を一望できる。モンマルトルの名は、「Mont des Martyrs(殉教者の丘)」の意。紀元272年ごろ、この丘の付近で、後にフランスの守護聖人となったパリ最初の司教聖デニス(サン・ドニ)と二人の司祭ラスティークとエルテールの3人が斬首され殉教死した。首をはねられたサン・ドニは、自らの首をかかえ北方に数キロ歩き、息絶えた。その場所がサン=ドニの大聖堂である。
 近くには観光名所として名高い、サクレ・クール寺院、テアトル広場、キャバレー「ムーラン・ルージュ」、モンマントル墓地がある。ゴッホが一時住んでいた家、またダリ美術館もある。このあたりを散歩した。
 サクレ・クール寺院まではかなり急勾配の階段。そして結構長い。これがきつい人のためだろうか、両サイドに傾斜のなだらかな歩道がある。また、ミニ・ケーブルカーがある。
 この寺院はロマネスク様式・ビザンチン様式のバジリカ大聖堂。ギベール・パリ大司教がその建造計画を提唱し、アバディが設計を担当。エッフェル塔とともにパリ市内を眺望できる名所である。第三共和政憲法が発布された1875年に、フランスの新しい政体の門出を祝う意味をこめ、政府の直接的な支援のもとに建設がはじまった。実際に着工したのは1877年で、約4000万フランの費用と40年の歳月をかけ、1914年に完成をみた。
 寺院の正面、両サイドには聖ルイ9世、オルレアンの少女ジャンヌ・ダルクの騎馬像が威風堂々とパリ市街を見下ろしている。また、3枚のキリストの死をあつかったレリーフがある。

 この界隈は芸術家が活動したエリアである。とくにテアトル広場には、いまでも多くの画家がたむろし、油絵を画き、売っている。通りがかった人たちに声をかけては、似顔絵をかいてあげるよ、と勧誘している。生活のたしにしているのだろう。 

 ここからダリ美術館に行き、さらにゴッホの家の前で写真撮影をし、墓地まで歩いた。約2時間半。圧巻はダリの美術館である。ダリ美術館は、スペイン・フィゲラスにある「ダリ劇場美術館」が有名であり、世界のあちこちににいくつか点在していて、その一つがここである。地下に続く階段を下りると、ダリ・ワールドが広がっている。広いスペースに彫刻、オブジェ、リトグラフなど300点以上の作品が展示されていた。シュールレアリスト、ダリの代表作「溶ける時計」や「空飛ぶかたつむり」のオブジェに遭遇。また、ダリ独自の解釈による「ドン・キホーテ」「ロミオとジュリエット」の挿絵もあった。ダリのアトリエにいるような雰囲気である。

 この日の散策は、あまり暑くなく、涼しめの心地よいパリの風を感じながら過ごせた。もはや、モンマントルは、わたしのなかでは、「記号」ではない。そこの喧騒(賑わい)、風(空気)を感じながら頭のなかでイメージできる土地になった。


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